2008.11.05 K.Kotani>
「みんなで育てるアニメーション」で思った事
毎月読める日本で唯一の自主アニメ情報誌
月刊近メ像インターネット
2008年11月05日
「みんなで育てるアニメーション」で思った事
2日のパネルディスカッションで、杉井ギサブロー氏が、「別にアニメ科を出たからと言って全員がアニメーションの仕事に就く必要はない。アニメーション科で学んだ事を生かしていろいろな仕事に生かせば良い」というような趣旨の発言をされていた。まったく正論かと思う。
その一方では、「プロの世界は厳しいので、相当の覚悟がなければやっていけない。全員にその覚悟があるとは思えない。」という様な趣旨の発言もあった。(この項目録音から起こしている訳ではないので、記憶違いはご勘弁を)。
古川タク氏よりも、「今はパソコンで一人で全部出来るが、集団制作の中でもまれて覚える事も有る。いろんな学生がいるが、ちゃんとやるやつはちゃんとやっている。」という様な趣旨の発言があり、それを結果として受けるような形で、杉井氏は「パソコンで何でも一人で出来る環境があるのだから、どんどん若い人が勝手に作る時代が来る」という様な発言をされていた。
実際の所、すでに、商業アニメと芸大生ならびにそのOBの作るいわゆるアート・アニメ群とは別に、DogaのCGアニメコンテストに出品されているような「パソコンでアニメ」作品は膨大な量であり、まったく勝手放題なけしからん(コレはほめ言葉です)アニメーション作品が作者の作りたい放題で作られ、「アートでございます」の諸先生からは眉をひそめられる状況だが、杉井氏の予言されたような状況は「すでに来ている」とも言える。
アニメーション産業が鉄鋼産業を上回る輸出産業となり、国策としてアニメーションが推進される事になった。そしてそれいけやれいけでドンドン大学にアニメーションの学科が新設され、どっと学生が押し寄せて、「萌え系」でなく、「アート系」の作品を作り、それとは全然関係なく、作りたい放題のCGアニメが作られる、という状況は、方向性がずれているようで、正しいのかもしれない。
アニメーション学会の大会の講演やその他の講演でも商業アニメの現状として、「ちゃんとした使えるアニメーターは日本で数十人しかおらず、作品を作るたびに取り合いになっている。そのメンバーはこの20年ほど変わっていない。」という話が出ている。毎年数百人のアニメ学校の卒業生が出ているというのに。
考えれば、昔は新しいプロダクションが出来、新聞で人を普通に募集、いろいろな人が入って来てその人に仕事を教えては作る、という状況だった。(アニメ学校などはなかった)古川タク氏もTCJで「鉄人28号」の動画を三ヶ月描いていたと発言されている。
その後、日本アニメーション協会によるアニメーションワークショップなどが行われてどっといろいろなジャンルからアニメーションに人が入って来た時期と、商業アニメで「ちゃんとした使えるアニメーター」が出た最後の時期はさほどずれていない。
アニメーションワークショップは1978年に始まり、大阪では1984年に終わった。(東京やその他地区ではもっと早く終わったらしい)1980年代始めから、各種アニメ学校や大学のアニメ科が充実して、自主講座が必要とはされなくなり、そこに受講生も集まらなくなった。
ところが、就職の世話をちゃんとしてくれるアニメ学校が充実して以来、商業アニメに、人が出ていない、という事らしいのである。
考えれば、18才くらいまで普通に(アニメは見るだけ。同人誌は作るかも)生活していて、それから専門学校に入って、アニメを勉強して間に合うはずがない。(まず、普通に絵が描けない!)
ところが今や就職に関係ないアート系のアニメを学ぶ学生が全国各地に大量にいる一方(古川先生の所では今年から卒業らしい)、全然アートとか関係なく、お祭り騒ぎで好き勝手にCGアニメを作って発表している「けしからん」(ホメ言葉ですので誤解なきよう)連中がネットを中心に、「遊びまくっている」
この若い連中が未来の日本アニメをなんとかするだろう、というのは、楽観的すぎるだろうか?
kotani@mx1.nisiq.net