2006.05.20 K.Kotani>
NEW BOOKS ウォレスとグルミットの世界
毎月読める日本で唯一の自主アニメ情報誌
月刊近メ像インターネット
2006年05月20日
NEW BOOKS ウォレスとグルミットの世界
"THE World of Wallace & Gromit" Andy Lane著2004年英Boxtree刊 184ページ ハードカバー 紀伊国屋洋書扱い\3726。
お人好しの珍発明家ウォレスと主人思いの忠犬グルミット共演のクレイ・アニメーションは第1作「チーズ・ホリデー」(1990)が公開されるや人気をさらった。第2作「ペンギンに気をつけろ!」(93)で怪盗ペンギンのマクグローと忠犬グルミットの模型機関車の追っかけはつまらない劇映画以上の迫力で観客の拍手喝采を浴びた。第3作「ウォレスとグルミット危機一髪!」(95)は羊たちと繰り広げるアクロバットの面白さは、のち日本製プリンのCMにまで登場する始末。ウォレス&グルミットのキャラクターを創造したニック・パークの才能とアードマン・スタジオの力量恐るべしの感があった。
この本は2004年刊だが、ニック・パーク在籍の制作スタジオ、アードマン保存の制作資料による詳しい作品紹介が楽しい。各作品のキャラクターデザインからオリジナルスケッチ、絵コンテ、セットの撮影風景が紹介されている。「ペンギン〜」に登場する博物館のセットでは、ペンギンの生態紹介のショーケースの中になんと怪盗マクグローが入っているではないか! 巻末に各作品の詳細なクレジットや各国の映画祭での受賞歴も記され、資料性も高い内容だ。
この本の出版は04年だが、05年10月10日早朝、英ブリストルのスタジオ倉庫から出火。名作3本(チ−ズ・ペンギン・危機一髪)の人形、小道具の他、フィルムまで全部焼失のアクシデント発生。おまけに初の長篇「チキン・ラン」の資料も焼失とか。幸運にも最新作の「野菜畑で大ピンチ!」のセット、小道具類は倉庫内になくて焼失を免れたそうだ。今や旧作のセットや小道具はこの本で見るしかないのかもしれないと思うと貴重な資料本になるかも知れない。
(アニメ研究家 渡辺泰さん)
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