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マジックをメジャーにする必要があるのか

1997/12/21

「マジックをもっとメジャーにしたい」という意見を時々聞きます。マニアやプロのマジシャンでもこのようなことを望んでいる人がいます。「マジックがメジャーになる」という意味は、私が今まで聞いたところでは大抵次のようなものです。

1.マジックの番組がテレビでもっと頻繁に放送されるようになる。
2.マジシャンの地位が上がり、高額なギャラが取れるようになる。
3.女性の観客が増える。

大体、このあたりに集約されるようです。しかし、このような意味なら、3の「女性の観客が増える」というのを除いて、マジックがメジャーになることなど全然望んでいません。

マジックというのは「意外性」で成り立つ芸です。もし何かの拍子でマジックがテレビで頻繁に放送されるとしたらどうなるのでしょう。そのようなものは、早晩飽きられるに決まっています。マジックの本質である意外性もなくなってしまいます。

テレビを完全に否定するわけではありませんが、年に1,2回、まともなマジックがテレビで見られたらそれで十分です。また、芸にはテレビというメディアと相性が良いとは思えないものがいくらでもあります。大抵の芸は、縦横数十センチの枠しかないテレビの画面を通して見ると、そのよさは大幅に減少します。まして昨今のコンピュータグラフィックは、画面上にどのような不思議な場面でも作り出すことができます。テレビの中で「自由の女神」が消えても、どこかの島が動いても、たいして驚きません。それなのに、いつまでもこのようなものとの関係でしかマジックの将来が期待できないと思っているのであれば何も起きないでしょう。

ギャラの問題も結果にすぎません。後から勝手に付いてくるものです。最初からそのようなことを目標にやっていてはろくな芸になりません。

私はマジックがメジャーになることなど望んでいませんが、メジャーなマジシャンが出現してくれることは大歓迎です。メジャーなマジシャンというのは、芸そのものが一流であり、きちんと観客を楽しませることの出来る人です。

本当に優秀なマジシャンであれば、どのようなタイプでも構いません。デビッド・カッパフィールドやジークフリート・アンド・ロイなどのように大がかりなショーでも、昔のチャニング・ポロックやフレッド・カップスのようなタイプも大歓迎です。Mr.マリックも好きです。決して人まねではなく、その人しか出来ない芸、キャラクター、パーソナリティを持ったマジシャンであればどのようなものでも歓迎します。

マジックがメジャーになれば自分のところにも「おこぼれ」が廻ってくるのではと期待しているかぎり何も起こりません。そのようなことを考える暇があるのなら、自分自身がメジャーになることを考え、努力することです。すべてはそれからです。

魔法都市の住人 マジェイア

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