★フレッド・カップス氏の御言葉<其の一>

誰かが私のマジックをコピーして演じたとしても、私はまったく気にしていません。確かに私のやっているマジックをコピーすることはできるでしょう。しかしフレッド・カップス自身をコピーすることは誰にもできません。

Fred Kaps (1926-1980)

マジェイアの蛇足

これは本で読んだのではなく、フレッド・カップスから直接聞きました。

今から20年以上前、1976年に東京の帝国ホテルで開催されたPCAM東京大会のことです。 4日間ほど滞在していたとき、大阪から行った大阪奇術愛好会(I.B.M.大阪リング)のメンバー数名で、夜中にカップスを誘い出し、焼き肉屋に行きました。マジックショップ、「ミスターマジシャン」のオーナー、根本毅さんがカップスを誘うと、気軽に応じてくれたのです。松田道弘氏、赤松洋一氏、三田皓司氏、福井哲也氏等と一緒に同席できたことは私にとって幸運でした。今振り返ってみても、このときの一期一会ほど、私に影響をあたえたものはないかも知れません。

その店で、何かの話の折りに、「多くの人があなたのマジックをコピーしてステージなどでやっていますが、それについてどう思いますか」という質問をしたときの返事が上記のものです。「誰もフレッド・カップス自身をコピーすることはできない」というのは、アルバート・ゴッシュマンの言っている、"You are the Magic!."と同じです。

フレッド・カップスは背も高くハンサムで、それに加えて人間的にも尊敬のできる本当に魅力のある人でした。醸し出す雰囲気、威厳、品格といったものは、いくら真似しようとしても一朝一夕にできるものではありません。タネをコピーするようなわけにはいきません。

誰かがカップスのトリックをコピーして、どこかの劇場に自分を売り込みに行ったところで、相手にしてもらえるほど芸の世界は甘くありません。 アマチュアでもプロでも、結局、勝負できるのは自分自身のスタイルを持っている人だけです。何の分野でも、真似されるようになったら一流の証でしょうが、ここまではっきりと言い切れるのは、自分自身に揺るぎのない自信があるからでしょう。

マジシャンの多くは、自分の芸がコピーされることをとても気にしています。なかには頼まれたって真似したくないような芸なのに、つまらないことを気にしている人もいます。プロであるなら、「真似したいのならどうぞ」と言えるくらいの芸とプライドを持って欲しいものです。


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