2017.08.13 K.Kotani>
iPadコマ撮り機化計画(まとめ)
毎月読める日本で唯一の自主アニメ情報誌
月刊近メ像インターネット
2017年8月13日
iPadコマ撮り機化計画(まとめ)
「ピピアめふアニメこどもアニメ教室」で、コマ撮り機として使うためにiPadを購入し、いろいろとテストしてみました。結果として、なんとか実用化のめどが立ちましたので、経過・結果をレポートします。
まず4月。花コリのワークショップで「iPad」をコマ撮りに使っていたので、これは、子供アニメ教室のビデオコマ撮り機の跡継ぎに使えそうだ、と思ってiPadを買ってテストしてみる事にした。
何しろ、今の8mmビデオカメラは2001年に教室が始まった時に「中古」で購入したものなので、(CCD-V700というソニーのカメラで、東京の「こどもの城」のワークショップでも使っていたらしい。あちらは先に会場自体がなくなってしまったが、こっちは今の所まだまだ続きそうなのである。)もう16年も使っているが、最近なんとなく動作がしんどそうだ。基本的に、二ヶ月に一度・室内で使用しているだけなので、あまり使用頻度はないのだけれど、マイクのスポンジはぼろぼろ、レンズフードのゴムもかぜをひいてもろくなってしまい、片方のカメラではもう割れて無くなってしまっている。また、後で編集して「作品集」にするのだが、どうも動作精度が落ちているらしく、パソコンへの取り込み時に、微妙に画面に「ズレ」が出て来る。
アニメ教室でのコマ撮り機に対する条件としては、「撮ってすぐ観れる」(見本をやって見せたり、作ったものをみてもらったりする。)「モニターに撮影中の画面が出せる。」(カメラは頭の上にあるので、外付けのモニターを作り手の正面に置かないと見えない。)「リモコンが使える」(カメラを直接操作するとがめんがブレる。)という点である。
おそらく、問題は「モニターに画面が出せる。」という点だ。
会場にあるモニターテレビは「アナログ」なので、iPadからHDMIコンバータでデジタル映像信号を出し、この信号をもう一回アナログに変換すれば、うまく行くはず、だったのだが・・
家のアナログテレビに繋いでみると、画面が「正方形」で、縦横比が元のままに出ていないようだ。念のためMacにアナログ映像信号を取り込んでみると、iPadの画面がほぼ真四角に縦長に伸びている。
ちなみに、デジタルテレビにそのHDMI信号をそのまま送ると、両端が切れるが、実にきれいにiPadの画面が縦横比そのままで写る。
これは、教室用に、新しくデジタルテレビを買え、という事でしょうか・・・・
iPadiには三脚用の穴が無い。よって三脚に固定するホルダーというものが要る。AMAZONで注文する。それから中古の液晶テレビをブックオフで買って来た。
ここまで使ったお金は、iPad本体(中古17800円)液晶テレビ(中古8980円)三脚ホルダー(アマゾン送料込み1249円)HDMIアダプタケーブル(アマゾン送料込み1950円)HDMI L型アダプタ(電化店1003円)アナログコンポジットコンバーター(結局使わず・アマゾン送料込み2150円)iPadには使えないと明記してあるが、本当は使える百均の充電ケーブル(ダイソー108円)iPadには使えないと明記してあるが、本当は使えるUSB充電器1A用(ダイソー216円)〆て33456円。
前に買ったブルートゥースのキーボードがシャッターのリモコンとして使えるのを確認。リターンキーを叩くとシャッターが切れる。
モニターのテレビ画面はIpadの画面よりよりもやや遅れて反応する。これはしょーがないのか。なんとか我慢できる範囲内ではある。
無料アプリのストップモーションスタジオ、iPad用は画面サイズも4:3に変えられるし、ズームも使える事が判明。(アンドロイドのスマホ用は、ズームは使えないし、画面サイズは横長のみ。)テストコマ撮りしてみた所、無事使える事が判明しました。
5月21日の「こどもアニメ教室」で一台使ってみて、大丈夫であればもう1セット揃えて、2台の8mmビデオカメラは無事ご引退いただく事とした。
さて、5月21日。「ピピアめふ子どもアニメ教室」で、IPadコマ撮り機の実戦テストを行いました。今回は子ども参加者2名・お母さんも含めて3名だったので、余裕のテスト。
モニターは新しく中古で買った19インチ、真ん中の3/4部分では前(アナログ14インチ)と同じ画面サイズのはずだったのだが、画面内にソフトの操作部分も表示されるので、撮影画面自体の表示はやや前より小さい。(特に問題はなかったです。)
撮影画面を4:3に設定しても、テレビ上の表示は16:9のままだが、白っぽい絵を一枚撮ってオニオンスキンで透かせると、撮影画面が表示できる事が分かっていた。「ここが写ります」と参加者に説明する。
