<2004.05.04 K.Kotani>NEW BOOKS 日本アニメーションの力


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月刊近メ像インターネット


2004年05月04日

NEW BOOKS 日本アニメーションの力



 「日本アニメーションの力 85年の歴史を貫く2つの軸」NTT出版・津堅信之著・税別2200円。現在世界的に評価されつつある「日本のアニメーション」について、宮崎駿対手塚治虫、また日本アニメの発達の中でいろいろな対立の軸の上に日本のアニメーションが発達してきた事を緻密な調査と論理の展開で明快に表した力作。宮崎駿対手塚治虫の項では手塚治虫が宮崎作品をどう見ていたのかが複数の証言と考察によって述べられ、非常に興味深い。また、日本アニメの歴史の中では、かってディズニーアニメなどと比較して「動かない」アニメーションとしてアニメ評論やファンの間では低い評価をされてきたテレビアニメについて、厳しい製作費と制作期間の中で独自の表現方法を発達させ現在の日本アニメが世界的評価を受ける事となった「功績」をはっきりと評価している。また、雑誌漫画とテレビアニメの関わりについても積極的な評価をしている点が見受けられ興味深い。
 特に、最後に一章を設けて、個人/自主制作作品の発達史を取り上げている点は注目。商業出版物でここまで深く入り込んだ形で個人/自主アニメの発達史が体系的に取り上げられた事は過去にはないと思われる。PAFがなくなった後にこつこつと自主上映を続けてきた「大動画上映会」や、「アニメニューウェーブ」などの上映企画等もとりあげてほしい所だが、次回に期待したい。
 最近ディズニーも東京のスタジオ閉鎖、2Dから3DCGへの方向転換が目立ちますが、かたくなにフル・アニメーションの伝統と環境を守ってきたディズニーフルアニメが衰退し、動かないだのなんだのと言われつつ恵まれない環境でTVアニメの技術を発展させてきた日本のアニメが結果として評価されてきているのは皮肉と言うか、「家貧しくして孝子出づ」という事でしょうか。

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