最初に

「マリニのエッグバッグ」という名前で知られているように、これを有名にしたのはマックス・マリニです。今では「古典」と言ってもよいマジックになっています。

日本では長い間、これ用の良い製品がなかったのですが、数年前テンヨーが売り出したものはお薦めできます。大きさや布の素材もちょうどよく、大変使い勝手のよい袋になっています。

「マリニの玉子袋」と呼ばれているものは全体に小振りです。これは、マリニの手が普通の女性の手と比べても、まだ一回りくらい小さかったためです。この小さな袋から玉子が出てくるので、一層不思議に見えるのでしょう。

途中の「あらため」などで、片手を袋の中で指を広げたとき、具合のよい大きさになっています。テンヨーが発売しているものは、日本人の手にちょうど合う大きさです。添付されている解説書は絵も豊富で、わかりやすくできています。

現象

縦横が１８センチx１５センチくらいの、布製の袋を使います。中をよくあらため、空であることを示したのに、そこから玉子が出現したり、また消えたりします。基本的な現象はこれだけなのですが、ルーティンの組み方や、ストーリー、観客とのやり取りで、数多くのヴァリエーションがあります。本当にこれを自分のレパートリーにしている人であれば、みんなそれぞれ、独自のルーティンを持っています。

このマジックのおもしろさは、文章ではわかりません。これを得意芸にしている人の演技を実際に見るのが一番です。

コメント

助手なしでもできますが、観客の中から二名ほど出てきてもらい、手伝っ てもらったほうが効果的です。演技の途中で、袋の中に手を入れてもらい、中が空であることを調べてもらったほうがより一層不思議に見えます。

観客が調べた直後に、突然玉子が現れると、大変驚きます。また、袋に玉子を公明正大に入れ、すぐに袋をひっくり返して、玉子が消えたことを示すこともできます。

これはうまく演じることができたら大変ウケるマジックなのに、演じているマジシャンをあまり見かけません。それにはいくつか理由があります。手先のテクニックはまったく不要なのですが、おしゃべりと、客とのやり取りが中心になるため、別の難しさがあるのです。練習も、自分一人ではできません。実際に、観客を相手にしないと練習すらできないのです。何度も場数を踏んで、観客の反応を見ながら、ある程度アドリブで演技をすることも必要です。簡単でありませんが、一度マスターすると、一生のレパートリーになるマジックです

大きなステージより、パーティなどで演じる機会の多いマジシャンの中には、これを得意芸にしている人が何人かいます。中でもチャーリー・ミラーやジョニー・トンプソン（ステージネーム、グレイト・トムソーニ）は有名です。

最後に一言

テンヨーの解説書は、基本的な消失・出現から、演出まで書いてあります。これをしっかりマスターしておけばほぼ基本の扱いは大丈夫です。後は経験を積むことで、だんだんと要領がわかってくるでしょう。もし機会がありましたら、チャーリー・ミラーやグレイト・トムソーニのビデオでもご覧ください。チャーリー・ミラーとトムソーニが対談しながら、カップアンドボールやこのエッグバッグなど、古いマジックをお互いに見せあっているビデオがあります。タイトルは"Charlie Miller and Johnny Thompson"($30.00)です。Steven's Magic Emporiumから出ています

この玉子袋を演じている人を時々見かけますが、袋の中が空っぽだということ強調したいため、ことさら袋を強くたたいたり、ねじったり、人によっては踏んづけたりしている場面を見ることがあります。しかし、マリニがこれを演じるときは決して袋を強くたたいたりすることはなかったそうです。むしろ大変慎重に、大事なものを扱っているような感じで全体の演技を進めたそうです。この辺りは、演者のキャラクターや演出とも関係してきますので何とも言えませんが、参考にはなると思います。

書籍としては、SUPREMEから出ている"MALINI AND HIS MAGIC"が役に立つと思います。これはVernonとGansonが書いています。またほんの少しですが、『ターベルコース』の第５巻にも解説されています。

今から８．９年前、京都でグレイト・トムソーニのレクチャーがありました。このとき、エッグ・バッグをやってくれました。そのときの記録が、京都のマジカル・アート・クリエーションから発売されているはずです。ビデオの値段は確か3,000円であったと思います。しかし、ビデオだけでも買えるのか、別売りの袋を買った人だけに販売しているのかは不明です。もし興味があるのでしたら、一度問い合わせてみてください。

このビデオで、前に出て袋を持たされ、飛んだり跳ねたりしている若いほうの女性が私の同伴者です（汗）。私は頭だけが客席に写っています。

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