★石田天海氏の御言葉<其の一>
カードが教えてくれる。
石田天海 (1889-1972>
『ふしぎなあーと』(石田天海追悼号)Vol.2-2,1972年
マジェイアの蛇足
1970年代前半、加藤英夫氏が出しておられた月刊誌、『ふしぎなあーと』に紹介されていました。天海氏と加藤氏がカードマジックの話をしているとき、天海さんがおっしゃった言葉だそうです。
「カードが教えてくれる」となっていますが、これはちょうどそのとき、カードマジックの話をしているときであったから、「カードが」となっているのでしょう。実際にはカードに限らず、コインでもロープでも何にでも当てはまります。もう少し一般的に言うなら、「道具が教えてくれる」と理解しておいてもかまいません。
これは、新しいマジックの創作や、自分なりの改案を考えたことのある人なら多くの人が体験していることだと思います。頭の中で考えるだけでなく、実際に手にとってカードやコインを触っているとき、突然、あるムーブ(技法)ができてしまうことがあります。
ある技法を練習し始めると、自分にはどうしてもうまくできない部分があったり、原案者とは指の長さや手のひらの硬さなども違うため、自分にはとうてい不可能と思えるような技法もあります。しばらく練習してみて、どうしてもうまくできそうにないと思ったら、自分の手に合うように変えるのは悪いことではありません。自分にとって一番自然な動作が、技法としても無理がなく、安心して使えます。しかし、このようなことは最初からわかるものではありません。トライアル・アンド・エラーを繰り返す中で、おのずと気がつくことがほとんどです。練習の中で、ちょっとしたコツがつかめたときなど、まさに、「道具が教えてくれる」という言葉を実感としてわかると思います。頭の中だけでは予測不可能ことでも、道具を手にして、色々とやっていると、「道具が教えてくれる」ときがやってくるものです。