2004.06.30 K.Kotani>
日本アニメーション学会 第六回大会
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月刊近メ像インターネット
2004年6月30日
日本アニメーション学会 第六回大会
6月26日-27日の両日、東京都中野区の東京工芸大学において、日本アニメーション学会の第六回大会が開催されました。
さて、今年のテーマは「転換期のアニメーション」ということで、アニメーションが現代日本を代表する「文化」であるとともに、「産業」に成長を遂げ、また、パソコンの急速な低価格化と高性能化が個人レベルでの作品制作をきわめて容易にしたために作品制作の底辺が急速に拡大する中に行われました。
研究発表内容はアニメーションの歴史についてのもの、心理学的研究など多岐におよびましたが、上映機材がトラブル続出で中々スムーズに進まず、肝心の質疑応答の部分がほとんどなくなったのが残念でした。
もっと残念なのは、内容的に「研究の成果」ではなく、「これからの研究の方向の説明」とか、「仕掛かりの研究の手法の説明」としか思えないものがあり、一応「学会」である以上、こういうものが「研究発表」でよいのか、議論が深まっているのに質問が時間切れになり打ち切りになる発表があるのだから、そちらに時間を回したら? と思えるものがあった事です。
バネルトーク「劇場アニメーション「イノセンス」&「スチームボーイ」完成と公開までの道」では、すでに完成して公開されあまり当たらなかった「イノセンス」(アニメ学会での講演時に「動かなくていいんだ」と言い放って関係者をあわてさせ、安くで作品を作る事で有名だった押井守監督が金をかけまくって動かしまくったそうです。嗚呼)と、、永久に完成しないのではないかと思われていた「スチームボーイ」の難行苦悶の道について生々しい関係者の話と、事情を知る近しい方のキツーイ皮肉も楽しいコーナーでした。(予告編を見る限り「スチームボーイ」は「天空の城ラピュタ」以来久々の冒険空想アニメのようで個人的には楽しみなのですが。)
シンポジウム「アートアニメーションをサポートする」では、日本国内と海外における若手制作者の状況とそれをサポートする周辺の状態の説明がなされました。アニメの会社を経営しながら若手作家の活動をサポートする活動をされている方のお話、、かってパイオニアで「アニメーション・アニメーション」というアートアニメのレーベルを発売し、現在は別会社で同じようなタイトルを発売している方のお話などいろいろありました。また、海外での映像作家をめざす方のための教育活動などの紹介や、コンペなどの紹介もありましたが、どうも「商売」に直結させようとしたギスギスした感じがぬぐえず、創作とは勝ち負けのつけられるものではないし、金もうけの方法としてはアートアニメーションはあまり効率的ではないし、海外からの輸入含めた日本のアートアニメーション全体の規模が「どらえもん」の長篇一本に経済的には太刀打ちできない事を考えれば、「それだったらアートアニメーションなんか全部やめてしまってどらえもんの長篇一本余分に作ったら?」と言いたくなる部分もありました。この大会を通じて多くの方からの話にもあるように、現在ではパソコンの進歩によって、若いお金のない方でも才能と工夫があればどんどん優れた作品を作れる環境があり、インターネットで海外の情報がどんどん手に入り、いくらでも海外にエントリーできる状況にあるのですから、フィルム時代の、「お金持ちでなければ、スポンサーを付けたり、補助金をもらったりしないとまともな作品が作れない」という環境ではないし、わずかな補助金だのなんだのに群がって作品制作の姿勢をゆがめている間に、「創造の若き巨人達」が自分の作品をばんばん作って追い抜いていくようなきがするのですが。
講演「2Dからフル3DCGへ 転換期にあるアメリカの劇場アニメ」では、かって「ライオンキング」の大ヒットによって一斉に2Dアニメに進出したメジャー各社が、2D長篇の総ゴケ・3Dアニメの大当たりを見て、一斉に2Dのスタジオを閉鎖・縮小(ピーターパン2って、日本にあるディズニースタジオで日本人が作ったアニメだったのね。)して3Dに走っている姿が紹介され、「それってまたこけるんちゃうん」と突っ込みたい気分でした。
初日の最後の親睦会では、新人会員のみなさんも紹介され、(これも新人会員の方が「僕達の紹介はないんですか」と突っ込んだ結果あったみたい)大いに盛り上がりました。
突っ込み所多数の今回の大会ですが、次回は自称「山奥・田舎」の多摩美大での開催だそうで、(造形大よりすごいのかしら)次回が楽しみです。
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