<98.9.15 K.Kotani>関西自主アニメサークル史 5 

AAPA 81-89




 AAPA(あーぱ)は、PAFに「なんでも修理屋さん」「王の剣」などのセルアニメを出品していたMACKとサークル協議会「すたっふ」が神戸で開催していた上映会と制作支援組織の名称である。初代代表はMACKの瀬川秀樹さん、ニ代目はおなじくMACKで「王の剣」の監督をしていた宮沢俊哉さん、三代目は赤坂芳さん、四代目は荒木稚恵さんである。名称は、「アマチュア・アニメーション・プロダクション・アプレシエイション」の頭文字を取ったもので、アマチュアアニメの振興という意味である。撮影支援・録音支援などもしていたが、実際利用された方がどの位いるのかはわからない。
 出品作品はアニメ研・漫研の作品が多く、一般的にストーリー志向・セルアニメ志向が強かった。第5回・第6回の上映回には、アニメーションワークショップからも作品が出品されている。初代代表の瀬川氏は非常に「重い」テーマの作品が好みであったようで、自らの作品も反核・平和などのメッセージ性の強いものを多く制作していたが、集まった作品は「軽い」アニパロやテレビマンガもどきが多かった。瀬川氏はこの傾向を憂い、「かってロリコンマンガがアマチュアの同人誌から始まってプロに進出したように、「重い」テーマの作品をアマチュアが作って、プロの世界にも「重い」テーマの作品が広げよう」と言っていたが、氏の思いは観客や作者には伝わらなかったようで、氏の望むような作品は応募して来なかった。
 85年12月のAAPA10より、代表は宮沢氏に交代した。同時に、撮影支援・録音支援などは中断した。宮沢氏は上映開始のコメントを英語でやったり、メジャー志向の一面も見せたが、会場が青少年会館会議室では、ややからまわりの感もあった。
 さらに86年5月に予定されていたのAAPA11からは、代表は赤坂芳さんに変わった。この上映会は結局作品が集まらず中止となったが、87年1月に改めて開催された。毎年二回の上映ペースのAAPAであったが、この翌年から代表が荒木稚恵さんに変わり、毎年一回のペースとなった。そして89年3月21日のAAPA13を最後にAAPA上映会は終わった。この時の上映会では、初代代表の瀬川氏も復活してアンケート特集に一文を載せている。
 とにもかくにも9年間の間に13回の上映会を実施し、それぞれの上映会ではきちんとアンケートをまとめ、作者と観客に還元している。また、中断したとはいえ、撮影支援・録音支援などもやっており、瀬川氏のメッセージを見ても志は高い所にあった様な印象は受ける。しかしながら、AAPAで印象に残った作品と言うと、瀬川氏の政治メッセージ性の強い作品程度で、あとはあまり印象に残っていない。というのは、AAPAで上映された作品の多くは他の上映会でも上映されており、AAPAでなければ見れないという作品が少なかった事、AAPAでのみ上映された作品はいわゆる「作家性」に乏しいものが多かった事によるだろう。
 AAPAでは、セルアニメはペーパーアニメより上、という意識があったり、ストーリーのない作品はもひとつ理解されがたい部分があった。これらの点を総合すると、「セルアニメでストーリーの明快かつメッセージ性の強い作品」というのがAAPAの理想の作品であったのだろう。瀬川氏自体はペーパーの作品を多く作ってはいたが。
 しかし、アマチュアにおけるセルアニメは、特に関西では自主制作の中ではさいきんほとんど姿を見ない。というのは、アマチュアでセルアニメを作るというのは、プロのコピーという面が強く、作家性の強い制作者はあまり採用しないし、昔アニメをしたくてもプロになる方法もわからないし学校もなかったので、仕方がないので、個人でセルアニメを作っていた様な人は、いまではアニメ専門学校という、卒業すれば一応プロにはなれるという受け入れ先が用意されていて、そこへ行けばセルアニメは作れるし、機材もそろっているので、そこへいってしまう。もっとも、アニメ業界のことがある程度わかっていて、どうしても自分の作品を作りたい、という人は別である。
 70年代終わり頃から始まった、アニメ塾・アニメーション80・アニメーションワークショップなどの作家志向の強い活動に比べ、AAPAはあくまで趣味としてのアニメーション制作活動の延長としてアニメーション自主制作をとらえていたように思われる。上映会のコメントや会報の文章を見ても、なぜセルアニメ重視なのか、ある作品についてある技法を採用したのはなぜか、この作品を作ったモチーフは何か、というような議論はない。趣味であれば、「アニメーションを作る事」自体がまず目的であり、さらにより良い作品を作る事が目的となる。良い作品とは他人に評価される作品であり、自己の創作動機と何の関係もない作品を作っても、他人がほめてくれればそれで良い。「プロみたい」というのは、褒め言葉ではあるが、お金をもらって他人の作品を作る事と、自分の作品を作る事は別である。野球やサッカーであればアマチュアよりプロの方が上だが、芸術ジャンルではからならずしもそうではない。最近のTVアニメは技術的にはすぐれたものがあるが、一作品として評価した場合、アマチュアの自主作品に及ばぬものもある。規格にはめて大量生産された商品はコストや製作精度・安定性などはすぐれているが、オーダーメードで手作りしたものに個々のニーズへの対応が及ばぬようなものである。AAPAは、アニメブームの追風を受けて大きく伸びはしたが、アニメブームの終焉とともに消えた。
(文責小谷)
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