★レナード・バーンスタイン氏の御言葉

 

私にそのような質問をしたからだよ。

Leonard Bernstein (1918-1990)



ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者であるバーンスタインのところに、ひとりの若者がたずねてきました。

「私も指揮者になりたいのですがどうでしょうか」

「無理だね」

バーンスタインは冷たく言い放った。

「どうしてですか?私には指揮者としての才能がないのでしょうか」

「君の才能のことなど知らんが、私にそのような質問をしたからだよ」


マジェイアの蛇足

何かを目指している人が、その道の高名な人のところに行き、先の若者のようなことをたずねたら、大抵同じ答えが返ってくるはずです。バーンスタインに限ったことではありません。指揮者志望でなくても、作家、詩人、画家、落語家、マジシャン、何だって同じことです。

作家や詩人が言葉で自分を表現するのは、書くことでしか自分を押さえられない衝動があるからです。食えるか食えないかなどは、は二の次、三の次です。

何の道に進むにしても、本当にその分野で大成する人はそれをやることが当人にとっては呼吸をするのと同じくらい当たり前のことで、それがない自分など考えられないものです。なぜあなたは山に登るのかとたずねられて、「そこに山があるからだ」と答えた登山家がいましたが、それが正直な気持ちなのでしょう。理屈ではありません。自分の魂が求めているから、そうせざるを得ないだけです。

バーンスタインが「無理だ」と言ったのも、その辺りのことがわかっていたからです。何かの道に進みたいと思っている人間は、いちいちそのようなことを誰かにたずねたりしません。誰に何と言われようが、自分はそれをやることでしか生を実感できないのですから、放っておいてもその道に進みます。誰かにお伺いをたててから自分の道を決めるような者はどうせ将来たいしたことはありませんから、やめるように言ってあげた方が親切というものです。

バーンスタインのように、ダメなものはダメとはっきり言ってあげるのが本当のやさしさです。中途半端にやさしいことを言っても、結局その人を不幸にするだけです。


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