最初に

「ヘリコプター・カード」と聞いて何を想像しました？スライディーニのマジックでしょうか。もしそうなら、あなたはかなりのマニアでしょう。でも、今回、ここで紹介するのはそれではなく、最近、ジョン・ケネディが売り出したものです。

現象

財布をポケットから取り出し、開くと突然トランプが一枚、ヘリコプターのように回転しながら飛び出してきます。手を上にかざすと、トランプが回転しながら、手に吸い付けられるように上昇してきます。それを受け取り、観客に渡して調べてもらいます。

基本的な現象はこれだけですが、同じことが自分の名刺でも出来ます。解説書には、相手に名刺を渡すとき、さりげなく（でもないと思うけど（笑））名刺を飛ばして、その名刺を相手に渡せば、あなたのことを強く印象付けられるからよいと書いてありました。確かに、プロの人なら宣伝効果があるのかもしれませんが、アマチュアの人が名刺を交換するとき、いちいちこんなことをやっていたら、ヘンな人だと思われますから、私はお薦めしません。（笑）　あっ、お薦めしないのは、このトリック自体ではなく、「名刺交換に名刺を飛ばすこと」をですよ。

もし、あるマジックの中にこの現象を付け加えたいのなら、「アンビシャスカード」のクライマックスや、「財布に通うカード」のバリエーションのひとつとしても使えるかも知れません。

コメント

以前から、ステージなどで時々演じられているものに、一枚のトランプが腰の辺りを、ブーメランのように飛びながら一周してくるものがありました。ステージでのカードマニュピュレーションで、ちょっとしたアクセントとして演じられていました。基本的にはこれと同じです。今回ケネディが売り出したものもこれと同じなのですが、ちょっとしたプラスアルファのネタが付いています。

「現象」で紹介したように、これは財布を使います。財布と言っても、添付されてくるのは黒のビニールケースです。パケットマジックを購入したとき付いてくる、おなじみのケースです。あれにちょっとした細工がしてあります。これにトランプや名刺を１枚セットしておき、胸ポケットにでも入れておけば、いつでも実演可能です。

この財布自体はちょっとした発射装置になっています。トランプを回転させながら打ち出す仕掛けになっているのです。でもこれはあくまで飛び出させるための道具に過ぎません。これだけではトランプは飛んで行ってしまいます。慣れれば、打ち出したトランプをブーメランのように戻ってこさせることも可能なようですが、それは本来の目的ではありません。実際には、この財布を使わなくても、左手の指先にトランプを乗せ、右手の指で弾くだけでも回転させることは可能ですが、それだけだと、商品としては売りにくいのでしょう。
また、この添付されているカードケースは、ビニールのものですので、使う気がしないのであれば、ごく普通の名刺入れや財布に差し込んで使うこともできます。私は、家にあったカードケースに差し込んだら、ピッタリ収まりましたので、これに入れています。（左の写真参照）

このトリックは、原理自体は大変簡単なものですが、実際にやってみると、シンプルな割には効果的で、観客にもうけます。「一発芸」のようなものなので、やる場所とタイミングがうまく合えば、「オー」という喚声が上がるほど、リアクションが返ってきます。

しかし、このトリックは、ある程度「フローティングもの」に慣れていないと使いこなすのは難しいかも知れません。「フローティングビル」を演じるのが面倒だと思っている方、または様々な理由で自信がない方にはお薦めできません。購入を考えておられる方は、その辺りのことも踏まえて、決めてください。

ついでに

「ヘリコプターカード」が出てきたついでに、スライディーニの「ヘリコプターカード」も、ざっさと紹介しておきます。

スライディーニと言えば、コインやシルクはすぐに思い浮かぶでしょうが、彼のカードマジックを３つ言えたら「超マニア」です。いえ、知っているからと言って、別にどうってこともないのですがね。（笑）　めぼしいものでは、「モンゴリアンクロック」と、この「ヘリコプターカード」くらいです。どちらも大変な傑作です。特に、「モンゴリアンクロック」は、ほとんどセルフワーキングトリックと言ってよいほど簡単なものですが、効果は抜群です。これは単独で市販されています。（と言っても、ネタなど何も不要ですから、解説書が１，２枚付いているだけのものです）

一方、「ヘリコプター・カード」は、スライディーニのマジックを相当深く研究していないと出来ません。同じような現象を繰り返しますので、ミスディレクションがしっかりしていないととても演じられません。この辺りが、マニアでもあまり演じている人がいない理由でしょうか。しかし、大変、素晴らしいトリックです。この機会に、ぜひ、マスターしてください。

基本的な現象は、トランプの半分をテーブルの上に裏向きの状態でバラバラに撒いておきます。残りのトランプから観客に一枚覚えてもらい、それを返してもらいます。このトランプが、見えない状態で飛行し、いつの間にかテーブルの上に着陸しているのです。
これを何度か繰り返します。これは相当大勢の観客がいるところで演じても、現象がわかりやすいので大丈夫です。極端な話、舞台でやっても客席から見えます。トランプを使っていますが、普通のカードマジックという雰囲気ではありません。
スライディーニのヘリコプターカード(The Helicopter Card)は"The Magic of Slydini"、または、"The Best of Slydini ... And More"に解説されています。