ストップモーションスタジオには、マニュアル露出やマニュアルフォーカスの機能はないが、AEロック・AFロックはできる。ピントが合っているのを確認してAFを解除すれぱピントは動かなくなる。(「ピント送り」のような技は使えないが・・・・)露出は、AEモードで、画面に白い紙・黒い紙を出し入れして、「ここだ」という点でAEを解除すれば、露出は固定できる。
シャッターのリモコンだが、ダイソーのiPhone用のシャッターリモコンが使えるのではないか、と買ってみたが、iPadには使えない、と明記してある。iPhoneには、音量ボタンをシャッターとして使える機能があるが、iPadには無いためではないか。で、当日はBluetoothのキーボードを接続、Enter/Returnキーをシャッターとして使った。「Enter/Returnキー」に赤丸シールを貼って、「ここを押して下さい。」と説明する。
(キーボードのリターンキーでOKならば、テンキーボードならもっと安くでコンパクトなはずだ、と思って、後日探してみた。なんと、Bluetoothのテンキーボードというのは、一番安いフルキーボードより高いではないか。残念。さらに、念のため、ダイソーの有線リモートシャッターを試してみると、ちゃんと「カシャッ」とシャッターが切れる事が判明。今回、この「使えないと明記してあるが、実際は使える」というのが多い。追加の一台は、このシャッターで。というよりは、2台ともこいつにした方が操作は確実だ。)
撮影は何の問題も無くホイホイと進み、「再生」キーを押すと、そのまま再生も出来る。8mmビデオカメラよりも簡単だ。
講座修了後、アニメーションデータを動画に書き出す。タブレットのやっかいなのは、「撮影したデータがどこにあるか分からない」という点だ。全部向こうで勝手にやってくれるのでお任せきり・らくちんではあるのだが、「ちょっとここを別にいじくりたい」という場合にはお手上げである。ここは素直にアプリを立ち上げ、アプリ内で不要なコマの削除や、コマの複製・追加などの作業をした上で、ムービーに書き出す。
このムービーをさらにタブレットの外に引っぱりだす必要があるのだが、iPadをパソコンにつないでもそのままでは認識しない。アンドロイドではパソコンにアンドロイド内のデータを認識させる無料ソフトがあるのだが・・・OSのバージョンを上げて有料ソフトを買うといけるようだが、お金がないのでやめておく。
しょうがないのでまずメールに添付してiPadからパソコンに送信すると、これがIPad側で送信時に勝手にどん、とサイズを縮小してしまうらしく、使えない。ネットで調べると「アイクラウド」というものを使うか、iPad用USBメモリーを使うと出せるらしい。当面「アイクラウド」でやってみる。パソコン側のOSが古く、対応していないはずだが、ちゃんと動画データは移動できた。(また、出来ないはずなのに、使える・・・)
なお、後日iPad用USBメモリーを買って使ってみた所、写真は移動できるが、動画は移動する方法がない感じで、これもアナログコンポジットコンバーターと同じく、無用の長物と化した。
移動した動画データのサイズは960×720。これを、640×480にQuickTimeProで縮小してみる。別に不具合無く縮小できる。
画質を比較すると、従来のデジカメ+パソコンの画質には及ばないが、Hi8をパソコンに取り込んだものよりはややましである。うちの教室のデジカメは画素数は200万画素だが、レンズは大口径のきちんとしたものがついている。iPadのレンズとはちょっと違うようだ。写真に関してはiPhoneの方がiPadよりきれい、という情報もあるので、お金が余っていればiPhoneもテストしたいところだが・・・・
iPadは8mmビデオカメラのコマ撮りの代替機として、十分使える事が判明した。画質も一応十分だ。講座では使用しなかったが、有線のリモコンシャッターも使える。併用するデジカメ+パソコンのシステムと同じ縦横比の動画も撮れる。
唯一残った問題は、会場備え付けのアナログモニターが、今の所はモニターとしては使えない事だ。縦横比の異なる画を見ながら無理矢理撮影していただく訳にもいかない。「iPadの画面をアナログビデオカメラで撮って、それをアナログモニタで映す。」という事もちょっと試してみたが、どうも画質に重大な問題がある。同じサイズのデジタルテレビを買う、という事になると会場のアナログモニタは29インチ、該当するデジタルモニタは40インチ程度となり、結構な値段がする上に、そんな大きなテレビを保管しておく場所が講座の会場には無いのである。なんとか縦横比を保持した上で、ある程度の画質で現在のモニタに出力する方法を模索していくより無いようだ。(お安くで!)
