ショー&レクチャーレポート

 

スーパーフライデー
Mr.マリックスペシャル

世界三大魔術スペシャル

2000/6/23追加
2000/6/22



放送日時:2000年5月5日(金曜日) 午後7時−8時54分
放送局:TBS系列
タイトル:Mr.マリック 「世界三大魔術スペシャル」
出 演 :Mr.マリック
司 会 :長島一茂・佐藤藍子
ゲスト :梅宮辰夫、小倉久寛、森尾由実、アリtoキリギリス(男性2人)、Z-1(女性4人)、辺見えみり


今回のテーマは、伝説上の出来事と思われているいくつかのマジックをMr.マリックが再現するというものであった。マジックの世界にはそのようなものがいくつかある。実際に昔おこなわれたのかどうかも不明であるが、大変興味をそそられる現象がある。中でもインドの「ヒンズーロープ」と呼ばれるものは、そのようなものの中でも最もよく知られている。

このような古いもの、日本のものでは陰陽道(おんみょうどう)と呼ばれる呪術があり、中国では仙人がおこなっていたと言われる神仙道(しんせんどう)などと引っ掛けて演出を構成していた。


OPENING

お馴染みの音楽とともにMr.マリックが登場する。

9本の矢を発泡スチロールの板に突き刺す。板は柔らかいので、手でも簡単にささる。矢は板の裏まで貫通しており、 貫通している矢の一本に一万円札を一枚引っ掛ける。どの矢にお札を引っ掛けたかは、観客にはわからない。表から矢を抜いたとき、もしその矢にお札がかかっていたらお札は下に落ちる。 うまく落とせたらその一万円札がもらえる。

ゲストが9本の矢のうち、8本を抜くがどれもはずれ。板の裏を見せると、最後に残った一本の矢にお札がかかっている。これはもう一度繰り返していた。

演出としては、マジシャンが観客の意識をコントロールして、お札のぶら下がっている矢を選ばせないようにしているということであった。

★ハンドパワーの実験

お札を平らに広げてから、手のひらに乗せる。念を送るとお札がだんだんとそってくる。これはゲストも全員ができていた。

超魔術100連発

遊園地に子供を集めて、子供が持っているものを使って、即席に超魔術を見せるという演出になっていた。。 しかし、実際は子供がそんなにうまい具合にマジックに向いて品物をばかり持っているはずもないので、放送で使われたようなものは事前に頼んで渡してあったのだろう。

その1 :.シャボン玉

シャボン玉を飛ばして、一つをつまむとガラスの玉のようになる。さらにそれを指先で押さえると、おはじきのようになる。

その2:.伸びる500円玉

500円玉を指先で引っ張ると、飴のように長く伸びる。6、7センチの長さになる。また元に戻してから返す。

その3:ボールペンで指を刺す

Mr.マリックが自分の中指に白い紙を巻いて、子供にボールペンで突き刺してもらう。ボールペンが指と紙を貫通する。

私は初めて見たが、即席マジックとしてはおもしろい。

その4:ヘリコプターカード

イルカの絵が描いてある絵はがきを子供から借りて、体の回りをヘリコプターのように何回か回転させる。(これはジョン・ケネディの売りネタ)最後は絵はがきをたたくと、ミニチュアのイルカが出現する。

その5:スプーン曲げ

子供にスプーンを持たせたままスプーンを折る。

途中を大幅にカットしていたので、マジックとしてはどうにでもなるが、感心したのは子供が勝手な動作をしそうになったとき、それをやめさせたり、制御したりするのがうまい。このスプーン曲げに限らず、この辺りが初心者の人はできないので、観客に振り回されてしまう。少々強引でも、観客をコントロールする技術はどうしてもマスターしておく必要がある。

いったんスタジオに戻り、男性ゲスト数名に、スプーンを鼻にくっつける実験をさせる。うまくできた一人に、超魔術を指導する。

超魔術100連発に戻り、

その6:文字盤の復活

子供から時計を借りて、ティッシュペーパーに包む。金槌で文字盤をたたくとガラスが割れる。 その破片を集めて、もう一度ティッシュに包むとガラスが復活している。

その7:透視

テレフォンカードのデザインを裏から透視する。小さな女の子が、「目がいいんじゃないの」と言っていたが、確かにあれは目がよくないとできない(笑)。

その8:チンカチンク

ポップコーンを4つで、正方形と作る。(一辺が25センチくらい)。二つの上に手をかざすと、ポップコーンが一カ所に集まる。原案は角砂糖、ダイス、コイン、瓶のふたなどで行う「チンカチンク」という古典的マジック。

その9:携帯のストラップの復活

携帯電話のストラップをはさみで切るが、それがまたつながる。一般的な「ロープ切り」と同じ原理だが、確かにこのほうが即席という感じがしてよい。ただし実際には同じようなストラップを前もって準備する必要があるので、即席では無理。

