書籍紹介

書名 クロースアップ・マジック
著者 松田道弘
出版社 ブッキング
価 格 2500円(税別)
ページ 207ページ
ISBN 4-8354-4181-8
分類 クロースアップ・マジック

2005年8月5日





 「クロースアップ・マジック」がはじめて世に出たのは1974年です。松田道弘さんのはじめての著書でもありました。金沢文庫から出版され、その後、筑摩書房に版権が移り、『即席マジック入門』というタイトルで筑摩文庫のシリーズとして出ていました。しかしその後、長い間この名著が手に入らない状態が続いていました。それが先日ブッキングから復刻されました。

 この本で解説されているマジックはどれもクロースアップマジックの分野ではスタンダードといってよいものばかりです。各分野の代表的なマジックが、基本技法から高いレベルまでわかりやすくまとめられています。

 例をあげるときりがありませんが、コインマジックであれば「ハンピンチェン・ムーブ」と呼ばれる巧妙な技法があります。この技法は、ある程度本格的にクロースアップマジックを練習し始めた人であれば、以前はたいてい知っていたものです。このようなものを知って感激するたびに、ますますマジックにのめり込んでいったものです。しかし最近は「マッスルパス」は知っていても、「ハンピンチェン・ムーブ」など知らないという人もめずらしいことではありません。このようなアンバランスな状態を改善するためにも、この名著が復刻されたことは喜ばしいことだと思います。

 スポンジボール、サムチップ、チンカチンク、指輪と棒、色変りハンカチ、石田天海師のロープマジック、家庭にあるコーヒカップで演じられるカップアンドボールなど、初心者がこの本1冊をマスターすれば、クロースアップマジックのかなりの分野がカバーできます。

 入門者用の本というと、簡単なマジックばかりを集めたものと思うかも知れませんが、そうではありません。どれもある程度の練習量が必要です。しかしスタンダードな技法を正しく学び、ひとつマスターしたときには確実に他のマジックにも応用のきく力がつくようになっています。なかには天海師のロープマジックのように、かなりの練習を必要とするマジックもありますが、これなどひとたびマスターすれば一生ものといってよいレパートリーになります。

 コインやダイスのような小さいものを消すことも、この本で学ぶことができます。スタンダード知ると、その後の応用は無限に広がりますので、これからマジックをはじめる方が読むにはこれ以上適した本はないと思います。

 またこの本のタイトル、「クロースアップ・マジック」ですが、このタイトルだけでも日本の奇術界に多大な影響を与えています。今から30年ほど前、この本が出るまでは「クロースアップマジック」という呼び方はそれほど一般的なものではなかったのです。目の前で見せるマジックは「テーブルマジック」と呼ばれていました。観客との距離で、「テーブルマック」「サロンマジック」「ステージマジック」という分類が一般的でした。

 もしくは「クローズアップ・マジック」と「ズ」になっていました。「クロースアップマジック」という呼び方が定着したのは、この本が出版されてからのことです。

 今回「クロースアップマジック」を復刊しましたブッキングという出版社は、リクエストに応じて、絶版になっている本を限定して作るために、一般の書店では注文できないものが大半です。しかしこの本に関しては一般書籍と同じ扱いになり、書店やオンラインでも注文できます。amazonでも扱っていると思いますので、手軽に注文できます。

 いつも言うことですが、本はあるときに買っておかないと、なくなってから探すのはずいぶん時間と労力がかかります。手に入るうちに、ぜひ買っておいてください。



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