★チャールズ・M・シュルツ氏の御言葉
インスピレーションをまっている余裕などありません。
Charles M. Schulz (1922-2000)
マジェイアの蛇足
チャールズ・M・シュルツ氏については今さら紹介するまでもないでしょう。チャーリー・ブラウンやスヌーピーでおなじみの「ピーナッツシリーズ」を産み出した、世界的によく知られたアメリカの漫画家です。1950年から2000年1月に亡くなるまで、50年間に渡り新聞や雑誌に『ピーナッツ』を連載していました。
一口に50年と言いますが、これだけの期間、毎日、新聞や雑誌に原稿を送り続けることは大変なことです。描くネタがないからといって休めません。アイディアやインスピレーションが湧いてくるのをまっていては仕事になりません。一定のレベルを維持しながら、50年間も毎日描き続けるためには、描くことが呼吸をすることや、食事をするのと同じくらい、自分にとって日常にならなければ続けられるものではありません。霊感のひらめきだけでは無理です。才能がなければどうしようもないのですが、インプットとアウトプットをとぎれることなく継続させることが重要なのでしょう。
空気の力で石油等の液体を吸い上げるのに使用する家庭用のポンプがあります。あれは液体が落下するときのエネルギーが次の液体を吸い上げる力になっています。一度途中で止めてしまうと吸い上げる力はなくなってしまいます。
シュルツ氏に限らず、数学者の秋山仁氏も若い頃、留学期間中、担当の教授から週にひとつは新しい定理を発見し、提出することを義務づけられていたそうです。無理なように思えても、それを自分自身への課題にすればたいていのことは何とかなるものです。自分にはできないときめてかかれば、できるものでもできませんが、それができなければ食べられないと思えば何とかなるものです。
マジック関係では、トリックスの創設者で社長でもある赤沼氏も同じようなことを自分に課していたそうです。毎日少なくともひとつは新しいネタやマジックを考案することを日課にしていたようです。大半はボツネタでしょうが、それでも何個かにひとつは商品として販売できるくらいのものも出てきます。
シュルツ氏はインタビューで、「まとめて描き溜めておいて、ヴァカンスなどにいらっしゃる予定はないのですか」という質問に、「ピカソは旅行に行くからといって、急いで絵を仕上げたりするでしょうか」と答えていました。「私にとっては毎日健康で、絵を描き続けられることが一番幸せなことなのです。何か他のことをするために、描くことをおざなりにすることなど考えられません」とも言っていました。
これはシュルツ氏が自己管理能力にすぐれているというよりも、『ピーナッツ』を描くことが、呼吸をするのと同じくらい自然なことであったからこそ言えた言葉でしょう。時間をきめて、毎日ある分量の仕事を続けて行けば、何年か後には驚くほどのものが出来上がっているものです。
ゼロをいくら積み重ねてもゼロですが、たとえ一日一歩であっても、歩き始めれば知らないうちに随分遠くまで来ているものですから、とにかく不断に歩き続けることが重要なのかもしれません。