★立川談志師匠の御言葉<其の二>

プロが感心するくらいの芸をやれ!

 

立川談志 (1936-)

BSスペシャル 「談志&爆笑の芸能大全集」 第3弾 放送日2000年12月18日


マジェイアの蛇足

その道のプロが見ても感心するような芸であってこそ、本当によい芸です。同業の芸人が、自腹を切ってでも見に行きたいと思うくらいの芸を持っていないと、一流とは言えません。

2、30年前、落語家だけが集まって宴会を開いたとき、出席している落語家がそれぞれ隠し芸を披露することになりました。みんなそれなりに芸達者な人ばかりですから、いろいろな芸が飛び出したことでしょう。

談志師匠の番がまわってきたとき、「落語を聞かせてやる」と言ったのです。落語家ばかりの宴会で、落語を聞かせてやると言い切れる自信、これにはみんな驚いたことでしょう。しかしプロの落語家が、談志師匠の落語なら聞きたいと納得してしまうのですから、えらいものです。

何の分野でもプロというのはこれくらいの自信と魅力がないと大成しません。マジックの世界でも同じです。自腹を切ってでも見に行きたいと思わせるほどのものがないと、しょせんその他大勢の一人で終わってしまいます。

プロマジシャンでそれなりの人気がある人は、何かの技術を極めているか、常に新奇なものを出し続けています。「あの人のあの芸を見たい」と思わせるものがあるか、その人のショーに行けば何か新しいものを見せてもらえるという期待感がないと人を集めることなどできません。

たとえ古い芸であっても、観客にまた見たいと思わせるくらいのものがあれば、それはそれですばらしいことです。しかしプロマジシャンの中には10年、20年とやっていても、手垢のついた芸を繰り返しているだけの人も少なくありません。同業のプロマジシャンを感心させるようなものもなく、常に新しいものを自分で作り出す努力もしないのであれば、観客からもそっぽを向かれるのは当然のことです。才能もなく、企業努力もしないで食べていける世界などありません。

プロであるのなら、一般の観客だけでなく、同業のプロが感心するくらいの芸を身につけて欲しいものです。


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