<2005.05.24 K.Kotani>投稿 NEW BOOKS アニメ百科事典


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2005年05月24日

投稿 NEW BOOKS アニメ百科事典




 「The Animated Film Encyclopedia:A Complete Guide to American Shorts  新刊でなく2000年の出版で恐縮だが、1900年から79年まで約80年にわたるアメリカで製作され劇場公開されたアニメ作品の詳細な制作スタッフが記録された事典である。
 短編、長篇アニメから実写劇映画に挿入されたパートのアニメに至るまできっちり収録されている。例えば、ジーン・ケリー主演のMGMミュージカル「錨を上げて」Anchors Aweigh (45年、日本公開53年)では、劇中MGMの看板アニメの主人公トムとジェリーが実写のケリ−と合成でタップを踏んで踊る楽しい場面が登場するが、この合成アニメの制作スタッフも紹介されている。
 人形アニメの分野でも特撮名作「キング・コング」King Kong (33年)の人形アニメを担当したウィリス・オブライエンや、ジョージ・パル制作の人形アニメのパペトーン・シリーズもきちんと収録されている。
 また、サイレント時代を経てト−キ−時代に入り、音楽が重要な位置を占めるようになった。アメリカのアニメ文献の多くは長篇アニメは別として、短編アニメの音楽監督は記載されていない。しかし、このアニメ事典ではトーキー以降の音楽担当監督だけでなく、声優まで記載されている。研究者にとってどんなに嬉しい事か。
 私事で恐縮だが、かって山口且訓氏と共著で「日本アニメーション映画史」を上梓した。資料編では日本で国産アニメが始めて製作された大正6(1917)年から昭和52年までに日本で製作されたアニメの制作スタッフを調査し収録した。
 私は現在、日本で公開された全外国アニメについて調査を行いリスト作成中だ。アメリカで1906年に製作された世界初のアニメと言われたJ.S.ブラックトンのHumorous phases of Funny Faceが明治時代に日本で公開された事実も突き止めた。米英仏ソ各国のアニメ約3000作品のリストを作成したが、監督は判明しても音楽監督の調査がネックであった。今回、この事典で音楽監督も解明可能となった。
 なお、この事典には一枚のスチルも収録されていない。分厚い全634ページの最初から最後までデータの集積である。アニメ研究者にとっては貴重なバイブルと言えよう。私にとってこの事典を入手できたのは嬉しい福音であった。アニメ大国と呼ばれる日本だが、ことアニメ文献の出版状況はお粗末そのもの。こういった資料的な文献の出版は日本では逆立ちしても出版されないであろうことは残念である。
                            渡辺泰さん(アニメ研究家)

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