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「種明かし番組」について(4)

マスクト・マジシャンが出演した番組に対する感想


2001/6/21


先週の土曜日、日本テレビ系列の番組『スーパースペシャル2001 噂の覆面マジシャンが禁断のトリック大暴露』にマスクト・マジシャン(Masked Magician)こと、ヴァレンチノが出演しました。この番組の中では、「マスクマジシャン」「覆面マジシャン」と呼ばれていました。(放送日時:2001年6月16日午後7:00-8:54)

ヴァレンチノは数年前、アメリカのFOX TVでマジックのタネに関しての暴露番組を企画、出演した人物です。長い間マジックの世界で共通の財産としてみんなが大切にしていたものを勝手に暴露することで、エンタテイメントとしてのマジックを無茶苦茶にしました。最近ではブラジルで同種の番組を企画し、国外追放になっています。また、複数の世界的なマジックの団体からも糾弾されている悪名高い人物です。これほど世界中でトラブルを起こしている人物でありながら、日本テレビが彼の特番を放送するという暴挙をやってくれました。

マジックに限らず、ある業界にいられなくなった人物が、その業界に対する恨みから内幕を暴露したり、嫌がらせをしたりすることはめずらしいことではありません。一度はその分野にあこがれ、そこでの成功をめざしていたにもかかわらず、当人の才能のなさ、人間的な問題が多いことから消えてしまう人はいくらでもいます。

自分自身に才能がないことに気がつけば、さっさと他の分野に転身すればよいのに、未練がましく執着し、恨みを持ち続ける人がいるのですからやっかいなものです。このような人は、自分の身の回りに起きる不都合なことはすべて他人のせいであると思っています。自分自身の才能のなさ、欠点は棚に上げ、他人を恨むことにエネルギーを注ぐことで自分を正当化しようとしているのでしょう。

今回の番組を見ても、出演しているヴァレンチノだけでなく、番組自体が薄汚く、哀れな雰囲気が漂っていました。「この番組は、マジックの進化のために古いネタを暴露することで、旧態依然としたマジックを改革するためである」といった大義名分を並べ立てていました。しかし、このようなことは詭弁であり、ウソであることはヴァレンチノも司会者も、百も承知のことです。他人はだませても自分自身はだませないものです。まだしも「金が欲しいからネタをばらしている」と開き直るのなら、多少は本人は救われるでしょうが、悪事を働きながら、詭弁を弄して世間だけでなく、自分を偽ろうとすればますます当人は不幸になるものです。

あの番組に出演していたマスクト・マジシャンは勿論のこと、司会をしていた福留氏も、ゲストの面々も、実際はこのようなことはまずいことであるとみんな気がついています。そのため、ゲストにしても、自分の魂にまで嘘をついて白々しい演技をすることには堪えられないものがあったのでしょう、顔が引きつりながら、笑っていました。高橋英樹など、役者としてはかなりのベテランであるのに、番組全体に漂う下品で薄汚い雰囲気は払拭できなかったのでしょう。

番組の冒頭、マスクトマジシャンの紹介がありました。中でも噴飯ものは、「20代で天才マジシャンと呼ばれていた」というくだりです。

これはまったくのうそっぱちです。マジックの世界は大変狭いところです。20代で、この世界で注目されているのなら、たちまち名前が知れ渡ります。「嚢中の錐(のうちゅうのきり)」というたとえを持ち出すまでもなく、真に才能がある者は、錐の先が袋を破って突き出てくるように、どのような環境にあっても必ず芽を出してくるものです。マスクト・マジシャンことヴァレンチノにはそのような才能は微塵もありません。

今年の3月頃、ショーン・コネリー主演の映画、『小説家を見つけたら』を見ました。このなかで、「若くして挫折を味わった者は、できた人間になるか、危険な人間になるかのどちらかだ」といった主旨のセリフがありました。ヴァレンチノが本当に自分のことを天才マジシャンと思っていたのかどうか知りませんが、自分にはモーツァルトどころかサリエリになるほどの才能も、十人並みのマジシャンになるだけの才能もないと気づいたとき、復讐として、このような方法しか思いつかないところがヴァレンチノの愚かで哀れなところです。

いずれにしても、ヴァレンチノにマジシャンとしての才能などないことは、先日のテレビを見ていても一目瞭然です。ステージの振る舞いも基礎訓練がまったく出来ていません。もしあれで昔本当にステージに立っていたのでしたら、プロとしては間違いなく三流以下です。

私自身は今回の番組に対しては怒りも何もありません。ただただ薄汚く、哀れなものを感じただけです。とは言え、このままこの種の番組を放置するのはまずいのでしょう。テレビ局は海外のものであれ、他局のものであれ、当たった番組があればすぐに真似をします。テレビ業界には、柳の下に2匹どころか、10匹くらいドジョウがいるのでしょう。実際、最近のマジック関係の番組を10本くらいを思い起こしてみても、半数以上が種明かしを含んだものになっています。これは明らかにヴァレンチノの悪影響です。

ヴァレンチノがアメリカのFOXで製作したものなど例外中の例外で、すぐに消えると思っていました。しかし、放っておくと、マジシャンがこのような行為を容認していると誤解するテレビ局があり、困ったものです。

現実に、次々とこのような番組を製作するテレビ局が存在するのですから、この際、はっきりと言ってやらないとわからないのかも知れません。

これはマスクト・マジシャンだけの問題ではありません。少し前にはNHKの教育テレビでも「サムタイ」のネタバラシがありました。このまま放置しておくと、どこまでも暴走しかねません。

日本国内でもいろいろと問題のある団体が存在しています。あやしげな人物や団体は放っておいてもいずれ消える運命にあることは間違いないのですが、「悪貨は良貨を駆逐する」ということもありますので、紳士的に応対しているだけではダメなこともあるのでしょう。

現在、スティングさんのサイトでは世界各国のこの種の問題に対する取り組みを紹介したり、デビッド・カッパーフィールド氏を初めとする著名なマジシャンの意見を紹介したりしてくださっています。プロマジシャンの団体である社団法人日本奇術協会も、やっと重い腰を上げたようで、近々、何らかの発表するようです。

魔法都市の住人 マジェイア


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