新しいFISMルール(2003年ハーグ大会から適用)
                         2002年11月7日版

 

1. 大会参加者とコンテスト参加者について

a)  FISMのコンテストに参加できる者はつぎの項目に該当する者とする。

FISMレベル(50点以上 6b条項参照)に達している人でFISMの会員クラブの会長がコンテスト参加を承認しサインを受けた人


FISMレベル(50点以上 6b条項参照)に達している人で、FISMの会員クラブの一員でない人で、3カ国のFISM会員の会長の承認とサインを受けた人

b) FISM会員の会長はコンテスト参加者の演技の承認とサインにたいして責任をもたなければならない。FISMレベルに到達していると考えられるコンテスタントだけにサインをしなければならない。サインをした会長はコンテスト参加費を負担しなければならない。コンテスト終了後会長が負担した参加費は75%返却する。25%は大会の運営費に当てるものとする。

 もし当該コンテスタントがFISMレベルに到達していない場合、つまり50点以下であれば返却しないものとする。

注)ただし、2003年のハーグ大会ではこの1b の条項は適用しないものとする。
  したがって、2003年ハーグ大会ではコンテスタントは個々にコンテスト参費を大会事務局に支払わなければならない。

c) 大会組織事務局によってゲスト演技者やレクチャラーとして予定された者はコンテストに参加することはできない。

d) コンテスタントはFISM大会の参加費を支払ったものに限られる。大会組織事務局は、遅くとも大会開始4週間前にコンテスト参加費および会長のサインと参加書式のすべてを受理しなければならない。

e) コンテスト参加者の総数は先着150名とする。

f)コンテスト参加にあたって、コンテスタントは演技内容以外審査委員の決定に従わなければならない。

g) コンテスタントの演技があきらかに誰かのコピーと判断される場合には失格とする。

h) 入賞したコンテスタントは、大会組織事務局から大会最終日に演技することを要求された場合は出演料なしに出演しなければならない。

2.審査について

a) すべての賞は(第5条参照)、8名から12名の審査委員と1人の審査に加わらない委員長によって構成された審査委員会によって決定されるものとする。審査委員の選考にあたってはFISM大会会長と事務局長が同意した者とし、候補者は芸術としてのマジックとマジックの審査に十分な造詣をもった者でなければならない。審査委員の質の保証については、FISM大会会長と事務局長が同意を基礎条件としながらも、クロースアップとステージ分野の専門性のバランスや、年齢や文化的背景に関する要素も同時に勘案されたものでなければならない。FISM大会会長と事務局長は継続的に審査委員会の質について注意を払わなければならない。ひとつの国につき1名の審査委員をおく。

b) 審査委員長はすべての演技を観るが、他の審査委員のように審査はせず  審査委員会の議長となり結果を集約し総括し、コンテストがFISMルーに従って遂行されることに全責任をもつものとする。

c) 審査委員は大会参加費を免除され、審査中の飲み物や食事については大会組織事務局から支給される。

d) 審査委員長は大会終了後3ヶ月以内にコンテストのすべての結果に適切なコメントと評価を添付して事務局長に提出しなければならない。

 
3.カテゴリーについて                              

 

a) コンテスト参加者はつぎのカテゴリーにエントリーすることができる。

ステージ部門 @マニピュレーション
  Aジェネラルマジック
 
Bステージ イリュージョン  
   
クロースアップ部門 @カードマジック
  Aミクロマジック
   
ステージ・クロースアップ @パーラーマジック
  Aインベンション
  Bメンタルマジック

 

注:FISM2003年ハーグ大会では、新ルール発効前にすでにコメディマジック部門として登録されたコンテスタントは、その登録を承認し受賞の問題については第5条を参照のこと。

b) 審査委員の意見交換により、コンテスタントにとって最も有利なカテゴリーへの変更はこれを認めるものとする。この行為は他のコンテスタントの受賞の機会を妨げるものではない。

4.コンテスタントの演技について

a) 1人のコンテスタントはステージ部門の1カテゴリー、クロースアップ部門の1カテゴリーしかエントリーできない。インベンションについては演技の中で提示するか、もしくは分離して提示することもできる。

b) 過去のFISM大会においてグランプリを受賞したものは、同じ演技で再びコンテストに参加することはできない。

c) コンテスタントは決められた演技時間の10分前に準備ができていなければならない。これを守れないコンテスタントは審査委員会によって失格となることがある。

d) コンテスタントは5分以上10分以内で、自分のフルルーティン(1現象以上)を演じなければならない。ただし、ステージ部門においてインベンションとイリュージョンは1つの現象でも可とする。

e) ステージの前には黄色と赤色のランプが設置してあり、演技開始から9分経過すると黄色ランプが点灯する。10分経過すると赤色のランプが点灯しオーバータイムを表示し、演者は20秒以内に演技を終了しなければならない。それ以上のオーバータイムは失格となる。赤色ランプが点滅した場合は失格となる。(第6C条 参照)

f) コンテストの司会はコンテスタントの演技についてのいかなるコメントもさし控えなければならない。コンテスタントの名前、カテゴリー、国名と承認のサインをした会長の名前だけを発表すること。

