<2014.12.07 K.Kotani>NEW BOOKS 高畑勳の世界


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2014年12月07日

NEW BOOKS 高畑勳の世界





 「高畑勳の世界」小谷野 敦 青土社 定価1400円(税別) 
以前読んだ「ウルトラマンがいた時代」がやたらと面白かったので、購入。いや、いきなり「ホルスの大冒険」を力作で野心作だが、「失敗作」とばっさりと切り捨てるわ、関連で「もののけ姫」を「あれだけストーリーの破綻した映画が当たるのが理解できない」と一刀両断するわ、さすがは小谷野さんである。
 さて、面白く読み終わった後で(!)AMAZONのブックレビューを見ると、やはり「がっかり」「高畑さんに失礼、絶版にすべき」「思い出話が多い」「事実誤認だらけ」などとぼろかすに叩かれている。
 この中で「思い出話」とされている部分だが、「ウルトラマンがいた時代」とも共通するこの本の構成の特徴であり、「昔、子供だった自分が観た生の感想」と、「現在の自分による分析」を積み重ねて、それぞれの時代の中で作家作品をとらえていく著者の姿勢は面白い。「子供時代の感想」は「よく覚えているなあ」と感心する。
 「事実誤認だらけ」という点は、確かにその通りで、「子供時代に間違って覚えていた」のではなく、大人になってから観た作品の内容を勘違いしていたり、明らかな内容の誤解釈としか思えない部分がやたらに多く、本にするならそういう点はきちんと元の作品を再確認すべきだろう。高畑・宮崎ファンなら、「勘違いして悪口を言うな」と言いたくもなるだろう。ただし、この本の本質に関わる間違いはないようだ。
 むしろ、高畑勳の演出手法、映像表現の特色という部分にふれた部分がまったくない、という点が問題で、著者は意図的にそういう部分を避けているのかも知れず、高畑作品を「映画鑑賞のプロ」のような方が絶賛する部分については、また別の方の分析を待つしかない様である。
 この本は2013年4月の発行だから、当然、その後に公開された「かぐや姫の物語」についての記載は、「製作中と聞いている」のレベルである。小谷野さんはどう観たか、という点については、「ユリイカ」の特集の記述が大変面白い、という評判がネットに上がっている。

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