something old

 


金魚釣り

 

1999/8/30


最初に

「金魚釣り」と呼ばれる古い奇術があります。「手妻」(てづま)と呼んだほうがよいくらい古いものです。子供の頃、私もテレビで何度か見たことはありますが、実際にこれが生で演じられているのを見たことはありません。しかし、寄席などではよく演じられていたようです。

現象

手品師は釣り竿を持って、舞台から下りて、客席に入って行きます。竿には糸と釣り針がついています。その釣り針を、客の座っている座席の間に投げ入れ、つり上げると、針の先に生きた金魚がぶら下がっています。

金魚を針からはずして水槽に入れると、金魚は勢いよく泳いでいます。このようなことを繰り返し、観客の懐、首筋などからも金魚を釣り上げ、全部で、4,5匹、取り出します。

最後は、棒の先に網がついたものを持ってきて、それで空中をすくうと、一度に十数匹の金魚が網の中に入っています。

コメント

最後の網ですくう部分は、直接、「金魚釣り」とは関係なく、クライマックス用に付け足された別の手品です。客席から生きた金魚を次々と釣り上げて行くのが本来の「金魚釣り」です。

これを解説したものとしては、1804年に出ました『手妻秘密の奥義』があります。その後、1905年(明治38年)に、松旭斎天一がアメリカからの帰朝公演で、それまでとはまったく異なった原理の「金魚釣り」を行い、人気を博したそうです。当時人気のあった「水芸」の前に行う軽い手品として、それを行っていました。このアメリカ土産のネタは、アイディアは面白いのですが、実際に演じるとなると様々な欠点もあり、結局、昔から日本で行われていた「金魚釣り」に戻したそうです。

日本古来の「金魚釣り」は、タネとしては大変簡単なものですが、その分、ミスディレクションやタイミングをうまくやらないと手品になりません。そのあたりが完璧にできると、シンプルなだけに一層不思議に見えます。「成金棒」と似た難しさがあるマジックです。

よいマジックだと思うのですが、小さな金魚が釣られてくる場面が残酷という批判でもあるのでしょうか、最近、見かけなくなりました。今なら合成樹脂でできた本物そっくりの金魚を使い、針の先に釣り上げられてくる部分にはそれを使えば、昔より、ずっと手軽にできるはずです。

なお、デビッド・カッパーフィールドが昨年(1998年)の日本公演で、「金魚釣り」ではありませんが、空の手から金魚を出現させるマジックをやっていました。演出次第では、季節感のある、風流なマジックになると思います。


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