製品情報

 
製品名 ミラクルリング
原案者

福井哲也

ボブ・リトル

発売元 テンヨー
価 格 980円
分 類 リング、ロープ



1998年7月27日


最初に

マジックの中には、タネを知るより先に現象を見たかったと思うものがあります。現象を見る前にタネを知ってしまったため、本当なら得られたはずの感動を体験できずに損をしたような気分になることがよくあります。今回紹介する「ミラクルリング」もそのようなものかもしれません。ただ、私の場合は幸いにも、本当のタネを知る前に、現象を見せてもらうことができました。そして、本当に驚きました。

もしあなたがテンヨーのディーラーがいる場所で購入できるのでしたら、ぜひ見せてもらってください。つい先日(98年7月)発売されたばかりです。

現象

基本的な現象は、長さが70センチ位の紐と、直径4センチほどの金属製のリングを使った貫通現象です。紐はスニーカーなどに使われている靴紐のようなタイプを使います。その紐に、リングが飛び込んだり、抜けたりします。特にリングを投げるだけで、紐に通ってしまう部分は、マニアが見ても、自分の目を疑うほどびっくりします。

コメント

これの原案者である福井哲也氏は、私と同じ大阪奇術愛好会のメンバーです。20数年前、愛好会に入ったのも偶然同じ時期で、それ以来、彼のマジックには何度も驚かされています。しかも、その驚きというのが決して半端なものではないのです。

話は少しそれますが、今から30年ほど前、マジックの発表会と言えばステージマジックばかりでした。大学のクラブや、アマチュアのマジッククラブの発表会も、ほとんどすべてが舞台で演じるマジックでした。それが、当時、日本ではまだどこもやっていなかったクロースアップマジックだけを見せる発表会を大阪奇術愛好会が始めたのです。松田道弘氏を筆頭に、赤松、森下、中田、畑、田中、三田と言った人達も20代、30代で、恐ろしいほどのエネルギーがあふれていました。

福井さんのマジックをはじめて見せてもらったのも、大阪奇術愛好会主催の「クロースアップマジックを楽しむ会」があったときです。そこで、「コインアセンブリー」という、4枚のコインが一カ所に集まるマジックを見せてもらったとき、特に最後の一枚が移動したときなど、会場がどよめきました。観客として参加しているのは、90%以上マジシャンです。そのマジシャン連中が「オーーーッ!」という声をあげたのですから、どれだけすごいものか想像ができるでしょう。原理そのものは、タネを明かされればいたってシンプルなものです。後年、愛好会の機関誌、『ザ・スベンガリ』に発表されていますので、マニアならご存じの方もいらっしゃるでしょう。でも、あれを本で知ってしまったら、私が体験したような驚きの百分の一も実感できないでしょう。そのような意味では、マジックは何とも理不尽な芸です。熱心に勉強している人ほど、先にタネを知ってしまう可能性がありますから、何とも損な役回りになってしまいます。

このコインアセンブリー以外でも、時々見せていただく福井さんのマジックは、マジックの原理など知り尽くしているように思える松田さんや、その他、愛好会のメンバーが一様に驚いたのですから、いかにイノベイティブなものであるか、想像に難くないでしょう。

最後に一言

もしあなたが、「ロープとリング」のタイプが好きでしたら、これは間違いなく、直ちにレパートリーに入ります。私自身は、これまで「ロープとリング」はあまり好きではなかったのですが、今回、この機会にレパートリーに入れたくなりました。リングを投げるだけで紐に通る現象はとてもビジュアルで、しかも何の怪しげな部分もないのです。この部分だけでも、ぜひやってみてください。

蛇足ながら一言付け加えますと、「ロープとリング」の手順としては、すでに有名なものがいくつか発表されています。私が今までそれらをあまり好きではなかった最大の理由は、同じような現象の繰り返しにしか見えないからです。裏でやっていることは色々と変えていても、観客から見ると、どれも同じようなことばかりやっているとしか見えません。今回のこのセットでも、そのあたりのことを重々ふまえて手順を組んでください。私としては、

1.実際に紐に通したリングが抜ける。 (テクニックを使って)
2.リングを投げ込むと貫通する。よく見せた後、それを下に引くと抜ける。

といった、至極あっさりした手順で十分ではないかと思っています。これを5段も6段もあるようなルーティンにすると、このマジックのビジュアルでダイレクトな良さが消えてしまうと思います。

補足:この作品に、福井さんとボブ・リトル氏の名前が入っているのは、偶然、お二人が同じようなことを考えていたからです。ただ、福井さんがこれを思いつかれたのは厚川さんの『四角い鞄』が出た頃ですから、もう20年以上前でしょう。どの部分がボブ・リトル氏のアイディアでどの部分が福井さんのかを詳しく書くと、タネ明かしになるため書けませんが、お二人に対してテンヨーがクレジットを入れているのはそのような理由からです。

 

魔法都市の住人 マジェイア


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