その10:息をかけると文字が出現

AからZまで、アルファベットの形をしたビスケットがある。子供に袋から一つ取りだしてもらう。今回はAであった。そのビスケットを食べてもらってから透明なガラス板に息をかけてもらうと、ガラス板にAの文字がいくつも現れた。

これはカードの名前を出現させるものが昔から販売されている。また、今回のように好きな文字やメッセージを出現させるためのキットも発売されている。Mr.マリックはこれが好きなようで、これのヴァリエーションをよくやっている。

ここでいったんスタジオに戻り、ゲストの小倉氏がMr.マリックから教わったマジックを見せる。佐藤藍子に、5種類のコイン、500円、100円、50円、10円、5円の中から一枚を小倉氏が見ていないときに握ってもらい、どのコインを握ったのか当てる。昔からある初心者用のマジックだが、匂いで当てるのが新しい演出。ばかばかしいようなマジックだが、これでも当たれば不思議に思えるらしい。今回、小倉氏は失敗していた。

超魔術100連発の続き

その11:リップクリームの変形

長さが5、6センチのスティック状のリップクリームに息をかけると、2センチくらいに小さくなる。もう一度息をかけると、今度は10センチくらいある巨大なリップクリームになる。

その12:お菓子がつながる

10円玉くらいの大きさで、ドーナツのように輪になったお菓子を二つ握ると、二つが連結されている。

その13:ボールの出現

押すと赤い玉のようなものが出てくるおもちゃがある。(ピエロの鼻?) それを取ってポケットにしまうが、また出現する。何度か繰り返した後、2個の玉がどちらの手にあるか当てさせる。最後はスライディーニーの「紙玉のコメディ」の要領で消す。

その14:ヘアーバンドが指に貫通

左手の中指を観客にしっかりつかんでもらい、絶対最後まで離さないように頼んでおく。直径5センチくらいのヘアーバンドを手のひらに乗せて、ハンカチをかぶせてもらう。観客が中指をつかんだままなのに、ハンカチを取りのぞくと、中指に輪ゴムが通っている。 即席マジックとしては優秀。

ここから世界三大魔術に挑戦する。

★日本:陰陽道

まず日本のものでは、陰陽道で 安倍晴明(あべのせいめい)が昔行ったとされるものを再現してみせた。

安倍晴明は、箱の中にあった15個のみかんを生きたネズミに変えたそうだ。

Mr.マリックは最初ゲストに玉子を渡し、箱の中にいくつか入れてもらう。この間、Mr.マリックは後ろを向いており、何個入れたのかはわからない。それを透視して当ててみせる。

第二段はMr.マリックが玉子を箱に入れ、その数をゲストに当ててもらう。ゲストのうち 二人が当たっていた。 もう一度同じようにして箱の中に玉子を入れる。(4個入れた) ふたをした後、ゲストに当てさせるが、箱をあけると、今度は玉子が生きた小さなネズミになっていた。

第1段、第2段が 第3段のためのうまいあらためになっている。このあたりがMr.マリックのうまいところ。

★中国:神仙道

時間をコントロールする技を見せる。

小さな封筒を取りだし、中に一枚だけ赤裏のトランプが入っている。 青裏のデックを取りだし、シャッフルした後観客にデックを二つに分けてもらう。分けたところのカードを見ると、封筒から出してきた赤裏のカードと一致している。これは、種明かしをした。(ワン・ウエイのフォーシングデック使用)

つぎに、縦横高さが10センチ程度の箱を見せる。終始見えるところに鎖でつり下げられている。中に予言が入っている。

「見えないトランプ」を取りだし、観客にシャッフルしてもらい、適当な枚数を持ち上げてもらう。その見えないトランプを数えてもらうと、12枚あるとゲストは言っていた。

つり下げてあった箱を鎖からはずして開けると、中には小さな封筒と青裏のトランプが一組入っている。封筒には赤裏のトランプが一枚入っている。

箱から出した青裏のトランプを観客に渡して、上から12枚目のカードを抜き出しテーブルの上に置いてもらう。封筒にあった赤裏のカードも裏向きのままテーブルに置く。その2枚を表向きにすると、一致している。

これは不思議。私も初めて見た。どうなっているのか原理が不明。

★ 誕生日の新聞紙

何枚かの新聞紙を小さく破る。ゲストの一人に、透明なガラスの表面に誕生日を書いてもらう。9月14日であった。

破った新聞紙を両手に抱えられるだけ持って、大きな扇風機の前に行き、新聞の切れ端をガラスに向かって吹き飛ばす。数メートル先にある透明なガラスに向かって切れ端は飛んでいくが、一枚だけがガラスに張り付いている。それもガラスの裏側に張り付いている。それをはがして見ると、昭和60年9月14日の日付が入ったものであった。これがゲストの誕生日。

★残るのは10円玉

一万円札、五千円札、千円札、500円玉、100円玉、10円玉の6種類のお金を用意する。それと紙に線を引いて、1から6までの枠を作る。先のお金をその枠に適当に置いてもらう。これはゲスト全員に、自由に好きな場所にお金を置かせる。この間、Mr.マリックは観客がどの枠に何のお金を置いたのか見ていない。

