スカーニーの「1,000ドルのカード・トリック」解説

Scarne's $1,000 Card Trick

 

もう一度、最初にお断りをしておきますが、この解説をどこかに転載したり、コピーを配布することはなさらないようお願いいたします。あなたがどこかのマジッククラブで講師をなさっているとしても、そこで講習することもしないでください。これは、講習ネタを提供するものではありません。今までマジックをなさったことがない方のために、特殊なテクニックを使わなくてもできるマジックを紹介して、マジックを見せる楽しみを体験していただくのが目的ですので、くどいようですが、その点を十分ご理解いただいた上でお楽しみください。

1998/12/8


解説

(1)まず一組のトランプを用意します。ジョーカーは使いませんので、抜いておいてください。52枚だけで行います。次に、26枚のトランプを表向き、残りの26枚を裏向きにしてください。それを表と裏が混ざった状態になるよう、全体をよく切り混ぜてしまいます。裏と表がごちゃ混ぜになった状態にして、トランプケースの中にもどしておけば準備は完了です。(ジョーカーはケースに戻さず、邪魔にならないところにしばらく取り除いておいてください。)

(2)まずこのマジックの原理を説明しますので、実際にトランプを手に取りながら確認してください。

先ほどのトランプをケースから取り出し、もう一度よく切り混ぜます。切り混ぜたら、一組を手に持ちます。今一番上には表向きのトランプが来ているか、裏向きのトランプが来ているかわかりませんが、どちらでも問題ありません。トランプの表と裏はわかっていますね。「ダイヤの3」などの数字が描いてある面がです。

(3)テーブルの上に、手に持っているトランプの一番上から一枚ずつ数えながら26枚を、一カ所に配ってください。テーブルの中央よりやや右手の場所に配ってください。26枚重なった山が一つできましたね。手には残りの26枚があります。手に持っている26枚全部を、いったんひっくり返してください。手のひらに接していた面が上になるように全体をひっくり返します。そして、左手に持っていたトランプをテーブルの左のほうに置いてください。

(4)今、テーブルの上には26枚ずつの山が二つあります。まず右の方の山を取り上げます。表と裏がごちゃ混ぜになっていますが、表を向いているトランプの数だけを数えて行ってください。そして何枚表向きのトランプがあったか覚えておいてください。 次に左の方の山を取り上げ、同じように表向きのトランプの数を数えてください。同じ数になっていましたね?驚きました?これがこのマジックの基本的な原理です。簡単な数学的な原理を使っているだけのですので、興味のある方は原理も研究してみてください。今のところ、数学的な原理はどうでもよいので、現象だけに注目しましょう。もう一度やってみたければ、左の山をひっくり返すと元の状態に(表、裏がそれぞれ26枚ずつ)なりますから、そのまま二つの山を混ぜて、同じことをやってもできます。

もし同じ数になっていなかったら、そのトランプは52枚そろっていないのか、準備の段階で26枚ひっくり返すとき数え間違えたのかもしれませんので、もう一度確認してください。

(5)実際に観客に見せるときですが、もしふたつの山で、表向きの数が今と同じように、両方とも同じという演出で見せたいのであれば、今と同じことをやればできます。ただ、今は練習ですので、テーブルの上で行いましたが、実際に観客相手に見せるときは、上の「3」の動作はテーブルの下で行います。つまり、テーブルの下に両手を入れ、上半身をテーブルの前方に傾け、頭はなるべくテーブルの縁よりも少し前に出す感じで、マジシャン自身、自分の手元が見えないということを観客に納得してもらえるような状態にします。タオルでもあれば、目隠ししてもらってもかまいません。

テーブルの下に手を入れたら、左手から右手に、26枚数えて取ります。このとき、少々もたついても、指先の感触で表裏を探っているという演出ですから、あまり気にする必要はありません。左右の手に26枚ずつ持ったら、右手の山をテーブルの上に置きます。左手の山は上下をひっくり返してテーブルの左の方に置きます。これで先ほどの「4」と同じ状態になっています。それぞれの山に含まれている表向きの数は同じになっています。(実際は、裏向きになっているトランプだけを数えても一緒になっています)

(6)左右の山に含まれている数を異なるものにしたいときの方法を説明します。

観客にトランプを渡して、よく切り混ぜてもらうところまでは同じです。観客に切り混ぜてもらうと言いましたが、観客の中にはトランプなどあまりさわったことがなく、切り混ぜる動作をすると、手からトランプを落としてしまう人がいます。これはちょっとまずいのです。このマジックは、最初、26枚が表を向いており、裏向きが26枚あるのですが、落とされると、その準備段階のセットが崩れてしまう可能性があります。もし相手がトランプを扱いなれていないと思ったら、マジシャンが自分でよく切り混ぜてもかまいません。切り混ぜ方は、日本でよく行われている切り方(ヒンドゥー・シャッフル)でも、ギャンブラーがよくやっているような、左右に分けて、両方からパラパラと落として行く切り混ぜ方(リフル・シャッフル)でもかまいません。

