★フランツ・ハラーレイ氏の御言葉

 

奇術師の競争相手はルーカスだよ。

 

Franz Harary (1962〜)


マジェイアの蛇足

ステージで行われるマジックで、「イリュージョン」と呼ばれる大がかりなものがあります。近年、この分野で演じられるマジックは、とどまるところを知らないかのように巨大化しています。

デビッド・カッパーフィールドやランス・バートンは「東京国際フォーラム」のような5000人以上入る会場を使用し、フランツ・ハラーレイも同じくらい入る代々木第2体育館で公演をしていました。

劇場に入りきらないくらい大がかりなものも、よく演じられています。デビッド・カッパーフィールドは「自由の女神」や「オリエント急行」などを消したり、ランス・バートンもジェット機を消していました。フランツ・ハラーレイはハワイの島を動かすといったことまでやっています。

本当に目の前でこれだけ大きなものが消えたら驚きも大きいのでしょうが、どれほど大きくても、テレビのモニターを通してしか見せられないのであれば、いくら大きくしたところで意味はありません。画面の中で「自由の女神」が消えたとしても、コインが一枚消えたのと変わりはありません。一枚のコインであっても、それが目の前で消えるのであれば、テレビ画面の中で巨大なものが消えるより、観客は驚くものです。大きければ大きいほど、画面を通してしまうとリアリティがなくなり、いかにもウソっぽくなってしまいます。

マジシャンは扱う道具が大きければ観客に与えるインパクトも強烈だろうと思っているようですが、そう簡単なものではありません。特に最近の観客は大画面の映画で、特殊撮影や、C.G.を駆使して作られた立体映像(3D)を見慣れていますので、少々大きなものが現れても驚かなくなっています。

先の言葉はフランツ・ハラーレイが、あるテレビ番組で言っていました。「ルーカスだよ」というのは、勿論ジョージ・ルーカスに限ったことではなく、象徴として言っているだけです。

確かに今の時代、マジシャンのライバルは他のマジシャンではなく、特殊撮影やC.G.で作り出される映像なのかも知れません。特に最近の映像は、人工的に作られたものなのか、現実のある場面を撮したのか、区別できないくらいになっています。

「イリュージョン」の分野は、もう一度元に戻ってみて、何を見せることで観客に新鮮な驚きを提供できるのか、考え直さないといけない時期になっているのでしょう。


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