<2014.10.26 K.Kotani>大阪国際児童文学館返還請求裁判終結


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2014年10月26日

大阪国際児童文学館返還請求裁判終結



 かって夏休みに「こどもアニメ教室」が毎年開催されていた、「大阪国際児童文学館」について、蔵書の寄贈者達が「児童文学館を廃止するなら、寄贈した本を返せ」と起こしていた裁判について、最高裁が2014年9月4日に、原告敗訴とした大阪高裁判決を支持して、上告を棄却、裁判は原告「敗訴」で終結しました。
 元々この裁判は、児童文学の保管・研究施設である大阪国際児童文学館を「こども図書館」と勘違いした橋下徹大阪府知事(当時・現大阪市長)が、「ここはこども図書館として機能していない」と文学館の廃止と中央図書館への図書移送を決定・強行、反発した当初の児童図書寄贈者たちが「最初に図書を寄贈した時の約束と違う、本を返せ」と起こしたものです。
 その後橋下知事も「勘違い」に気づいたらしく、「返してくれというのなら本は返してもいい」という発言もありましたが、図書の移送は強行されました。ただし、「大阪国際児童文学館」自体は実質的に廃止はされず、「大阪府立中央図書館国際児童文学館」として従来通りの活動を東大阪の中央図書館で継続しています。
 この間、中央図書館の改修と図書の移送に要した経費は数億、元の文学館の建物は「書庫」(様は物置ですな)として万博公園内にそのまま残っています。
 この間、最大の損害は、児童文学出版関係者に「大阪府は寄贈者との約束を破り児童図書の収集と保管をやめるらしい」という風評が一気に広がり、従来毎年数千点に及んでいた出版社からの無償寄贈がドカ減りした事で、あわてた大阪府は、運営を府直営から財団法人形式に戻す事等を検討する有様。(その後、寄贈のペースが元に戻った事もあり、運営は府直営のまま、また、財団法人は「大阪国際児童文学振興財団」として、中央図書館内で従来の一部の活動を継続中)
 裁判は原告敗訴となりましたが、結局児童文学館の主要な内容は「場所」が変わっただけでほぼそのまま、交通が便利(地下鉄の駅のすぐ近くになりました)になったために利用者は逆に増えている様子です。
 結果として「中央図書館に移転した方が良い」という橋下知事(当時)の直感的判断自体は間違っていたとは言えないのかもしれませんが、それならばそれで「利便性向上のため、国際児童文学館は中央図書館に移転させる。移転費用は大阪府で出す。児童文学の収集・管理は責任を持って続ける。運営については、一部見直す」と最初から言ってくれれば、こんな裁判が長々と続く事もなかったのではないかと思われます。(この裁判、府民の税金でやってるんですよ・・・・)
 判決は敗訴ですが、「実質勝訴」とは言えないまでも、大阪府は結局原告の請求内容を、吹田市への再移転をのぞき、ほぼ取り入れた内容で「児童文学館」の運営を継続しており、児童文学関係者への「大阪府」の大幅なイメージダウンのみが残ったようです。府民の税金でなにをやっているのやら。  

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