とにかく、観客なり、マジシャン自身がよくトランプを切り混ぜたとします。この状態で、一番上のトランプを見てください。今、一番上には表向きのトランプが来ているとします。本当はここからは、先ほどの「5」と同じようにテーブルの下に手を入れ、テーブルの下で行うのですが、今は原理の説明をしますからテーブルの上でやってみてください。もし一番上に表向きのトランプが来ていなければ、もう2,3回切り混ぜて、とにかく一番上には表向きのトランプが来ている状態にしてください。

次に、一番上にある、表向きのトランプを一枚だけひっくり返して裏向きにします。「裏向きにした」ことを記憶しておいてください。そうしてから、先ほどと同じことやってみてください。上から26枚数え、ふた組に分けます。残っているパケットをひっくり返してテーブルの左のほうに置きます。

先ほどまでは、左右の山に含まれていた表向きのトランプの数と、裏向きのトランプの数は同じでしたが、今回は最初に一枚だけ表向きのトランプを裏向きにしていますので状態が変わっています。今回は、右の方にある山のトランプに含まれている裏向きのトランプの数が、左の山に含まれている裏向きのトランプの数より、一枚多くなっています。実際に数えてみてください。それぞれの山に含まれている裏向きのトランプの数です。先ほど練習のときは表向きのトランプの数を数えたのに、今は裏向きのトランプの数なので混乱するかもしれませんが、今回は、一枚ひっくり返して裏向きにしたので、裏向きが1枚多いと理解しておけば、それほど混乱しないはずです。

もう一度やってみましょう。

今、右の山には一枚裏向きのトランプが多くなっている状態です。右の山から裏向きのトランプを取り、それを表向きにして右の山に戻してください。左右の山を一緒にしてもう一度よく切り混ぜます。(これで最初の状態にもどりました。)

もう一度よく切り混ぜます。今度は、一番上に裏向きのトランプが来たとします。それを表向きにしてから先ほどと同じように、26枚ずつわけて、テーブルの上に左右に置きます。(左のパケットは全体をひっくり返しましたね?)これで数えてみると、今度は右の方の山に含まれている「表向き」のトランプが、左の山に含まれている表向きのトランプより、一枚多くなっているはずです。

これが枚数を変えるときの原理です。

2枚以上変えたいのであれば、観客がよく切り混ぜたトランプを受け取ったとき、表と裏が混ざっていることを観客にも示すためにマジシャンが両手でトランプを広げるか、いったん全体をテーブルの上に置いて、横に広げて行きます。このとき一番上のトランプとその次、つまり上から2枚目のトランプを見ます。これがもし2枚以上連続して表向いているのあれば、上の2枚をひっくり返して裏向きにしてから同じようにやれば、最後は右の山に含まれている裏向きの枚数が、左の山に含まれている裏向きの枚数より2枚多くなっています。

以上が原理です。わかりました?実際に手にトランプを持ってやっていただければわかると思います。

★実際に演じるときの注意点。

チェックポイント1

これは準備段階で26枚が裏向き、26枚が表向きになっていますが、この枚数については絶対に言ってはいけません。ただ裏と表が乱雑にまざっているという雰囲気でよいのです。

チェックポイント2


テーブルの下で手元を見ないでトランプを数えるのは慣れないとミスしがちなので、何度か練習しておくこと。

チェックポイント3


「サーストンの3原則」でも言われているように、同じマジックを2度繰り返して見せることは厳禁なのですが、これは2度くらいは大丈夫です。しかし、3度は絶対にやらないでください。

★演出上のポイント

ギャンブルのような雰囲気でやるのなら、テーブルの下で二つの山に分け、テーブルの上に左右に置いたときスカーニーは次のように言っていました。

「この山(右の山を指差し)は、こっちの山(左の山)より表向きのトランプが2枚多いというのに賭けるが、だれか乗らないか?」

観客の誰かが、そんなことは無理だと思ったら、乗ってきてくれるでしょう。この辺りはアメリカの人は気軽に挑戦を受けてくれます。負けたら一杯おごるか、食事代を持つかするのですが、その程度の投資で、何かおもしろいものが見せてもらえるのなら平気で乗ってきてくれます。「バー・ベット(Bar Bet)」という、お酒を一杯賭けたちょっとしたゲームがアメリカではおなじみですので、このようなものにも気楽に乗ってきてくれるのでしょう。

「賭ける」という演出に抵抗があるのなら、「指先の感覚を見せる」という演出でもよいでしょう。テーブルの下に手を入れる前に、指先だけで表と裏を区別できると言っておき、テーブルの下で分けてみせるのです。

あるマジシャンは、これを頻繁に演じていましたので、これ専用のパケットを作っていました。52枚のトランプではなく、30枚を輪ゴムでとめたものをポケットに入れて、しょっちゅうやっていたそうです。30枚で演じるのでしたら表、裏をそれぞれ15枚ずつ混ぜておけばできます。テーブルの下で数えるときも、15枚ですみますから楽なのでしょう。

マジェイア記


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