<2016.1.4 K.Kotani>NEW BOOKS 「映画探偵 失われた戦前日本映画を捜して」


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2016年1月4日

NEW BOOKS 「映画探偵 失われた戦前日本映画を捜して」



 高槻真樹著 高槻真樹 河出書房新社 税別2500円。こんな面白い本めったにあるものではない。知ってる人も場所も出てくる出てくる。ついでに、「失われた杉本コレクション」が何処にあるのか、名指しではないが、分かるように書いてある。
 戦前の劇場用映画は、製作会社に映画作品を「保存・整理・管理」するという概念が無かったようで、現在鑑賞できるものは製作された映画の1割程度だそうだ。この「失われた映画」をめぐり、国内・海外のフィルムライブラリーや、コレクター、フィルムの復元補修技術者などを訪ねて、過去の状況から現状までをくわしく紹介している。
 特筆すべきは、発掘・復元された映画を鑑賞する筆者・観客の興奮・感動のさまで、「白黒・サイレント・スタンダードで、しばしば一部分・あるいは大半の欠落した昔の映画がそんなに面白いの?」と疑問符を付けたいほどである。しかし、確かに、「幻の名作を発見し、ついに鑑賞にこぎ着けた!」という感傷のプラスαはあるにしても、「制約があるがゆえに面白い」という事は確かにある。「デジタル・3D」で簡単に何でもかんでも出来るから、と必要も無いのに多種多様のエフェクトをてんこ盛りにした最近の作品には、「監督が訴えたい事」を表現したいのか、「映像技術のプレゼンテーション」なのか、首を傾げたくなるような作品も多い。限られた環境・機材の下で、懸命に何かを表現しようとした昔の作品の表現を今一度再確認・評価する必要があるかもしれない。



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