マジシャン紹介

デビッド・ブレイン

David Blaine (1973-)

David Blaine

 

1999/12/18 記


アメリカのストリート・マジシャン。1973年、ニューヨークのブルックリン生れ。4歳のとき、「カードを通り抜ける鉛筆」をやったのが初めてのマジック。それ以来、マジックを見せることに熱中する。10代の頃は俳優を志し、マンハッタンの俳優養成学校に通っていました。あるパーティで、レオナルド・ディカプリオやアル・パチーノなど、ハリウッドの映画スターにマジックをみせると大変にうけ、特にディカプリオなど、彼のことを教祖のように思い、本当の「超能力者」と思っているような雰囲気があります。

ブレインのマジックは大がかりなものではなく、日本で言えばMr.マリックがやっているような「超魔術」的演出のものです。

ブレインが演じる場所はステージではなく、街頭です。道を歩いている人や、公園などで声をかけ、その場でひとつだけ見せて、すぐにそこから去って行くという見せ方をしています。最初はお金ももらわず、趣味で何年かこのようなことをしていましたが、役者の間ではよく知られるようになってきたため、街頭で見せているところを友人がビデオに撮り、編集もせず、ABC TVに送りました。このビデオを見たテレビ局のプロデューサが驚き、ただちに100万ドル(約一億二千万円)で彼と契約してくれたのです。それまでは下積みのうれない役者にすぎなかったのが、一瞬にして1億円を超えるお金が入ってきたのですから一番驚いたのはブレイン本人でしょう。

私が見たのは、今年(1999年)の4月に全米で流された1時間の番組です。日本での知名度は、マジックをやっている人をのぞけばほとんどゼロに近いでしょう。しかし、今年(1999年)の夏ごろ、NHKでも少し放送されましたから、徐々に知っている人も増えてきたかもしれません。

私はアメリカでの放送直後に、それを録画したビデオをみせてもらったのですが、そのときの印象と、数ヶ月後に、NHKで放映されたものを見た後では、少し印象が変わってきました。最初はただの気持ちの悪い人にすぎなかったのですが、なれてきたのか、それほどいやでもなくなってきました。それで、今回、こちらで紹介することにしました。

街頭で、一般の人は勿論、警官や消防署の職員などにも声をかけています。たとえば、警官にトランプを取ってらもらい、そのトランプが警官のはいている靴の中から出てきたりしますから、それは驚きます。これはサクラではないでしょう。昔のマックス・マリーニ並の準備をしているのだと思います。とにかく彼のやるマジックは強烈です。

特に、心の中で思ってもらっただけのトランプや、二桁の数字を当てるものは、当てられた人は気を失うくらい驚きます。「適当に」二桁の数字を思ってもらい、何の質問もすることなく、ずばりと当てられたら、本当の超能力者か、読心術でもやっているのかと思っても無理はないでしょう。

見ていて気持ちの悪いものとしては、女の子の髪の毛を一本飲み込むと、それがへそのすぐ横から出てきて、引っ張ってもらうと、長い髪の毛がズルズルと皮膚の下から出てくるものなどもありました。これなど、あまりの気味悪さに、悲鳴があがっていました。

このような、気持ちの悪いこともやりますが、大半のマジックは昔からあるものです。しかし、それが彼の雰囲気で演じられると、まったく新しいマジックのようになってしまいます。

テレビ番組の中では、街頭を歩いている人に声をかけると、たいてい立ち止まって見てくれていますが、実際には断られるケースのほうが圧倒的に多いはずです。また、失敗しているものもあると思うのに、テレビでは全部成功しています。これは失敗したものは編集されているのでしょう。

私自身にとっては、決して好みのマジシャンではありませんが、マジックや見せ方に関しては参考になる点が数多くありました。特にブレインが何かを見せると、見せられた人は悲鳴を上げるほど驚くか、逆にあまりの不思議さに声も出ません。マジックを見せて、これほど驚く姿は感動的ですらあります。1時間の番組で、最初から終わりまで、これほど観客が驚いている番組など見たこともありません。その秘密を探ってみると、結局、私がいつも言っていることですが、「ひとつだけ見せて、そこで終わる」ということをやっているからにすぎないのです。

ブレインは、ごく一部の例外を除いて、同じ観客には一つだけ見せて、その場を去っています。あれが3つ、4つ、その場で、同じ観客に見せたら、あのような反応は返ってきません。「ひとつだけ」が、いかに強烈なパワーがあるかということのよい例になっています。

デビッド・ブレインの番組の冒頭、次のようなメッセージが流れてきました。

For those who
believe
no explanation is a necessary.

For those who
do not believe
none will suffice.

信じるものにとっては解説など不要である。

信じないものにとっては、何をもってしても無駄である。(マジェイア訳)


この放送があったとき、デビッド・ブレインはアメリカでも一般の人にはまったく知られていなかったようです。彼のことをマジシャンと知っている人は誰もいません。見たこともない若い男性、それもちょっと不気味な雰囲気は漂っていますが、マジシャンとは知らないで、いきなりあのようなこと見せられたら、本物のサイキック(超能力者)と思っても無理はないでしょう。大がかりな道具を使わなくても、目の前で、予期せぬ出来事が起きると、それは人によっては奇蹟にもなります。大きな箱から美女がでてくる以上に、目の前30センチのところで、葉っぱを丸めただけのものから水が溢れてきたら、それだけで奇蹟と思う人が不思議ではありません。

これから将来、顔が売れてくると、街頭で見せても今のような反応は期待できなくなるでしょう。すぐに人だかりはできるでしょうが、普通のマジシャンが行うマジックと変わりがなくなってしまいます。そのためかどうか知りませんが、タヒチやアフリカで、いまだに腰箕をつけて、裸で生活しているような人たちにも見せている場面がありました。このような人たちにマジックを見せると、本気で「悪魔」と思われるくらいの反応が返ってきます。実際、テレビの中でも、あまりにも人々が恐れ、誰も寄ってこなかったり、逆に、襲われそうな雰囲気になり、ブレインがさかんに、「私は芸人だ」と必死で叫んでいる場面もありました。このような場面を見ていると、マジックの起源を見る思いがしました。

魔法都市の住人 マジェイア


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