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関西アニメ戦争史 3HEAD>
幻のアニメーション80第一回関西上映会
昭和60年6月22日、神戸学生青年センターにおいて、アニメーション80第10回記念全国上映の神戸上映が行われた。これは、昭和59年2月、昭和58年2月につづく、アニメーション80の関西での第3回めの上映会であった。しかし、実は昭和55年12月14日に、会場まで決定していた幻の第一回関西上映会があったのである。
アニメーション80とアニメ塾はほぼ同じ時期に東京と大阪でスタートした自主制作団体で、アニメファンサークルの片手間として行われていたアニメ自主制作に、作家志向を持ち込んだ当時としては先進的なポリシーの集団であった。
厳密にいえばアニメ塾のスタートの方が数ヶ月早かったようだが、アニメ塾が発足1年後に東京で第1回上映会を行った時にはすでにアニメーション80は組織的に活動していた。アニメ塾の講師と、アニメーション80の相談役を兼ねていた相原信洋氏の縁と、アニメ塾の東京上映会での出会いにより、この後アニメ塾とアニメーション80は協力関係に入る事になる。
アニメ塾代表三吉と、アニメーション80代表の小出正志氏の話合いにより、お互いに自地区での相手の上映会を全面的にバックアップしていく事に決定したのは、80年の9月の事であった。8月にすでにアニメ塾の東京上映会は終了していたので、まずアニメ塾がアニメーション80の関西上映会をバックアップする事になった。日程は12月14日、会場は大阪労働センター大会議室に早々と決定、会場確保もすみ、後は情宣を進めるだけとなった。当時(今でもそうだが。)の関西での情宣は大きく情報誌(Lマガ、プカジャ)にたよっていた。情報誌は毎月25日に発行になる。そして、締切はその月の5から10日までであった。つまり、おそくとも11月10日までに、情報を送らないと、まったく情報誌には載らないわけである。
そして、その情報は東京から届かなかった。
アニメ塾のサイドからも何回か催促はしていたが、まったくうっかりしていた事に、気が付いたら、締切が過ぎてしまっていた。アニメ塾で必要としていた情報は、作品のタイトルと作者の名前だった。(上映会のスケジュールなどはすでに決定していたために。)10月25日にアニメ塾のメンバー2名が東京に作品を持参していって、東京造形大の上映会に参加していたのだが、アニメーション80サイドの心づもりでは、この時の上映作品が大阪での上映作品のつもりで、半ば上映会半ば試写会のような感じでアニメ塾のメンバーに見せたつもりだったそうなのであるが、残念ながらテレパシーは通じず、アニメ塾ではどうして作品リストが届かないのだろうと不思議がっていた。アニメ塾のスタッフの定例ミーティングで締切が過ぎているのにスタッフの一人が気付き、どうしようもないので、中止やむなしという事になった。問題になったのは、会場である。すでに使用料も払い込んでしまっていて、キャンセルもきかないし、他に転用のしようもなく、アニメーション80に中止の決定と、使用料をもってもらえないかと交渉することになった。アニメ塾としては、2月位に延期して上映会は開催するつもりでいたのだが、アニメーション80としても、中止前にどうして連絡がもらえなかったのかという不満と、(このへんアニメ塾サイドにも問題があった。)交渉時にアニメ塾から出された、連絡はきちんとしてほしい、という要望が、アニメ塾のやり方に従え、という風にとられて、感情的こじれがおこってしまった。結局会場費は折半して、半分強をアニメーション80が持ち、会場はアニメ塾でミーティング用に使用した。そして、アニメーション80の関西上映会はアニメ塾とアニメーション80の協力では開催されなかった。
第十回アニメーション80上映会のパンフに、「協力関係にあった関西アニメ塾(なぜかアニメ80ではアニメ塾に関西をつけて関西アニメ塾と呼んでいた。)との間が、上映会をめぐるトラブルにより決裂し…」とあるのは、こういった事情である。
この後はアニメーション80とアニメ塾は別に険悪な関係になったわけではなく、アニメ塾の東京上映会にアニメーション80の人々は、情宣などの点で快く協力していただいているし、アニメ塾でも、3年後のアニメーション80の第1回関西上映会ではチケットの拡販に協力するなど、まあまあの協力関係が続いた。
この事件は、上映会を開催するサイドにとって、やるなら徹底的にやる、中途半端はかえってトラブルのもとという教訓を残した。アニメ塾にしても、アニメーション80にしても、お互いの気安さから、まあこのへんで相手にこっちのいいたい事は通じるだろう、と甘えていたふしもある。親シキ中ニモ礼儀アリで、きちんと押さえるところは押さえておかないと、ちょっとした事でつまらないクレームに発展するという事でした。
(文責小谷)
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