続く7月16日の子供アニメ教室に向けて、2台目のiPadをまたも中古で購入。アナログテレビへの出力なんとかならんもんかと、「HDMI to VGA (D-Sub 15ピン) 変換アダプタ」というものを、アマゾンで買ってみる。(本体280+送料)ipad本体からHDMIアダプタケーブルでHDMI信号を出力、これでさらにVGA出力に変換して、4:3のパソコンモニタにつなぐ。これで縦横比OKならば、VGA出力をダウンスキャンコンバータで変換してテレビに出せば良かったのだが・・・
結果は見事に失敗。横に圧縮された画面がパソコンモニタに出て来た。
ええい、「毒食えば皿まで」と、アナログコンポジットコンバーターが安物だったからダメなのでは無いかと、サンワサプライの値段の高い方(4343円プラス送料)を買ってみる。結果は安物と同じ。ダメである。
7月16日の教室の日がどんどん迫ってくる。
皿まで食ってしまったので、勢いに任せて机を食う。「Apple Lightning - VGAアダプタ MD825AM/A 」という「純正」のコンバータを5350円プラス送料で買う。レビューや仕様を見ても、画面がちゃんと4:3のモニターに出る、という事は確認できなかったのだが・・・
パソコンのモニターにつないでみる。おお、ちゃんと出る! 後は、ダウンスキャンコンバーターでテレビ信号に変換すればOKだ、と家にあるはずのダウンスキャンコンバーターを探すが、箱だけで中身が無い。仕方がない、買うか、とアマゾンで見ると、1500円+送料で発見。早速注文してつないで見ると、見事にアナログテレビに縦横そのままの比率で画が出た!
よし、行ける! と、ダイソーで2つ目の有線シャッターリモコンを購入。2台のiPadでテストしてどちらも動作する事を確認。
念のため、iPadからのデータ転送のための「アイクラウド」を再度確認すると、iPadからのデータ転送はできるが、パソコン側からのアクセスが出来ない。どうも向こうが勝手にバージョンアップしたらしく、古いOSからのアクセスは出来なくなったようだ。
いろいろ調べて、「DROPBOX」というもので出来るらしい、という事が判明、テストして動作する事を確認する。
準備万端OK、のはずで、7月16日の子供アニメ教室当日を迎えた。今回は、前回参加していたただいたお母さんが「面白いから」と知り合いも誘っていただいたらしく、定員15人満員の申し込みである。
子供アニメ教室は、午前10時から。会場は9時からしか入れないので、1時間で机を並べて機材をセットしなければならない。実際には全部のセッティングは間に合わないので、機材一台だけをとりあえずセットしてやり方を説明、子供達が素材を粘土で作っている間に残りの機材をセットするという流れになる。
まず、メインの29インチアナログテレビにiPadをつなぐ。画が出る。いいぞ。有線リモコンを繋いでシャッターを切ってみる。
切れない。おいっ。
時間がないので、別に持っていったブルートゥースのキーボードを繋いでみるが、焦っているせいか、なかなか繋がらない。仕方がないので、このセットは、iPadの画面のシャッターボタンで操作する事にする。
もう一台、前回テスト済みの19インチのデジタルテレビにiPadを繋ぐ。画が出ない。おいっ。コネクターを抜き刺しするが反応が変わらない。こっちも有線リモコンをつないで見ると、こっちはシャッターが切れる。なんでだ? 仕方がないので、こっちはiPadの画面を見ながら有線リモコンで撮影していただく事にする。
子供たちが続々とやって来たので、メインの29インチテレビのセットで説明をする。子供達がどっと素材製作を始めたので、その間にパソコンとデジカメの撮影セット2台分を組み立てる。
30分位で、最初の子が「出来た」と素材を持って来たので、撮影が始まる。カメラは4セットあるのだが、15人参加者があると、しばしば満員になって「撮影待ち」をしていただく事になる。空いたカメラに子供達を案内して、撮影をする。昔はシャッターはスタッフが切っていたのだが、今は子供たち、または保護者の方に切ってもらう。考えてみれば、自宅でゲームをしたり、テレビをリモコンで操作しているのだから、シャッターを切るくらいは子供達でも出来るのである。
撮影が終わると「終った」と子供たちが言ってくるので、デジカメで撮影した分は、データをパソコンに持って行って動画にして見てもらう。iPadの分は、その場でiPadで見てもらえる。「動いた、動いた!」と喜ぶが、「作るのは長いけど、あっと言う間や」という反応も多い。
