<2013.01.29 K.Kotani>自主アニメ産業の可能性 7


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2013年1月29日

自主アニメ産業の可能性 7



 前稿までは、「やはり普通の人はアートアニメの制作では食べていけない」という事を述べて来た。

 しかし、それでもアニメを作り続けたい、という人はいくつかの選択肢を選んでいる。まず、別に収入のための職業を持ち、アートアニメは趣味として続ける、という方法である。多くの人は、「アニメーションを教える学校の教師」になっているようだ。また、基本的にアニメーションは「仕事」として、割り切り、アートアニメ系の作風のみを残して受注制作し、時々自分の作品も作る、という道もある。

 ここで「マンガ」と比較してみよう。近年、街の画材店をのぞいてみても、少なからぬ場所が「マンガ」用の画材に割かれている。それが商売になるという事は、日本の津々浦々に「マンガ」を描いている人がいる、という事で、街の書店にあふれているマンガ雑誌に描いているプロのマンガ家の他、膨大なアマチュアのマンガ家がいる事になる。関係の方に聞くと、アマチュアで自分の好きなマンガを描いて、それを自費で印刷・販売して、それで生活できている人も結構いるらしい。(ある程度以上になるとプロデビューするらしいが。)さらに、この、「アマチュアのマンガを買う人」の多くが、「自分でもマンガを描く人」のようなのだ。

 で、アートアニメでも「この線」を狙ってみてはどうだろう。この十数年で、アニメーションに特別な機材が必要で最初に何十万もかかる、という時代は去った。アマチュアでアートアニメを作る人がいっぱい増えれば、その人たちは、他の人の作ったアートアニメのDVDを買ったり、アートアニメの上映会に行くだろう。(今でも、そうなのだから) その一部の人気のある人は、他の人に作品のDVDを売ったり、上映会で入場料をもらって生活できるかもしれない。また、アニメの学校を卒業して一旦プロになった後プロをやめた人とか、卒業後アニメ制作のプロにならなかった人が、街のピアノ教室のような感じでアートアニメを作る教室を開いて収入を得る事ができるかもしれない。街の画材店では、アニメ用のタップや動画用紙を扱って商売になるかもしれない。(トレス台はもうマンガ用に売っているので)

 こんな事を思ったのは、ゴルフとの比較からである。ゴルフでは、一握りのプロがゴルフをやっているのをファンがテレビで観たりしているダケではなく、もの凄い数のアマチュアがいて、ゴルフを「やり」、そのために、膨大な用具・ボールを購入し、雑誌を購入している。まさに「ゴルフ産業」となっていて、「ゴルフを教えたり、ゴルフの用品を売ったりして、ゴルフで食べている人」も、膨大な数に上る。「ゴルフをやる」事が商売として成り立つのは、ゴルフがそもそも、「やっていてとても面白く楽しく、入り口は広く、奥行きは果てしなく深い」からである。

 「でも、アニメーションを「作る」のは、ゴルフを「やる」のと違い、とてもしんどい事ではないのか」と言われるかも知れない。一般の常識では、「アニメーションは観るのは楽しいが、作るのは大変な根気のいる事で、でもだから出来た時の喜びは大きいんですよね。」という事になっている。そんな事はない。アニメーションを作る事は、それ自体大変楽しい事なのである。もちろん、昔のセルアニメのように、一枚ずつ動画をセルにトレスし、それを一枚ずつ彩色し、背景と重ねてタイムシート通りに撮影して行く、という作業の部分は大変だ。しかし、現在ではそういう作業はだいたいバソコンがやってくれる。その前の、「ちょっとずつ違った絵を沢山描いてイメージした動きを作り上げて行く」という作業は、しばしば、まるでゲームをやっているような快感を伴うものなのである。

 また、初めてアニメーションを作った時に、自分の作った物が動く瞬間はちょっとした感動ものらしい。(らしい、というのはずいぶん昔の話で、私自身の事はあまりよく覚えていないので。)

 だから、アニメーションを「作る」という事が、機材的にはとても簡単になった今、ものすごい数の人がアニメーションを作って、決して不思議ではない、と思うのである。そして、それは「アートアニメを作って、それで飯が食える」という事に通じると思うし、「アートアニメ」自体がひとつの産業になる事につながると思うのだが。

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