<2016.1.30 K.Kotani>Animation Runs!  Vol.5 水江未来監督特集


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2016年1月30日

Animation Runs!  Vol.5 水江未来監督特集





 1月30日、姫路市のブックカフェギャラリーQuiet Holidayにおいて、Animation Runs! Vol.5 水江未来監督特集 が開催されました。
 今回は、多作で知られる水江未来監督の作品の内、デビュー作「FANTASTIC CELL」から、2015年製作の「RETRO FUTURE」まで、11本の作品をセレクションしての上映となりました。
 上映後は、スカイプを通じての通信トーク・Q&Aがあり、2011年製作の「AND AND」の前と後では、作品の傾向に変化がある(「前」は、画面の「中」で、動いている様に思えるが、「後」は、映像全体の「躍動」のようなものが感じられる)ように思えた為、Q&Aでお伺いしました。
 監督によると、「AND AND」は、非常に達成感のある作品で・・・という当たりでスカイプの通信が一旦切れてしまいましたが、後ほど再度繋がった断続的なトークをまとめると、以下のような感じです。
 「AND AND」は、形態としては、松本享氏の音楽のMVですが、最初に長文の手紙が松本享氏から届いた事。普通MVは音楽が先行し、映像は既にある音楽に合わせて製作する形が普通ですが、今回は予め水江氏のアニメーションを観ていた松本氏が水江氏の世界観に合わせた音楽を作り、それに合わせて映像を作った、という事だそうです。
 スタジオジブリでの、先に映画の設定に合わせてイメージアルバムを作り、それを聴きながら映像を作り、最後に映像に合わせてサントラ版の音楽を作る、という プロセスに似た話です。
 道理で、普通のMVでない、水江監督のオリジナル作品のような雰囲気の映像になったものだ、と納得。異なる才能との「出会い」が、表現の飛躍のきっかけとなったという事のようです。「AND AND」のクライマックスのあたりは、なにやら相原信洋氏の「カルマ」と相通ずる所もあるような気がしました。
 この「AND AND」実はYouTubeでも観る事ができる事が後で分かりました。

 こちら

 ところで、7時半からの二回目の上映を観たのですが、入場前に一回目の作品を観た方が、「作品の画質」について、一階の受付前でいろいろと話をされていました。作品を観ずに話に参加も出来ないので「聞くだけ」でしたが、初期と最近作の画質の違いについて、画像を取り込むスキャナーまたはデジカメの性能の違いではないか、というようなお話でした。
 しかし、デビュー作の「FANTASTIC CELL」が2003年で、その頃のスキャナーなら最近のものと画質はそんなに遜色はなく、画面から見てデジカメで取り込むような絵でもないと思えました。
 実際に上映を見ると、話題になっていたのは、映像の「圧縮ノイズ」だったようです。アマチュアや学生の使う機材(パソコン)には制約があり、映像の画質を高くするとデータが重たくなってパソコンが固まってしまったり、読み出し・伸張が間に合わず、動きがカクカクしたりします。
 比較的最近の作品でも、画面全体が動きだとような個所ではプロックノイズが出る所もありました。こういう点は、「フィルム」の上映の方がいいですね。

 コンピュータでの動画の圧縮技術は、ごく初期は、専用の圧縮伸長ボードを使ったMotion Jpegが普通でした。Motion Jpegは、映画を一コマずつ上映する様に、映像の1フレームずつを一枚ずつ圧縮して記録し、記録した映像を1フレームずつ伸張して再生します。よって、動かない場面であろうが、メチャメチャに動く場面であろうが、あまりデータ量は変わりません。ノイズはどのシーンでも出、小さなパソコンの画面やテレビではあまり分かりませんが、最近の様に高性能のプロジェクターで大画面に上映するような場合は、かなり目立ったノイズが出ます。
 その後に導入されたMPEG方式は、前の1フレームとの「差分」をデータとして記録する方式なので、あまり動かない場面では極めてデータ量が少なくなりますが、画面全体が激しく動くような場面では、データ量が大きくなり、圧縮率を高くするために、画面にノイズが出ます。現在のデジタルテレビ放送でもMPEGは使われていますが、静かな場面ではとてもきれいなデジタル放送も、画面全体が激しく動くような場面では、その気で観れば、画面の崩れ・ノイズを観る事ができます。
 「AND AND」でも、静かなシーンではとてもきれいですが、クライマックスの画面全体が動き出すようなシーンでは、若干のノイズが出ていました。本当に全部きれいなぴしっとした映像を観るのには、フィルムで撮るか、ベータカムでコマ撮りするか、劇場用の機材を使う必要があるようです。

 「Animation Runs! 」の次回は2016年2月19日の予定で、 タマグラアニメーション特集が予定されています。



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