<2006.08.26 K.Kotani>HIROSHIMA 2006 三日目


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2006年08月26日

HIROSHIMA 2006 三日目



広島フェス三日目。午前中前日の残りの処理などでやや遅刻気味。タイの長篇3DCGアニメ「カーン・クルアイ」はポスターの絵柄その他から止めてこどもアニメに回りましたが、これが失敗かも。当日聞いた話によると、ディズニーにいたスタッフがタイの歴史的背景を踏まえて製作した傑作らしい。最後の方の戦いのシーンは象を戦闘に使用する国でないと分からないような戦闘のディテールがちゃんと入っていてすごい、そうです。そのうちミニシアターなどで上映されるかDVDが出るかと思うので、観て損はない様子です。


ビニール人形として復活したラッピー

 こどもアニメもはずれではなく、「かくれ家」「お馬さんの話」「タイムマシン」「イワンのばか」「消防士サム」など、中々楽しめました。人形アニメの精緻な動きには感心。最近見た人形アニメはシャカシャカ動いているだけで何かをしているという質感が動きにないものが多かったのですが、「CGではないか」とも思える程のなめらかな動きをしていました。「動いていればエエ」というレベルでなく、ちゃんと時間をかければできる事かと思います。
 昼食後、フレーム・インで若干の作品と作者との質議応答を見ました。フレーム・インの常連の方らしかったのですが、「次はコンペに出してよ」「出したんですが、落ちてます・・・」という応答には考えさせられました。別に自主制作作品としては普通以上の出来なのですが、やはり世界の壁は厚い、ということでしょうか。

「フレーム・イン、ネクサス・ポイントなどの告知板」

 その後、学生作品4を途中から見ました。日本の作品も二本含まれていましたが、「やはり、ちゃんと時間をかけて作らないとダメ」という事をひしひしと感じました。(学生作品の中では、いいな、と思ったカナダ「バードコールズ」が後でコンペに入っていました。)
 「学生優秀作品集」は、コンペの応募作品の中から優秀作品を集めたものらしいのですが、それが10プログラムもあるという事は、いかに世界各国で多くの学生達がアニメ制作をしているのか、物凄い量の作品が作られているという事でしょう。
 今回上映されている作品はそれぞれに手をかけて作られているものですが、才能の有無、技術の優劣は別として、多くの落ちた作品を作った人は、作品を作るに当たって、なにか課題で作らされて一定の締め切りまでに一定以上のレベルをクリアーすればOK、という事であれば、そこまで仕上げればいいや、という事で作る人が妥協してしまい、徹底して作らない、という事はあるかと思います。
 教える側も急速に増えたアニメ学科に教員の養成が追い付かず、油絵や彫刻を専門にしている方が教えている、という事も聞きます。別の世界の方が教える事自体は良い事だとは思いますし、現在活躍しているアニメ作家の多くがアニメーションを専門に勉強した人ではなく、アニメーションは独学でマスターした、という点から見ても問題はないとは思いますが、どのくらいのレベルまで達する必要があるか、という点はきちんと押さえる必要があるでしょう。アニメ学科であるにかかわらず、トレス台がない、という学科もあるらしく、各校とも学校の経営的見地から入学者数を稼げて新規開設の認可がおりやすいアニメの学科をばんばん作っているという話が本当であれば、(本当らしいのですが)教育内容の充実までとても目が行き届かない、というのも無理はないかと思います。
 別にアニメーションをやりたい人がどんどん増えているのは日本だけではなく、中国でも人材育成のニーズに対して教員が全然足りない、という話も聞きましたし、スイスでも専門の学科が出来たのはつい最近という話も伺いました。
 アート系の作品をやってメシを食う(自分の作品でという意味でなく、CMなどの仕事をやっていくという事も含めて)ためには、少なくとも世界レベルの作品を作れなければどうにもならず、そのレベルとはどういうことだという事をちゃんと教えてあげないと、高い学費を払って大学に来ている皆さんに申し訳ないのではと思いました。
 さて、会場前では本日は古川タクさんのサイン会がありました。

 ベスト。オブ・ワールド4では、意外だったのが「キャプテンズ・ドーター」、写真で見るとCGかなと一瞬思いましたが、れっきとした人形アニメ。なお、原作はプーシキンの「大尉の娘」なので、タイトルも「大尉の娘」で良いのでは、と思いました。細かく作られた人形と背景美術セットに、やはり細かいアニメートに感心しました。

 おまちかねのコンペですが、会場でまずバカ受けしたのが「フォーレン・アート」。墜落死させた死体をコマ撮りして並べ、音楽に合わせて動かし、それに合わせて踊る、というバチ当たりな内容でした。特注したようなバカでかい映写機械のメカニック表現や、踊りまくる独裁者のなめらかで力感にあふれた動きなど、罰当たりな感性がしっかりとした技術に支えられていました。
 「ビーク」待中のビルの屋上から通りかかる上空の鳥を撃ち落としている父親に、手が羽根に、口がくちばしになった赤ん坊が生まれ、サーカスで暮らすようになり、やがて思春期を迎えて恋に恋して町にでかけていじめられる・・・というような切ない物語でした。
 「ウルフ・ダディ」は、著述家の狼の家に、「これがあなたの子よ」と、女性につれられた女の子、ウサギ、亀が次々に現れ、食料として冷蔵庫に保管されていた鹿と一緒に奇妙な共同生活が始まるという物語。「トトロ」を思わせる風景に「ハイジ」を思わせる導入部、子供達を連れてくる女性達の鋭い回し蹴りなど、日本のファンを喜ばせるポイントを心得た作品でした。
 学生の部でも上映されていた「バード・コールズ」は、留守電に入ってる鳥の鳴き声をメモろうとしているうちにその奇妙な文字が動きだし、文字が鳴き声に合わせて動く、というユニークな発想の作品でした。
 「リユニオン」は、鉛筆によるリアルな写実画が動く、魅力的な作品でした。
 コンペ3日目で53作品の内の40作品が上映されたわけですが、会場の声を聞いても「決定的」という作品がなく、最終日にすごい作品が出るのか、意外な作品が入賞するのか、結果が楽しみです。

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