製品情報

 

製品名 Chop Cup
価 格 30ドル程度
原案者 Chop Chop
購入先 海外では大抵のマジックショップにあります
分 類 チョップカップ

ミカメクラフトのチョップカップ

1999年1月13日


最初に

「チョップ・カップ(Chop Cup)」と呼ばれるカップがあります。これはアル・ウィートレイというマジシャンの発明とされています。彼の芸名が「チョップ・チョップ」であり、その名前から彼が使っていたこのカップを「チョップ・カップ」と呼んでいます。

一口に「チョップ・カップ」と言っても、今では様々なタイプがあります。最も一般的なものは金属製で、「カップ・アンド・ボール」に使われるカップとよく似たものです。金属製以外では、革製、木製、紙コップ、陶器など、色々あります。カップ・アンド・ボールのカップは、何の仕掛けもない普通のカップを使うことが多いのですが、チョップ・カップにはちょっとした仕掛けが組み込まれています。その仕掛けがあるものは、素材には関係なく、「チョップ・カップ」と呼ばれています。

現象

3個のカップと3個の玉を使う「カップアンドボール」であれば、定番と言ってもよい、ダイ・ヴァーノンの完成されつくしたルーティンがあります。しかし、チョップ・カップにはそのようなものはありません。あえて選ぶなら、ドン・アランが過去数十年にわたってこれを演じていますので、彼の手順が最もよく知られているもののひとつでしょうが、ほとんどのマジシャンが真似をするほど一般的なものではありません。と言うより、チョップ・カップの場合、使う道具がカップ1個とボール1個のため、それほど変わったルーティンを組めません。どうしても似たようなものになってしまいます。

ドン・アランは観客に、金属のカップを一つと、赤いボールを1個使い、ちょっとしたゲームをやってみようと持ちかけます。

まずボールをカップに入れて、口の部分を手でふたをする格好で上から持ち、カップを上下に振ります。反対側の手でカップを取り、テーブルの上に口を下にして、カップをすばやく伏せます。このとき、中にあったボールがカップの下にあるのか、それとも手で抜き取ったかを当てるゲームです。つまり、ボールがカップの下にあるのか、ないのかという単純なゲームです。

何度かやっているうちに、突然、巨大なボールがカップの下から出現します。さらにそれがもう1個現れます。終わってから、この2個を一緒にカップに入れようとしても、絶対に入らないくらい大きいボールです。

コメント

Chop Cup写真の左に写っている金属製のものがドンアランタイプのカップです。

彼のルーティンでは、途中、小さいボールをポケットに入れたのに、それがカップの下から出てきたりする部分もありますが、そのようなところはほとんど印象に残りません。何度か小さいボールをカップの下に入れたり、ポケットに入れたりしていたと思うと、突然大きなボールが連続して2個出てくるところだけが印象に残ります。

ドン・アランのような見せ方をするのであれば、あっという間にクライマックスまで行ってしまいます。実際、1分程度で終わるでしょう。彼は最後の大きなボールを詰め込む瞬間が大変うまく、周りを観客に取り囲まれた状態でも平気でこれを演じています。ドン・アランのチョップ・カップは、彼のキャラクターとも合っていますので、彼が演じる分にはよいのですが、誰にでも真似できるというものではありません。特にカップを机の縁にたたきつけて、「バーン」と大きな出しながら、そのタイミングで大きなボールをロードするので、あの部分はちょっとできないでしょう。どうも行儀が悪いというか、がらが悪いというか、誰もが真似できるようなハンドリングではありません。彼はこれを何十年と演じていますので彼がやっている分にはそれほど気になりませんが、どうも私はイマイチやってみたいという気になりません。

ラリー・ジェニングスも若い頃、マジック・キャッスルでこれをよく演じていました。ジェニングスはマジックの専門月刊誌、"Genii"で1965年に自分のルーティンを発表していますが、それまでは数年間、ペットトリックとしてマジシャンには秘密にしていました。それは、この発表の数年前、原案者のチョップ・チョップにジェニングスの手順を見せたところ、チョップ・チョップは感激して、「このカップを使ったマジックとしては、今までに見たどのようなものよりもすばらしい」と最大級の賛辞を贈っています。おまけに、他のマジシャンには種明かしをしないようにと、ジェニングスに約束させたほどでした。ジェニングスもそれを守り、チョップ・チョップが1964年に亡くなるまで、決してタネを明かさなかったのです。このジェニングスのルーティンは、バズビーのところから出ています、"Larry Jennings on Cards & Coin Handling"の中に解説されています。

ジェニングスのルーティンも基本的にはドン・アランと同じ"Guessing Game"です。ボールがカップの下にあるのか、それともないのかをあてさせるものですが、グラスやシルクを使い、もう少しマジックらしくなっています。

なお、ジェニングスにはチョップ・カップではなく、普通のカップ・アンド・ボール用のカップを1個と、3個のボールを使う別のルーティンもあります。これはこれで大変よくできています。シルクからカップやボールが出現し、最後はまたカップもボールも消えて、シルクだけに戻るという洒落たものです。

テーブルホッピングのプロなどでは、カップアンドボールより、チョップカップをレパートリーにしている人のほうが圧倒的に多いでしょう。カップアンドボールはカップを3個使う必要があるため、ある程度スペースが必要です。これはレストランなど、狭い場所でマジックを見せるテーブルホッパーにはつらいでしょう。その点、チョップ・カップであれば、スペースとしてはカップ1個分ですみます。

日本人のルーティンとしては、根尾昌志氏のものが傑作です。これはヨーグルトの容器とスプーンを使って演じる珍しいものです。最後のオチがすばらしいのでそれを紹介したいのですが、ここではあえて伏せておきます。もしどこかで根尾氏のルーティンを見せてもらう機会があれば、そのときびっくりしてください。

チョップ・カップは、アメリカのマジックショップであれば、大抵どこのショップでも扱っています。値段もそれほど高くありません。30ドルから50ドル程度でしょう。日本ではつい最近、ミカメクラフトから新しいタイプのチョップカップが発売されました。(MC SUPER CUP, 12,000円)

このページの一番最初にあった写真がそれです。脚がついているのも今まであまり見かけたことがありません。さらに、これには今までにない、新しい仕掛けがあります。うたい文句は、観客にネタのボールとカップを一緒に渡しても大丈夫ということなのですが、果たしてそれがプラスなのかどうかは少々疑問です。今までのものでも別段不自由だと感じたことはありませんので、蛇足のようなメカであるような気がしないでもありません。また、今までの手順に慣れていると、このカップを使ったハンドリングに慣れるまで、少々練習が必要です。カップの作りは大変美しく、きれいに仕上がっています。

 

魔法都市の住人 マジェイア


INDEXindexへ 魔法都市入り口魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail