最初に

ちょっとめずらしい原理を使った「透視現象」です。原理が面白いので紹介します。実際に購入したのは10年ほど前のことです。

現象

上の写真のような、真鍮（しんちゅう）でできた容器がふたつあります。ふたはねじ式で、大きさはふたつともまったく同じです。区別するために、ふたには大きな宝石が埋め込まれています。片方は黄色、もう一方は緑の石です。トパーズとエメラルドでしょうか。

ふたを取って中を見せると、指輪やコイン、サイコロ、おさつ等が入るくらいの空間があります。このどちらかの容器に、観客の持ち物を入れてもらいます。たとえば、観客の指輪をどちらかの容器に入れて、ふたをしてもらいます。勿論、この間、マジシャンは後ろを向いています。部屋から出ていてもかまいません。とにかくどちらかの容器に入れてもらい、ふたをしてもらったら、その容器を添付されている青い布の袋に入れてもらいます。厚い生地ですから透けて見えるようなことはありません。空の容器はポケットの中にでも入れてもらい、隠してもらいます。

マジシャンはここで観客のほうに向き直ります。部屋から出ているのでしたら、入ってきます。

観客が手に持っている袋に一切手を触れることなく、また一言も質問することなく、どちらの容器に入れたのかを「透視」することがきます。

コメント

私が実際に演じるときは、場所にもよりますが、すぐ隣に部屋があるのでしたら、観客にこのふたつの容器と袋を持って行ってもらい、隣の部屋に行ってもらいます。ドアを閉め、絶対誰にも見えないという状況にしてから、そこで先ほどのことをやってもらいます。袋に入れてたら、空の容器はポケットに入れるか、手に握ってもらい、見えないようにしてもらって、こちらの部屋に戻ってきてもらいます。入ってきてもらったら、ドアの辺りに立ったまま、袋を指先にぶら下げてもらいます。マジシャンはこの袋に近づく必要はありません。数メートル離れていても、100メートル離れていても大丈夫です。「透視」できます。何なら袋を手にぶら下げなくても、それもポケットに入れてしまってもかまいません。このような状況で、どちらのように入れたのかをほぼ100%正確に当てることができます。

値段も４０ドル程度のものですから、「ハイテク」を使ったようなネタではありません。最近、様々なハイテク・メカがメンタルマジックの世界にも入ってきています。そのタイプのものは、現象は確かに不思議であっても、やっている側はひどくつまらないものです。今回のものは、タネ自体は大変シンプルです。しかし、今までこのようなタイプの原理を知らなかったので、はじめて見たときはずいぶん驚きました。

最後に一言

正解率を100%に近づけるために、私はちょっとした演出上の工夫をしています。

最初、観客にこの容器の説明をした後、次のように説明します。

「どちらの容器に入れようかと迷うと、その混乱が私に伝わり、うまくあたらないこともあります。そのため、私は今から後ろ向きますが、今、この時点で、黄色い容器にするか、緑の宝石がついた容器にするか決めていただきたいのです。勿論、心の中で決めるだけで、言う必要はありません」

こう説明して、観客がどちらかに決めたと言ったら、「では、もうこれ以降は、絶対にその決断を変えないでください」と念を押してから、マジシャンは後ろを向きます。

ただそれだけのことですが、このネタを持っている方でしたら、今の意味がわかるはずです。それだけで成功率が100%に近づきます。私は今までにこれをやったのは数十回ありますが、失敗したのは１度だけです。そのときも同じように念を押したのですが、失敗しました。で、観客に次のように言いました。

「あなたは向こうの部屋に行ってから、また迷ったでしょう？さっき、迷うとその混乱が私に伝わってきて、当たらないことがあると言いましたね。途中で、気が変わったのではありませんか？」

こう言うと、その観客は、申し訳なそうに、「そうです」と頭をかいていました。本当は前もって心の中で決めていたのに、入れている途中で気が変わり、別のものに入れ直したと、告白したのです。

結果、当たらなかったのですが、この観客のセリフのお陰で、かえって信憑性が高まりました。これはマジックではなく、「本物の超能力」ではないかと思ったようです。（汗）

マジックなら絶対当たるはずなのに、観客が混乱すると失敗することがあるということは、ひょっとすると「超能力」かもしれないと思ってくれたのでしょう。（笑）

魔法都市の住人　マジェイア