★長谷川智氏の御言葉1
奇術は勝負ではありません。
長谷川智 (1915-1955)
長谷川智氏は、日本奇術連盟の創始者です。数十年前にお亡くなりになっていますが、今でも機関誌『奇術界報』は出ています。
マジェイアの蛇足
マジックを見せたとき、タネが見破られなかったらマジシャンの勝ち、見破られたらマジシャンの負けと思っている人がいます。マジシャンの中にも、観客の中にもこのように思っている人がいます。
テレビの番組でも、マジシャンとゲストの間で、このような「対決」をさせる番組がありました。しかし、マジックは「勝負」ではありません。
先ほどの番組は論外ですが、マジックを見せたとき、観客から「あっ、わかった」という声が出ると、動揺してしまったり、逆上してしまうマジシャンがいます。そのときは冷静なふりをしていても、それですっかり自信をなくしてしまい、人前でマジックを見せなくなるマジシャンも少なくありません。特に、初級から中級あたりのマジシャンによく見られます。
たまたま観客があるマジックのタネを知っていることがあります。そのようなとき、「知っているよ」と言われたら、あなたはどうします?冷静に自分自身をコントロールする自信がありますか?
「タネがわかった」と言われて、もしあなたがムッとなるのであれば、なぜ自分はムッとしたのか、その理由を考えてみてください。 おそらく優越感を感じたいと思っていたのに、それが踏みにじられたからでしょう。しかし、それは自業自得です(笑)。マジックを見せることで、自分自身のちっぽけなエゴを満足させようとしたあなたにも責任があります。
マジックは、不思議な現象を楽しみたいと思っている相手にしかできない芸です。もし挑戦的な観客と一対一で見せる状況であるなら、さっさとやめることです。そのような観客相手に何かを見せたところで楽しくありません。
観客が数名いるとき、一人だけ、やたらと挑戦的な人がいる場合は、適当に無視するか、おだてて黙らせることです。おだて方ですが、大阪梅田の阪急百貨店のマジックコーナにはうまいセリフが張ってありました。 「タネを知っている人はえらい!だからに人には言わないでね」という主旨のことが書いてありました。
これは実演中に、タネを知っている子供などが自慢げに、「あれはこうなっているんだ」と言われることを避けるためでしょうが、タネを知っている人をおだてながら相手をコントロールする、なかなかスマートでうまい方法だと思います。
勝負は、売られた側がその挑発にのらなかったら成立しないのですから、あっさりと受け流すのが得策です。