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造形のマジック!

デビッド・カッパーフィールドの「顔」

デビッド・カッパーフィールドの顔

2003/1/2


昨年の暮れに、特殊造形の仕事をされている方からメールをいただきました。特殊造形というのが実際にはどのようなものなのか詳しくは知らないのですが、映画などで怪物の顔を作ったり、ある人間とそっくりの顔を作ったりするのでしょうか。

添付されていた画像にはD.C.(デビッド・カッパーフィールド)の顔が写っていました。よく見るとそれは本物のD.C.ではなく模型です。下の画像は大きさをわかっていただくために、トランプを隣に置いています。約20cmくらいのものでしょう。

D.C. with a Bee Deck

写真で見る限りとてもよくできているので、ぜひとも現物を見たいと申し上げたら送ってくださったのです。

届いたD.C.を目の前で見ても、本当によくできています。皮膚はラテックス(天然ゴム)、その下は発泡ウレタンでできているそうです。触ると人間の顔のような柔らかさがあります。髪の毛は一本一本植えられています。

テレビの番組などで、タレントの顔に特殊な樹脂のようなものを塗って型を取り、マスクや像などを作っていることがありますが、完成したものを見ると、大抵、あまり似ていません。全然違った人物にしか見えないものも少なくありません。東京タワーにある蝋人形館にも、細かい部分までしっかり真似した実物大の人形がありますが、これもやはり似ているとは思えないのです。本物から型を取っている場合、鼻の高さや口の大きさなど、全体のバランスは本物と寸分も違わないはずです。それでも何か違うのです。

生きた人間の顔は刻々と変化しますが、作ったものは表情が動かず、固定してしまうからでしょうか。亡くなった方の顔から直接型を取るデスマスクは、文字どおりモデルの方は亡くなっています。それから作った石膏のマスクを見ると違和感はないのに、むしろ、実際に生きている人から作ったマスクのほうが逆にデスマスクかと思えてしまいます。

人形師辻村ジュサブロー氏の作る「泉鏡花の世界」に出てくる人形など、決して写実的ではありません。しかし、どの人形も生きているのです。場面や状況によって、顔が刻々と変化するのです。といっても実際には人形の顔は何も変わりません。それが悲しんでいるようにも、喜んでいるようにも見えるのだから不思議です。辻村氏が人形に吹き込んだ魂と、見る者の魂がシンクロしたとき、こちらの精神が人形の顔に投影されるからでしょうか。

今回送っていただいたD.C.の「顔」は、剛毛でツンツンと立っている髪の毛なども雰囲気がよく出ています。精気まで感じます。特殊造形の場合、映画などで大写しになることもありますから、細部まで本物と差がないくらい細かく作らなければならないのでしょうが、いくら細かい部分まで作ったとしても、最後は人形に精気を吹き込めるかどうかに掛かっているのだと思います。このあたりが製作者の腕なのでしょう。

しばらくながめているうちに、どうしても欲しくなったのでお願いしてみたところ、意外にも快くゆずって頂けました。

製作者の方がマジシャンの顔を作ったのは今回がはじめてだそうです。D.C.にしたのはご自身もD.C.ファンということと、日本公演のパンフレットなど、製作に必要な資料が容易に手に入ったからということのようでした。製作日数は約三ヶ月だそうです。

私は気に入っているのですが、家人に見せるとすこぶる不評です。「きもちわる〜い」「さらし首〜」「夜、下からライトをあてたらホラーだ〜」とか、とにかく無茶苦茶言われています。写真で見るとそれほどでもないかも知れませんが、現物を目の当たりにすると、確かに不気味と言えなくもありません。まあ、それくらいよくできていて、今にも動き出しそうで、生々しいのかも知れません。

デビッド・カッパーフィールドの顔(正面)

人形は「ひとがた」でもあり、確かにある種の気持ち悪さはあります。

昔、知人のうちに泊めてもらったとき、夜中に目が覚めました。ふと、とたんすの上に視線を移すと、子供の人形が暗闇に白く浮かび上がっています。自分の家ならどうってこともないのでしょうが、初めての家では、こんなことだけでも布団から飛びあがるほど、びっくりしました。まるで子供がたんすの上からじっとこちらをうかがっているように見えたのです。このままでは眠れそうにないので、人形の場所を変え、見えないようにしてから、部屋のあかりをつけたま、布団にもぐり込みました。幼い子供が抱く、何の変哲もない人形でも、状況次第では大変気味悪く見えるものです。

こんなこともありましたので、家人の言うこともわからないではありません。とにかく玄関や居間にだけは絶対置いてくれるなと言われています。私は気に入っていますので、机の上にでも置いておきたいのですが、素材の関係で、直射日光が一番の大敵のようです。そのため、普段はあまり日の当たらない場所に保管しておくことにします。サイトに画像だけを公開しておけば劣化も防げて、一石二鳥ということで、こちらで紹介させていただきます。

Flying:Pictured by Yohko Suzuki
You Can Fly!



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