<2005.02.26 K.Kotani>産経新聞の「主張」


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2005年02月26日

産経新聞の「主張」



1月26日の産経新聞社説欄「主張」において、「日本アニメ 衆知集めてトップ維持を」というタイトルで記事があり、日本アニメが世界トップの地位を守るため各界が知恵とお金を出しましょう、という内容でした。はていつ日本のアニメが世界のトップになったのか。
 日本の商業アニメは世界で一定の評価は得ていますが、依然ディズニーの長篇アニメが「基準」として存在し、日本のアニメが世界の標準になったわけでしない。ポケモンや宮崎アニメが当たったからといってそれまがいの作品作りに世界中のスタジオが動き始めているわけでもない。「ライオン・キング」が当たったので2Dアニメに走り、「ファインディング・ニモ」が当たったので3DCGアニメに走っているというのが現状で、日本アニメはそれとは関係なく独自路線でニッチ市場を開拓しているという状態です。
 「現場の労働条件が悪い」というのも何十年と続いている状況だし、韓国や中国への技術や人材の流出にしてもむしろ積極的に現地での制作を進めるため日本から仕掛けているものです。
 デジタル化で少人数での制作が可能になったので、裾野が縮小するという懸念にしても、制作の現場が見えていない方の意見で、色を塗ったり線をトレスするだけの単純労働者がいくらいても制作の裾野は広まらず、逆に少人数による制作が可能になった事で表現の裾野が大幅に拡大したというのがほんとだと思います。
 現在の日本のアニメーションは日本の伝統的表現「止め」「決め」や、余白を生かした絵画表現などの伝統を踏まえた上で、制作費・枚数の制約のある製作状況の中において現場のスタッフが苦心惨憺してつくり出した独自の省力表現が世界に受け入れられているわけで、そのへんを踏まえずただ金を注ぎ込んでも成果がでるとは思えません。
 現に昨年の大制作費と大量の人材機材を注ぎ込んで製作した「巨匠」の皆さんの「超大作」群が軒並み沈没している(貧乏の頃の作品の方が面白かった?)状態を見ると、そう思います。(「国際化」を目指して製作された旧作のリメーク作品群(OVAとか超「TVアニメ」とか)の総ゴケも関係あるかも)
 各界が知恵とお金を出すのは大いにいい事だと思いますが、ちゃんとわけの分かった人がまとめないと、何年か先に「アニメ業界育成プロジェクトのツケ-巨費の成果は疑問符」みたいな見出しが新聞に出るかもしれません。

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