置いたら、Mr.マリックが指示を出すが、その間も観客のほうは見ない。

ゲストがそれぞれバラバラに置いたのに、マリックの指示に従ってお金を動かしてゆくと、最後に残るのは全員10円であった。

ゲーム形式で、最初に100円出してもらい、最後に残ったお金がもらえるという設定にしてあったので、やっている本人は思いの外興奮するようだ。

原案は1974年にポール・カーリーが出した本、"Paul Curry Presents"の中にある"A Penny For Yours Thoughts"

★原始魔術の世界

3個の透明なグラスに砂を詰める。この中のひとつに、小さな骨を入れてもらう。どのコップに骨が入っているかは砂にうもれて外からはわからない。手に別の小さな骨を持ってコップに近づけると、3個のコップの一つが突然動きだす。そのカップの砂を出すと、中に骨が入っている。

次に、観客からお札(一万円札)を借りて、番号をメモしてもらう。 お札を台の上に置いて、周りを骨で囲む。上から中が透けて見えるカゴをお札の上にかぶせる。

バナナを3本とりだし、1本を選んでもらう。他の2本はナイフで切って、普通のバナナであることを示す。選んだ一本のバナナをカゴの上に置いてから、お札に念を送ると、勝手にお札が折りたたまれ、八つ折になる。さらに念を送ると、お札が突然燃えだし、灰も残らず完全に燃えつきてしまう。

カゴの上にあったバナナをむいて、ゲストに食べてもらうと、中から折りたたまれたお札が出てくる。番号をチェックすると、先ほどの消えたお札に間違いない。

これはマニアにはお馴染みの「ビル・イン・レモン」のヴァリエーションであるが、お札を燃やすところでも、今までなら封筒に入れてから燃やしていたのが、今回のものは封筒もなく、むき出しのままで突然発火したので観客も一層驚いていた。

★ヒンズーロープ

これが今回のメイン。昔からインドに伝わるとされる有名なマジックではあるが、実際にこれを見た人は誰もおらず、文献に残っているだけの幻のマジックである。

インドでは、広場でマジシャンが太いロープを持ち出し、それを空中に放りあげるとロープが立ったまま上昇して行き、ロープの先が見えないくらいまで高くあがる。そこに子供が登っていき、子供の姿も見えなくなったとき、上のほうで悲鳴がして、上空から子供の手足がバラバラになって落ちてくる。それをカゴに拾い集め、おまじないをかけると、またその子供が生き返って復活するというものらしい。

これが実際に演じられたものか、実際はもっと簡単なものであったのに、尾ひれがついて話が大きくなったものなのか、その辺りの真偽は不明である。もしこれに近いことが行われていたのであれば、霧が立ちこめて、視界がせいぜい数メートルくらいのときにやったか、夕暮れの薄暗いときにやったのだろう。地理的な条件も整わないとできないが、前もって周到な準備をしておけば今のようなことは可能かもしれない。しかし、実際にはまず不可能だろう。

今回、Mr.マリックがおこなったのは直径が10センチほどもある太いロープで、長さが10メートルくらいのものを使っていた。ロープを観客に調べてもらってから竹で編んだカゴに入れると、手も触れないのにロープが上昇してきた。2メートルほど上昇したところで、見物人の中にいた小さな子供をロープに抱きつかせると、それでもロープはまっすぐ立ったままであった。その後、いったん子供を降ろすと、またロープは上昇を始め、6、7メートルの高さまで昇っていった。またあの子供を登らせるのかとおもったら、さすがにそれは無理なようで、猿に登らせていた(笑)。それにしてもこの猿はかわいい。猿はロープの上のほうまで登って、下りてきた。

猿が下りてからロープはまた上昇を続け、最後は10メートルほどのロープが、ほぼ全長まで伸びて、空中に立ち上がったままになっていた。

ただそれだけのことなのだが、これはなかなか感動ものであった。知人の若い女性など、どういうわけか、涙が出てきたと言っていた。最後はMr.マリックがロープに入れていた念を抜くと、、ロープは一瞬にして柔らかくなり、崩れるように地面に落ちてきた。

★全体の印象

前半は小ネタばかりで退屈であったが、最後の世界三大魔術はどれもよくできており、十分楽しめた。特にヒンズーロープは金もかかっており、ハイテクのメカを駆使して制作したのだろうが、よくできている。妙に感動する。何に感動しているのか自分でもよくわからないのだが、最近のMr.マリックは誠実にマジックを演じていることが伝わってくるのだろうか。現象に感動したというより、マジックの可能性を本気で追求しているMr.マリックの姿勢に好感が持てた。

追加:2000/6/23

「その3 ボールペンで指を刺す」や、今回行ったマジックのいくつかがMr.マリックの本に載っていました。『モテる超魔術』 (ワニマガジン社 1,200円)

 


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