この繰り返しが2時間続いて本日の教室は一応無事終った。
教室終了後、機材をチェックする。19インチモニタに画が出なかった件は、テーブルタップのつなぎ間違えで、HDMIコンバータに電気が来ていなかっただけ、と判明。なんという単純なミスだ。繋ぎ直すとちゃんと画が出た。
29インチセットの方の、ブルートゥース接続も、落ち着いてやり直すとちゃんと繋がった。有線リモコンの方は相変わらず動作しない。
午後は大人向きのアニメ教室。参加者の方がアンドロイドのタブレットを持ってこられたので、コマ撮りを試してみる。ソフトは同じ「ストップモーションスタジオ」のアンドロイド版だが、iOS版と画面が違う。アンドロイドのスマホ用とも違う。どうも、ハードの機能によって自動的に画面が変わるようで、AFロックはできるがAEロックができない。
帰宅して、「リモコン」の件を再確認する。19インチに繋いでいたiPadはちゃんと反応するが、29インチに繋いでいたiPadはやはり反応しない。「もしや」と思って、「音量調整ポタン」を押すと、両方とも反応してシャッターが切れる。ソフト上、設定上の違いはない。
再度29インチに繋いでいたiPadのイヤホンジャックに有線リモコンを差し込んでシャッターを押してみると、なんと切れる。「おいっ」と再度押してみると、やはり切れない。イヤホンジャックの所を持って抜き差しなどすると、切れる事がある事が分かった。「なんだ、イヤホンジャックの接触不良か。」と納得する。中古だから仕方ない。念のため、普通のヘッドホンを刺すと、普通に音は出る。音量リモコン付きのヘッドホンジャックは接点4つ、普通のステレオイヤホンは接点3つ、複雑な機能を持たせるとややこしい事になる。
19インチに繋いでいた方は有線リモコン、29インチに繋いでいた方は無線キーボードで操作すれば良い訳だが、ここで「iPadでは動かない」と思っていたネット通販の無線シャッターリモコンの事を思い出す。「音量調整ボタン」でシャッターが切れるのだから、この無線リモコンでいけるのではないか。
ネット通販のレビューを見ると、この商品の品質についての評価が割れていて、「安いがちゃんと動いた」と「壊れていたり中古が届いた」という意見がある。1個390円、2個買うと送料サービス、という事なので、「2個買えばどちらか当たるだろう」と2個注文する。780円也。
アマゾンの配達というと朝一に頼むと夕方に届いたりしていたのだが、なぜか配達に数日を要して到着。普通の定型の封筒である。中を開けると、緩衝材もなく、ビニール袋入りの商品がごろんと入っている。おお、新品だ。(当たり前か)出してテストすると、2個ともちゃんと動く。
8mmビデオカメラのリモコンは、付属の赤外線のものでも数千円、別売りの有線のものは1万以上した。機能は少ないにしても、このiPad用のリモコン、無線が1個390円、有線は108円。日銀の黒田くんもアベ君も「物価を2%上げる」と言っているが、この辺の物価の測定基準がどうなっているのかは詳しくは知らないが、2%への道は険しそうだ。
5月に始まった8mmビデオカメラからiPadへのコマ撮り機移行計画も、一応無事に終わろうとしています。(無線リモコンの、実戦でのテストがまだですが。)
総合評価すると、iPadは、露出・ピント・カメラアングルを固定した状態でのコマ撮り機としては十分使える。画質も、8mmビデオカメラでのコマ撮りよりはいい。有線・無線のリモコンも使えるし、撮影中の画面を別モニタで確認しながらの撮影もできる。撮影ミスのコマの削除や、「止め」の時間を作るためのコマのコピー・貼付けも、その使用したソフトの中でなら可能だ。
欠点としては、コマ撮りした静止画像の取り出しや、撮影データそのものの外部保存が出来ない点だ。タブレットというのは、パソコンと違って、メーカーサイドで決めた範囲でしか使えない、という部分が多い。特にアンドロイド使用のタブレットと違って、iPadはそういう傾向が強いようだ。その代わり、「誰にでも使える。」という部分はある。(うちの父親(84歳)はパソコンは挫折したが、タブレットは気に入ったようで、ずーっと使っている。)
この2台のiPad、これからしばらくはアニメ教室で頑張ってくれそうである。8mmビデオカメラみたいに、16年も持つ事はないだろうが・・・