マジシャン紹介

ボウボウ

J.B. Bobo (1910-)

J.B. Bobo

 

1998/10/19記


アメリカのプロ・マジシャン。ボウボウ(J.B. Bobo)というと、マニアであれば真っ先に思い浮かぶのは電話帳のように分厚いコインマジックの本、"Modern Coin Magic"(1952年)でしょう。

New Modern Coin Magicコインの基本技法から高等技法、ギミックコインまで扱った、まさにコインマジックの百科事典です。コインマジックが好きな人にとってはバイブルと言ってもよい本です。これが1952年、今から50年近く前に出版されているのですから驚きます。カードマジックやステージマジックに関する大きな本はあっても、コインマジックだけを集めたもので、これほど大きなものはこれが初めてです。この本に影響され、コインマジックに興味を持ったマジシャンは数知れません。

私がマジックの洋書を読み出したのは1970年の初頭からですが、当時、"Modern Coin Magic"に加筆し、さらに約100種類のマジックを追加した"New Modern Coin Magic"が1966年に出ています。総ページ数は519ページにもなる本です。これは現在、リプリント版がDouble Dayというアメリカの大手出版社から出ていますので、日本でも洋書を扱っている書店であれば店頭でも見かけます。もしなくても、頼めば取り寄せてもらえます。

ボウボウはこれほどの専門書を書いていながら、マジックの大会などに彼が出演したという話を聞いたことがないので、私にとっては、すでに歴史上の人物だと思っていました。もう亡くなっているのだろうと勝手に想像していました。それが1986年にStevens Magic Emporiumが出したビデオシリーズに、現役として出てきたので驚きました。しかも、私のイメージとしてはコインマジックの専門家であり、演技者というよりむしろ研究者のような人だろうと思っていたのに、実際は小学校などを廻り、子供にマジックを見せるのを専門にしているマジシャンであることを知り、再度、驚きました。

ボウボウはこのような分野、"School -Show-Performer"と呼ばれる分野でマジックを見せる草分け的存在でもあったのです。1986年当時で、約50年間この仕事をやっていると言っていましたから、地元のテキサス州では親子二代に渡ってボウボウのショーを楽しんだ人達も大勢いるはずです。学校でのショーの回数はのべ13,000回を超えており、年間200から300の学校を廻っているそうです。

奥さんと二人で約30分のショーを構成しています。Stevens Magic Emporiumから発売されていますビデオシリーズのVolume 23が"Bobo"で、彼が子供に見せるときのマジックを実演しています。興味のある方はご覧になってください。どのようなマジックが子供にうけるのかわかると思います。ただ、コインマジックはひとつもレパートリーに入れていません。(笑) このビデオ撮影の時、すでに76歳ですから、うまいというより、マジックの好きなおじいさんが子供相手にマジックを見せているという雰囲気です。

ビデオの後半では、クロースアップマジックも数点演じています。天海さんの有名な「テンカイ・ペニー」もやっています。私はこの有名なコインマジックを天海さんが演じているのを見る機会はなかったのですが、今回、ほぼオリジナルの方法を見ることができました。天海さんがアメリカにいた頃、ボウボウとも会っているようですので、マジックの交換をしたのかもしれません。ボウボウのようなコインマジックの専門家に、「テンカイ・ペニー」が受け継がれていることは遺産の継承という意味でも貴重なビデオでしょう。

また、ボウボウのマジックとしてはマニアの間でもっともよく知られているのは「トラベリング・センタボズ」(The Traveling Centavos)でしょう。「センタボ」というのはメキシコの銅貨です。大きさは日本の500円玉と同じくらいで、厚みは1.5倍ほどあります。ビデオの中ではアメリカの25セント硬貨で演じていました。

このマジックは本で読んでも大変巧妙なのはわかるのですが、現象自体は4枚のコインが一枚ずつダイスカップに移るという「飛行現象」のひとつです。どうしても単調になり、あまり面白いように思えなかったのです。ところが実際にボウボウが演じているのを見ると、タネを知っていても、とても不思議に見えます。見ると、練習したくなるマジックです。

また4枚のコインを一枚ずつ異なった方法で消して行くのも実演しています。上着のサイド・ポケットや胸ポケットを即席のトピットのように使い、完全に処理してしまうため、消した後も両手を完全に改められます。「モダーン・コイン・マジック」のような大部の専門書を出していると、マニアから何か見せて欲しいと言われることも多いはずです。そのようなとき、これを見せているのでしょう。4枚で演じなくても、この中の一つか二つだけでもマスターしておくと重宝します。

 

魔法都市の住人 マジェイア


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