BANDAI SOCIOLOGICAL RESEARCH
INSTITUTE
帆船によるセイル・トレーニングのススメ
某県知事が帆船を保有して、青少年の情操教育に役立てようと考えていることは、
それほど知られていません。
地方自治体でセイル・トレーニングを広く実践するための帆船を保有しているの
は、大阪市だけです。横浜にもNPOの日本セイルトレーニング協会があり、セイ
ルトレーニングを実施しています。いずれも自前の帆船(はんせん)を所有して
いる団体です。
このコラムでは、新潟市在住の萬社研所長が、大阪南港まで出かけて行って2泊
3日の入門コースに参加して得た体験談を少しだけ御紹介したいと思います。
さて、そもそもセイル・トレーニングって何なの??とおっしゃる方のために
簡単な解説を。
要するに、日々のやりきれないストレスだらけの仕事や苦労している人間関係から
解き放たれて、帆船に乗って大海原にくり出して、短い場合は1日だけ、長ければ
1週間とかそれ以上の期間、乗船した仲間と一緒に協力することを前提に、帆を張っ
たり、甲板を磨いたり、お勉強したりして帆船の特徴を体験を通じて学びながら、
また、その他色々楽しいこと(食事作りや掃除や夜の甲板でのおしゃべりとか)を
しながら、心身を鍛え、人生について考える人もいれば、新しい友達を作ったり、
忘れていた何かを発見をしたりする総合的な活動をいいます。
もともとヨーロッパ(イギリスかスペイン)起源で、そちらでは現在でも幅広く行
われています。
例えば、キーワードをsail training としてgoogleで検索をかけると驚くほど沢山
hitします。
最初に述べておかなければならないのは、セイル・トレーニングが性に合わないと
いう人も意外に多いということです。船酔いするからとか、船で海に出るのが恐い
とか理由も様々ですが、ともかく「どうしてわざわざ苦労を買ってまでやらなきゃ
ならないの?」という素朴な疑問がこれらの人の考えの根底にあるように思われま
す。この傾向は子供より大人により強く見られます。
他方で、熱心なリピーターになる人も大勢います。人々のこの差は、いかにセイル・
トレーニングを自分のこととして楽しめるかによると思われます。私の場合は、参
加できて本当に良い経験になったと言い得る反面、しばらくは再乗船しなくても良
いかなといったところです。これは、新潟が大阪から遠すぎることに起因する経済
的負担が大きいことに由来します。
それでは、実体験に基づき、セイル・トレーニングについて感じたところをそのまま
述べてみます。参加してから随分時間が経過しているので、ある程度客観的に書ける
のではないかと思います。
参加できて良かったところ
1 異世代交流が楽しめたこと
実際これには、かなり驚かされたのですが元来、子供は苦手な上、普段の生活では
小学生と話をする機会もなくどう対応したものかと思っていたところ、ここまで見事
に世代の垣根が取っぱらわれてしまうと、逆に何でもありで、中には大人顔負けの
面白い子とかがいて、びっくりしたり笑ったりで、このような体験は、ちょっと他で
はできないものでした。正に個人の人格や性質のみが問われてくるという印象です。
今日では、教育の荒廃とか、青少年の非行とか犯罪がマスコミで何かと取り上げら
れて、その状況を憂いていますが、少なくとも、セイルトレーニングには、それらの
問題解決の糸口があるのではないか、と思われます(もちろん、セイルトレーニング
といえども万能ではありません)。
2 恐怖のマスト登り
帆船のマストに登る機会は、一日に何度かありましたが、これも今では貴重な経験
となりました。高いところが苦手(いわゆる高所恐怖症)ではないと信じて来ました
が、この感覚は、1996年に経験したバンジージャンプ以来の恐怖の瞬間と言わなけ
ればなりませんでした。
マストに登る時は、墜落防止のため三点確保(両手、両足のうち3箇所は必ず離さ
ない)するようにいわれながら、恐くて脳みそが指令を出しても、自分の手足が言う
ことを聞かないことが本当にあるんですね。
頭では、「その手は、絶対に離すなよ」と言っているのに「この手を離してみたい
〜」という欲求にもかられたりして、かなりアンビバレントな思考状態でした。その
時は、頭が真っ白というより、何かで脳みそをムキ〜!っと掻きむしりたい衝動に駆
られたものでした。このような精神状態を経験することがこれまでなく、とても新鮮
でした。おそらく陸上では体験できないと思います。
3 乗組員の親切なサポ〜トに感謝
トレーニ−に対するサポートの上手さも勉強になりました。ある意味帆船という閉
じられた生活空間なので、船長さんはじめ乗組員の皆様に何をするにしてもすがるし
かないわけですが、手慣れたもので感心させられました。こうした安心感が、トレー
ニングの成否を左右するのかと思います。
参加して悪かったところ
特になし。ということは、すべての経験が何かしらプラスになったと感じているという
ことです。
ただ残念だったのは、豪華な食事を毎回楽しめるのは結構なことなのですが、その分、
残飯の量もハンパではなく、ディスポーザーで処分しなければならないのは、食べ物を
粗末にしていて、罰が当たるのではないかと不安になりました。
セイル・トレーニングは、決してお子様向けのプログラムではなく、より多くの社会
人や体力が許せば高齢者の方にも開かれているべきだと思います。
会社の新採用研修の一環にセイル・トレーニングを取り入れている企業もあると聞き
ますが、これらの会社は、非常に良い部分に着目していると思います。それはセイル・
トレーニングを通じて、私達一人ひとりが、いわば社会という大きな帆船の乗組員であ
ることをこのプログラムは示唆に富む方法で示してくれるからです。
現代のように社会全体の不安感、不信感といったものが増幅されつつある環境にあっ
て、短期間で本来の人間関係に触れる機会を提供してくれるのがセイル・トレーニング
です。逆に、普段の生活にもどってそれにすっかり没入してしまうとトレーニング期間
中の出来事が夢のように感じたりしましたが、それはそれでいいと思います。
それでは、少しセイル・トレーニングの事を調べてみましょうか?
あこがれ:セイル大阪(大阪市)
海星:特定非営利活動法人
日本セイルトレーニング協会(横浜市)
この夏は、新潟に帆船「海星」来航!
もちろん、セイルトレーニングあります(7/4中止になりました)。
直江津港 平成15年6月25日(水)〜29日(日)
柏崎港 平成15年6月30日(月)〜7月3日(木)
新潟港 平成15年7月4日(金)〜6日(日)
新潟港〜東京港 平成15年7月7日(月)〜7月17日(木)11日間
詳しくは、帆船「海星」招致事業実行委員会事務局
(新潟県総合政策部企画課内)電話025(280)5269まで
航海型は、海星事務局
電話045(680)5222、またはe-mail:office@staj.org