<2017.06.10 K.Kotani>クローズアップ現代+「2兆円↑アニメ産業 加速するブラック労働」


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2017年6月11日

クローズアップ現代+「2兆円↑アニメ産業 加速するブラック労働」




 6月7日、NHKで「クローズアップ現代+「2兆円↑アニメ産業 加速するブラック労働」が放送されました。「繁栄するアニメ産業」と「現場アニメ労働者の悲惨貧乏物語」を対象させる内容で、現場のスタジオ・若手アニメーターへの取材などで、「長時間・低賃金労働」とその業界の構造の問題を指摘、その一方で、業務改革・改善をもって対応している会社もある、というような内容でした。
 しかし、手描き(タブレット作画含む)の2Dアニメの動画職アニメーターの低賃金を指摘しながら、その対策の一例として、ある3DCGアニメのスタジオの分業化と合理化の徹底を紹介していたり、(このスタジオ、前にもNHKに出ていた・・・)今ひとつ踏み込めていないような感じでした。
 一方、最近公開された「夜明け告げるルーのうた」を発表したサイエンスSARUへの取材では、液晶ペンタブレットによる作画とパソコンによる中割り処理の活用による大胆な省力化を紹介。アニメーターが手描きで描いた原画を元にかなりの部分を機械に処理させ、従来比1/3の工程での製作に成功したそうです。この作品はベテランのアニメーション作家・評論家の評価も高く、作品の質の高さと省力化の両立の成功の一例と言えるでしょう。
 手描きアニメの動画中割り処理の自動化については、90年代に一度試みられ、結局当時はものにならずに断念された、という歴史があります。しかし、その後のパソコンの機能の飛躍的向上や、各種機材の開発と性能の向上、使いこなす側のアニメーターのデジタル機材利用スキルのアップにより、現在はアニメーターがつききりで細かくコントロールしていけば、絵柄によっては手描きによる中割りとなんら遜色の無いアニメーション表現ができるレベルに達しているようです。
(「夜明け告げるルーのうた」は、今風のややこしいキャラではなく、昔の漫画映画風のあまり影もついていないキャラでした)
 番組の最後で、「機械化しても最後に眼で見て判断するのは人間」「今後はAIの活用」というような関係者の発言もありました。
 2Dアニメの動画作業の内、現在、海外に下請けに出していたり、国内で若手アニメーターの育成用になっているような比較的単純なパターンの中割りがあります。この中割りの仕方、何百通りなのか何千通りなのか数万通りなのか分かりませんが、「こうやって割る」というパターンは確かにあり、それを人工知能(AI)に覚え込ませて、アニメーターがキイになる原画を数枚書き、動きのポイントを指定して「ハイ、大塚の5番」「森の22番」「ミヤザキ11番」とパターンを指示すれば、一瞬で中割りが終わり、後はアニメーターが動きを観て細かい点を修正する、という作業になる時代もそう遠い日ではないかも知れません。
 

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