製品情報

 

製品名 Salt & Pepper
ソルト・アンド・ペパー
原案者 Rocco
価 格 7,800円

購入先

UGM
分 類 塩、コショウ

Salt & Pepper

追加更新:2001年3月17日
2001年3月14日


最初に

ロコ氏のオリジナルマジックです。私は参加していませんが、一昨年開かれたUGMのコンベンションで、この原理をつかったものをレクチャーでやったようです。それを今回、塩とコショウにして、売り出したのでしょう。

現象

塩の瓶とコショウの瓶があります。観客の一人に出て来てもらい、手のひらが上になるようにして左手を出してもらいます。塩の瓶からスプーン半分程度の塩を出し、観客の手のひらに乗せます。次にコショウの瓶から同じくらいの量のコショウを出し、これも手のひらの上に乗せます。塩は白で、コショウは黒いので、はっきりと見えます。

塩とコショウを指先で2、3回混ぜ合わせると、白い粉と黒い粉が混ざり合ってしまいます。観客にもよく確認してもらってから、右手を左手の上に重ねてもらいます。

マジシャンは手を空中に伸ばし、何かをつかむと、手の中から黒い粉が現れます。これはコショウです。観客に右手を取り除いてもらうと、左手には塩しか残っていません。

コメント

二つのものを混ぜて、それを分離するマジックとしては、グラスと真珠を使うものがありました。透明なグラスに、白い真珠と薄いピンク色の真珠をそれぞれ30個くらい入れ、よく混ぜ合わせたあと、もうひとつ別のグラスを使い、グラスの口と口を合わせます。中で2色の真珠が混ざり合っています。そのままの状態で、グラスを背中に回して1,2度振ってから前に出すと、左右のグラスに白とピンクの真珠が完全に分離しています。

これは、大変簡単にできる割にはきれいなマジックです。昔、ディーラーの人に2、3回続けて見せてもらっても、全然原理がわからずに随分不思議に思えました。購入してタネを知ると、笑ってしまうほど単純な原理なのですが、見たときはわからなかったものです。

今回の「ソルト・アンド・ペパー」は真珠のタネを知っていても解決できません。私は今回、UGMの会員用ビデオではじめて現象を見ました。大変不思議でしたので早速注文したのですが、届いたものを見ると、実際にこれが実演可能かどうか、少々疑問です。

UGMはビデオによるカタログも出しており、これは今までのような文章だけの説明に比べるとわかりやすく、大変ありがたいものです。カタログで宣伝文句だけを読むとどんなにすごいものかと思っても、実際に購入してみると予想していたものとは全然違い、使い物にならない場合がよくあります。また逆に、カタログを読んだだけではつまらないと思っていたものが、実際に見せてもらうと予想外に面白いこともあります。そのような欠点をカバーするためにもビデオでカタログを作り、商品紹介をするのは大変よいことなのですが、今回のマジックは、「ビデオだから可能」という面があるのも否めません。

レクチャーでもロコ氏はやっていますから、勿論、実演可能なのですが、一番の問題は、これをマンツーマンで見せるような場合です。助手になってもらう人にはタネがわかってしまう可能性がかなりの率であります。正確にどうやったのかはわからなくても、ある一瞬、感じてしまうことがあるのです。しかしこれは他の観客にはわかりませんので、助手になってもらう人には事前にお願いしておけばその点は何とかなるでしょう。 ただちょっと面倒なのは、一人では練習しにくいことです。実際に助手の人を相手にして練習する必要がありますので、それもクリアーしなければならない点でしょう。

扱う素材が塩とコショウなので、もしこれがどのような状況でも問題なく演じられるのでしたら、即席奇術の傑作になるだろうと期待していました。しかしそれは無理のようです。特にレストランなどで隣の人に見せるような場合、その人には気づかれてしまうおそれがあります。マジックは少しでも何かをやったと感じさせてしまえば、それはもうマジックではありません。相当な回数、練習をかさねて、絶妙な「距離」や「速度」「タイミング」を会得すれば可能かも知れませんが、そのためにはコショウの瓶をいくつか空にするほど練習しなくてはならないでしょう。コショウも、なくなれば近所のスーパーで手にはいるのでしたらよいのですが、それは無理です。特殊なコショウが必要です。

助手になってもらう人以外に見せるのでしたら十分マジックとして通用します。

ビデオでロコ氏がこれを演じているのを見ていると、ディック・ジンマーマン氏(Dick Zimmerman)が昔、数百名入る大きな会場でやったレクチャーを思い出しました。ジンマーマン氏といえば、フラフープのような大きなリングを使って演じるリンキングリングがよく知られていると思います。

1976年のP.C.A.M.東京大会のとき、ステージマジックが行われる舞台で、レクチャーも行われました。このときジンマーマン氏は助手として観客に一人上がってもらい、自分の両腕をまくり上げ、さらに、上がってもらった観客に、至近距離で両手をよく確認してもらってから、コインを10枚ほど出現させたのです。

最近はジンマーマン氏の名前もほとんど聞かなくなったので、もうプロマジシャンはやめたのかも知れません。IQが180を越えている人で、アメリカの大手玩具メーカー、マテルの重役もやっていたはずですから、今はそちらが専業になっているのでしょうか。

コインが出現するマジックは、客席にいる観客は驚いたのですが、助手として舞台に上がった人は、いったい何がおきたのか全然わからなかったでしょう。この人からすると、みんなが何に驚いているのか、そちらのほうが不思議であったかも知れません。

