<2014.02.16 K.Kotani>アニメーションの「基本」とは


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2014年2月16日

アニメーションの「基本」とは



 アニメーションとは何か。

 インターネットで検索すると、「目の残像現象を利用して、複数の静止画像を次々に(おおむね、毎秒8枚以上)見せる事で、あたかもものが動いて見える様に錯覚させる事。」というのが、共通の認識のようだ。

 さて、書店でアニメーションの技術書を探し、タイトルに「基本」とか「基礎知識」とか「ベーシック」とかついている本を見ると、たいてい、平面アニメの人間・動物の動きの書き方の実例と描き方などを載せている。その他、「企画」「シナリオ」「絵コンテ」等も「基本・基礎」の内に入るらしい。日本の本ならたいてい最近のTV・劇場アニメで使われているようなキャラ、海外の本はディズニー風のキャラが出て来る。

 新聞・雑誌等でベテランの商業アニメーターの方の話が載っていると、「アニメは人間の動きを描くのが基本です。」と、爆発や自然現象などを得意にする方はどうも「傍流」扱いになっている事がある。この人は、ノーマン・マクラレンにも、「アニメーションの基本は人間の動きです。」と言うのだろうか。(「ああいうのは特殊だから」で済まされそうな気もするが。)

 アニメーションの基本の入門書というのが、時々出る。
 「作画だけ」しか載っていない本は、それだけでは作品は作れないのだが、古くなりにくいので、70年代の本がまだ現役で出ていたりする。
 作画から撮影・録音まで全部載っている本は「撮影」で紹介している「コマ撮りで使うカメラ」がすぐにモデルチェンジして手に入らなかったり(8mmフィルムカメラや、コマ撮りの出来るビデオカメラ、パソコンと接続出来るデジカメなど)、パソコンを使う場合はOSやアプリがコロコロ変わるので、特に最近は発行して2-3年たつと役に立たなって絶版になっているようだ。

 コロコロ変わって行く機材ソフトの使い方や、アニメーションのほんの一部でしかない「商業アニメ」の作り方は、「基本」とは言い難いと思う。「基本」とは、古今東西平面立体CGアナログデジタル短編長編前衛通俗のすべてに共通して使える技術でなければならない。

 そういう視点で、あらゆるアニメーション関連技術からジャンル区分に固有なものを削って行くと、最後に残るのは「ちょっとずつ違った画をコマ撮りして動きを作る技術」である。

 ただ、特に、最近の人形・クレイ・切り紙系のアニメ制作では、いつも一定の幅でコマ撮りし、素材のディテールや音響、カメラの寄り引きでごまかしている作品がとても多いように思える。別にそういう、作品もあって良いとは思うが、「動きのディテールにこだわらない作品」が多いのは、「アニメーションは絵が動くだけで面白い」ということにも原因があると思える。

 アニメーション大好き人間としては、あくまでアニメーションは動きにこだわってほしい。細かく動かしてコマ撮りするとゆっくり動き、大きく動かすと早く動く。動かす幅を徐々に加減すると加速・減速する。このへんを基本としてふまえた上で、キャラクターの感情が動きだけで分かる、音響その他はあくまでそれを補強するものとして使ってほしい。

 音を消して映像だけ観たら、キャラクターが怒っているのか喜んでいるのか分からないアニメーションはかんべんして欲しいものだ。


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