★フーディーニ氏の御言葉

ショーマンシップの秘密は、実際に演者がやってみせたことにあるのではなく、好奇心に満ちあふれた観客に、演者が本当にやったのだと思い込ませるところにある。

Harry Houdini (1874-1926)

『不可能からの脱出』 松田道弘著 王国社 1985年

2000/1/31(追加更新)


マジェイアの蛇足

上記の言葉は、『ロベール・ウーダンの正体』という本の中で、フーディーニが語っていることです。フーディーニというと、「脱出王」として名高いのですが、何かを見せたとき、観客がどうすれば一番驚くのかを知り尽くしていた人です。

厳重な牢獄から抜け出してみせたり、最新式の手錠をかけられてもはずしたり、鎖で縛られ、箱詰めにされ、氷のハドソン川に投げ込まれても、そこから自力で脱出して浮かび上がってきました。上記の松田さんの本には、実際にフーディーニがどうのようなことをやっていたのかを知る興味あふれるエピソードが満載です。

2,3紹介しましょう。

観客に、その人自身の懐中時計(昔はみんなこれでした)を取り出してもらい、竜頭を回転させて、適当な時間にあわせてもらいます。勿論、これはフーディーニにはわかりません。時計を裏向きのまま、テーブルの上に置いてもらいます。フーディーニは時計の裏を凝視するだけで、その人のあわせた時刻を言い当ててしまいます。

これはパーティなどでフーディーニが何か見せて欲しいとリクエストされたとき、よく演じていたそうです。

このようなことをやると、中には、「じゃ、私のでもやってみてくれ」という人が出てきます。しかも今度は時計をテーブルの上に置くのではなく、さっさとポケットに入れてしまって、この状態で当てろというわけです。それでもフーディーニは当ててしまいました。

これのやり方は上記の松田さんの本に解説されていますが、これを読むと、フーディーニが、「マジックの効果」というのがどのようなものかを知り尽くしていたことがわかるはずです。

最初にあげた言葉もそのようなものです。観客が何かを不思議がってくれるのは、ある現象に対して、常識や先入観があるからです。その力を利用することで、本当は不思議でもないことも、あり得ないこと、不思議な出来事になってしまいます。マジシャンは本物の魔法使いである必要はなく、観客が勝手にマジシャンを本物の魔法使いや、超能力者にしてくれるのです。 ただこれは一歩間違えると「詐欺」になります。どこまでがマジシャンの能力であり、どこからがタネの力なのかを公開することは演出上無理ですが、芸としてのマジックを演じるのであれば、どこかで芸人としてのモラルを意識しておかないと、気が付いたら「教祖」になっていたということにもなりかねません。


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