★発言者不明<其の二>:職人の言葉
上手は下手の見本なり、 下手は上手の見本なり。
『職人』(永六輔著:岩波文庫)
マジェイアの蛇足
1970年代初頭、卓球の世界チャンピオンであった中国の荘則棟選手が日本に来ました。日本各地で試合をしながら、日本の中学校も訪れ、中学生相手に模範試合もしました。勿論、中学生相手に勝負をしても荘選手が勝つのは当然ですが、中学生との試合が終わった後、対戦した中学生に、「私の良くない点に何か気づいたら、教えてもらえませんか」と言ったそうです。言われた中学生は世界チャンピオンからそのようなことを言われても、返事に困ったことでしょうが、学ぶ気持ちさえあれば、自分よりもはるか下の相手からでも、得るところはいくらでもあります。
何かを習い始めたばかりの初心者にとって、ベテランと言われる人や、上手な人の演技や技が参考になるのは当然です。しかし、自分より、はるか下の相手からでも、学ぶ点はいくらでもあるのです。
上手な人が、下手な人や初心者の演技を見ても参考にならないと思うかも知れませんが、そのようなことはありません。名人、上手と言われている人には想像でもできないようなことを、初心者の人は見せてくれます。間違った考え方から生じている、初心者特有の不自然な動きやせりふは、ベテランの人や上手な人にとっても、新たな気づきを与えてくれ、自戒としても大変役に立つものです。