原理だけを簡単に説明しますと、助手として上がってもらった人を即席のサクラに仕立てたのです。ある種の「ヴァーバル・コントロール」(verbal control:言葉による誘導)で、助手の人にも、客席の観客にも同じセリフを言っているのに、立場によってその意味を異なってとってしまうことをうまく利用していました。

これとロコ氏の「ソルト&ペパー」を一緒にはできませんが、ある種の「レクチャーネタ」、もしくは「ビデオ解説ネタ」であることは間違いありません。

そのあたりを踏まえた上で、興味のある人は購入してもよいでしょう。

最後に一言

届いたとき、予想外に大きな箱なので驚きました。いったいどんなネタなんだと心配になりましたが、箱だけが大きいのです。実際にはカードケース程度の箱にも収まりますが、送るときは縦横高さがそれぞれ25センチ程度の箱でないとまずいことがあるのです。 保管もその箱に入れておいたほうがよいでしょう。

追加情報1(2001/3/14):これをアップロードした1時間後に田代氏からメールをもらいました。デイック・ジンマーマン氏は現在、ピアニストとして活躍中だそうです。私ももう少し詳細を調べてみます。

追加情報2(2001/3/17) :「ソルト&ペッパー」は予想外に反響がありました。田代さん以外にも当日の夜、三田皓司さんからは、塩とコショウを分離させるバーベットの情報を、そして本日、プロマジシャンのヒロ・サカイさんからもメールをいただきました。みなさんが「魔法都市案内」の隅から隅まで読んでくださっていることに驚くと同時に、あらためてお礼申し上げます。

実演不可能だと思っていたトリックが、ちょっとしたコツを教わっただけで出来るようになったり、何かのギャグを思いついただけでやってみる気になったりすることはめずらしいことではありません。

ヒロ・サカイさんはこの「ソルト&ペパー」をこれまでに数十回実演されているそうです。実際に何度も演じておられるヒロ・サカイさんのようなプロの方から貴重なアドバイスをいただけることは大変ありがたいことです。プロの方が、ご自分のレパートリーに入っているマジックについて、わざわざコメントを寄せてくださるようなことは普通考えられません。そのような意味でも、アドバイスをいただけたことにあつくお礼申し上げます。

ヒロさんから教えていただいたメールから、「ソルト&ペパー」に関する部分をご紹介します。


『ソルト・アンド・ペパー』は確かに演じやすい作品とは言えませんが、 十分に実演可能で、客には大変な衝撃を与えます。決してビデオ用の作品で はありません。ただし、プロユースで状況が限定されてしまうのは事実です。

 僕自身、数十回演じていますが、指摘されたのは1度だけです。それも本人ではなく横にいた観客でした。その理由は僕が演じたのがバーのカウンター越しの為でした。観客が横に広く座っている状態では角度もれしてしまう場合があるのです。

 理想的なのは、立食パーティーのように客、演者とも立ちで演じる事が理想でしょう。しかし、ご指摘のように立食パーティーでは、あの胡椒を取り出すのは大変不自然になります。

 結局のところ、あの胡椒が置いておける状況下となるとバーマジックになってしまうでしょう(それも角度に気をつけて)。僕のようにホームグランドになる場所がある場合か、普通の方ならば、あの胡椒と塩を預けておき、店の人間に塩、胡椒を貸してくれとたのんで、それを使えば良いでしょう(なじみの店が必要ですが)。それほどの苦労をしても対価あるマジックだと思います。

 バーで演じるにはもう一つ利点があります。大抵のバーは照明が暗めの事が殆どですよね。明るい状態だと、あの胡椒は料理をする人間なら違和感を感じますが、バーの照明では問題が軽減されます。

 フットワークが重い事はプロとしては歓迎できることではないのですが、 不可能設定、観客の参加、自然な道具(?)、正直言ってどうしてこれを思いつかなかったか悔しい思いでした。是非演じてみる事をお勧めします。

 (掲載許可済み)


私もあのあと何度かやってみましたが、やっているうちにコツがわかってきました。たとえばマジシャンの左手で、助手が塩とコショウを持っている手首を軽く握り、右手で助手の空の手を指差すとき、観客の左手を少し下げます。この動作で観客の手の位置を微調整できます。またマジシャン自身が観客の手首を持っていますから、高さと距離の感覚もつかみやすいのです。ほんとうにちょっとしたことですが、このようなことで、手のひらを見なくても、位置が確認できるようになりました。

ヒロさんも書いておられるように、これを演じるのに一番都合のよい状況は、バーのようなところかも知れません。塩やコショウ自体は日常目にするものですが、テーブルにこのようなものがない場所で、鞄から取りだしてきて演じるのは少々唐突すぎます。そのような条件を考慮すると、常時少し薄暗く、なおかつ塩やコショウがいつでもあるところというと、バーのような場所になるのでしょう。そのような場所でマジックを見せることを仕事にしているバーマジシャンには貴重なレパートリーになるかも知れません。

なお、三田さんから教えていただいたバーベットは本物の塩とコショウを混ぜて、それを分離する方法なのですが、これを紹介すると、「ソルト&ペパー」の原理もわかってしまうため、紹介したくてもできません。同じ方法ではありませんが、原理はどちらも同じようなものです。ヒロ・サカイさんが近々東京堂出版から、バーでの遊びを集めた本を出される予定です。その中に、このバーベットも紹介されているそうです。

あらためて田代さん、三田さん、ヒロさんにお礼申し上げます。

魔法都市の住人 マジェイア


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