5. 賞と表彰について

a) インベンションをのぞく各カテゴリーにおいて審査委員会(第2a条参照)は1位、2位、3位を選考し表彰する

b) インベンションのカテゴリーでは1あるいは、それ以上の賞を出すことができる。また、このカテゴリーでは順位はつけず、審査委員会が新しい現象か、方法か、技術として認定したものをだけを決定し表彰する。

c) 審査委員会は、すべてのカテゴリーからコメディーの演技としてすぐれたものを適宜特別賞として表彰することができる。

d) 審査委員会は、正当な理由にもとづきすべてのカテゴリーから「もっともオリジナルな演技」を選考し表彰することができる。

e) 審査の第2段階(第6条 参照)として、前述の賞と特別賞の中からステージ部門グランプリとクロースアップ部門グランプリを審査委員会が決定する。

f) その他のいかなる賞も、事務局長、大会会長、審査委員長の合意と承認なく与えられることはない。このことは私的な会社によって与えられる賞に対しても同様とする。また、これらの特別な賞は上記の5a―5dに該当するコンテスタントの中からしか選考することができないものとする。
 

6. 審査手順について

a) 審査手順は2段階に分けられる。
 
第1段階は通常の手順にしたがって第5条a. b. c. d.の各賞を決定するものである。

第2段階は第5条eによる2つのグランプリを決定する手続きである。すなわち、最終のガラショーですべてのカテゴリーの1位入賞者が再び演技しグランプリを競う。

b) 審査委員はすべてのコンテスタントの演技にたいして偏見をさしはさむことなく、以下の6つの観点から公平な審査基準によって審査しなければならない。

・テクニカルスキル/ハンドリング(技術)
・ショーマンシップ/プレゼンテーション
・エンターテインメント バリュー(楽しさ)
・アーティスティック インプレッション/ルーティニング(構成)
・オリジナリティー
・マジック アトモスフェアー(マジックの雰囲気)

1) 審査委員は統一した公式の審査用紙(別添)を用いて各コンテスタントを100点満点によって審査する。1コンテスタントの演技終了後、審査用紙の切り取り線以下をスタッフ(第8条aに定める)が集計し平均値を算出したものがコンテスタントの点数となる。したがって、最高得点は100点となる。このようにして算出された平均値が50点を下回るとFISMレベル以下と判断され失格となる。

2) 各審査委員の前にはスイッチがあり、バックステージのタイムキーパー の前に接続された赤色ランプを点灯させることができる。演技開始後3分で各審査委員がFISMレベル以下であると判断した場合、このスイッチを押すことができる。もし審査委員の70%がこのスイッチを押して赤色ランプを点灯させたときは、タイムキーパーは第2条dに示したようにステージの赤色ランプを20秒間点滅させたのちカーテンを閉じ、コンテスタントは失格となる。

3) すべてのコンテストが終了し結果を出す前に個々の審査委員は自分の判定を再考し、その結果審査委員長の承認をえて点数を変えることができる。これらの変更はオフィシャルスタッフによって再計算され、最終結果を得ることとする。

4) 必要な手続きと計算が完了した時点で、審査委員長は最終結果を提示しすべての審査委員を招集し入賞者を決める秘密審査委員会を開かなければならない。
5) 賞はそれぞれのカテゴリーの最高得点者に与えられる。1位は最終スコアが80点以上、2位は70点以上、3位は60点以上なければならない。

6) カテゴリーの中で上記基準に達するコンテスタントがいない時は入賞者を出さない。

7) コンテスト結果は公式の表彰式でトロフィーまたはカップが授与されるまで秘密にされなければならない。表彰の順序は特別賞、3位、2位 1位の順とする。

8) すべてのカテゴリーで1位が決定されたら、第2段階の審査手順によってグランプリを決定する。審査委員はbの条項と同じ基準で審査しなければならない。その結果、最終スコアが85点を超えた最高得点者がステージとクロースアップ部門でそれぞれグランプリを獲得する。2つのグランプリは大会の最終日のガラショーで発表される。
 

7.タイトルについて

a) カテゴリーで1位を獲得した者だけにワールドチャンピオンの称号が与えられる。称号の後にカテゴリー名と獲得年度をつけることができる。

  (例:ワールドチャンピオン ステージイリュージョン2003ワールドチャンピオン    カードマジック2006 等々)

b) 1位と同時にグランプリを獲得した者は上述のタイトルに加えてFISMグランプリの称号を用いることができる。

8.管理運営について

a) 大会運営組織はコンテスト運営に際し公式のタイムキーパーを指名すること、さらに審査手続きをスムースに運営するための特別なスタッフを配置しなければならない。その他の責任を伴う業務、たとえば審査用紙を集める係り、必要な計算をする係り、審査委員の接待などの係りを配置しなければならない。これらのスタッフはスコアに関して審査委員長以外の者には、結果発表まで厳密に秘密を守らなければならない。(第6条e 参照)

b) 大会運営組織は公式審査用紙を必要とする分量を用意しなければならない。また、審査に必要な文具や書類、賞の種類に応じたトロフィーまたはカップを準備しなければならない。

c) 大会運営組織は遅くとも大会開催4週間前までに審査委員にコンテストルールと手続きを送付しなければならない。

d) 大会の開始に際して、コンテストの開始前に事務局長は審査委員会にたいしてFISMルールと審査手続きについて主な問題点の説明をしなければならない。 

 

                      (翻訳 瀬島順一郎)


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