2012.07.05 K.Kotani>
NEW BOOKS テレビアニメ夜明け前
毎月読める日本で唯一の自主アニメ情報誌
月刊近メ像インターネット
2012年07月05日
NEW BOOKS テレビアニメ夜明け前
「テレビアニメ夜明け前 知られざる関西圏アニメーション興亡史」 津堅信之著 ナカニシヤ出版 税別2000円
帯に「戦後からアトム登場までの空白のアニメ史」とあるが、実際には戦前から現在までの記述も多く掲載されている。メインはテレビ放送開始に伴うCMアニメ制作の大量受注による関西におけるアニメ制作の盛り上がりと、1966年-68年の大阪制作のテレビアニメ「ロボタン」放送の部分までである。「ロボタン」は当時リアルタイムで見ていたので大変懐かしいが、主題歌に「高く飛んだぞ5メートル」という歌詞があったと思う。本書では「10メートルまで飛べる」とあるので、「実用上昇限度5メートル・最高上昇限度10メートル」という事なのだろうか。
また、90年代初めまで北区天神橋にあった「関西動画スタジオ」は、いつ出て来るのだろうか、と思いつつ読んでいたが、ついに登場せずじまいだった。ロボタン後に、「主にローカルCMを製作する零細なスタジオ」のひとつだったようだ。87年の近メ協の記録によると、関西で最も古い自主アニメサークル・関西アニメーション協会(小型映画系・日本アマチュアアニメーション協会に関連)の当時の連絡先が関西動画スタジオ内になっており、何か個人的なつながりがあったのではないかと思われる。なお、90年代に徳島アニメ学校で「セルアニメ」を取り上げた時、「トレスマシン」の件で電話を入れた事があるが、あまり元気のない声で「ない」という返事をされた記憶があるので、当時すでに撮影だけの会社だったのか、ハンドトレスで作られていたのかも知れない。(なお、一時トレスマシンを置いていたはずの東映アニメショップ・ペロにも、当時はすでに置いていなかった)
最後に、著者は今後の関西アニメーション産業の将来について、関西でアニメ教育を受けたものの受け皿として、「関西地区のアニメ高等教育機関によるアニメーション製作会社の設立」を提言している。これについては、地方自治体が「特区」として税制上その他の優遇措置を行なったりする事により、元請けプロダクションを主要スタッフごと関西に移転させる等の方法を用いれば十分可能だと思う。関西地区は東京に比べて家賃等の生活費も安い一方、生活上の利便性はさほど変わらない上、関西出身のスタッフは実家から通えるメリットもある。アニメ産業ではまだ例はないと思うが、他の産業では誘致により工場を地方移転させている実例が多くある。大阪でアニメのテーマパーク等を観光目的で作る、という計画はあるように聞いているが、官製の施設が巨大赤字を出して潰れる(と決まったわけではないが)事が多いのに比べると、規模は小さくても経済への貢献はちゃんとある産業の誘致の方がええ様に思えるのですが、どうでしょうか。