<98.9.15 K.Kotani>関西自主アニメサークル史 1 

アニメ塾 78-86




1978年、大阪の北市民教養ルームで、自主制作アニメーション講座・実践アニメ塾の説明会が開催された。講師に招かれたのは、アニメーション作家の相原信洋氏であった。この講座の企画は幻覚工房の今泉了輔氏で、その以前に開催された「映画塾」の流れを汲む企画で、後に主力スタッフとなる武藤清隆・梶山雅代の両名も当初よりスタッフ的な立場で参加していた。
この講座には31名の受講生があり、8月の約1週間のプログラムで、基本的には夜間に講座があり、午後からは自由に作品制作ができるという環境であった。
講座終了後、受講生が集まってサークルが作るという事になった。当初より、主催の今泉氏にはそういう形で活動の継続を期待していたようであった。場が大きく盛り上がっていたこともあり、全員が参加を表明した。代表には京都産業大学アニメ研の三吉健一が選ばれた。11月には第1回の集まりがあったが、全員が集まった訳ではなかった。もともと100%全員が集まるという事を期待した事に無理があったのかもしれない。かねてから「何かやるときは来ます」と言っていた相原氏も東京から参加したが、この場で新作が上映されなかった事に不満をもっていた様であった。
翌年春には第一回の上映会が開かれた。上映会のネーミングは、スタッフミーティングにも精力的に参加していた今泉氏の発案もあり、「アニメ虫・五分の魂新作展」と命名された。ただし、この上映会の名前とサークル名がごっちゃになり、サークル名を「アニメ虫」と思っていた方も結構いる様である。上映会のスタイルは、作者が参加した「合評会形式」というもので、まず作品を一通り上映してから、あらためて一本ずつ上映し、作者との質疑応答がされるというものだった。この上映会に参加した相原氏は、「やっぱり作っていたんですね」とコメントしていたそうである。
このころ、同志社アニメ研の大迫照久氏の提唱で、自主アニメ関係団体の連合体・京都アニメーションプラント(KAP)が作られ、アニメ塾もこれに参加していた。その関係上、KAPのメンバーの作品も上映され、たいへん賑やかな上映会となった。その後、アニメ塾の上映会でこのスタイルは継承されていく。また、大阪・京都のみならず、神戸・広島・名古屋・東京・滋賀県の長浜まで、各地へスタッフ・作者(全員ではなかったが)が出向いて上映会を開催したという点にも特色があった。 初期の作者としては、後にプロになった八崎健二、怪奇ファンタジーものの川上育生、実験写真アニメの小山英治、実写混じりの大作「三作と鹿」の湯川敏男などが記憶に残っている。
この年、79年、大阪では第1回のアニメーションワークショップが開催され、アニメ塾の小谷佳津志もスタッフとして参加した。また、アニメ塾スタッフになる久保氏も受講生として参加している。 翌80年、アニメ塾スタッフは、自らの制作・学習体験を基に、自主製作講座「アニメ塾80」を企画した。かって相原氏を招いた1日勉強会や、ワークショップにスタッフとして参加した体験から、「企画運営する側・参加する側に無理なく、かつ作品を作れるという講座」をという考え方に基づき、隔週日曜日に半年の講座というものであった。今泉氏はこの講座を評して、「構想は非常にすぐれているが、内容が貧弱」とのべた。運営する側としても作家としての経験の貧弱さは自覚しており、相原氏、今泉氏などをゲストに招いたりしている。また、シネカリグラフィの二木真紀子氏を招くという計画もあり、本人の内諾も得ていたが、残念ながら二木氏がプロになってしまったため、実現しなかった。この講座には7名の参加者があり、一応作品も出来た。このころの作者としては、「ブロッケンの亡霊」でブレークした山元るりこがある。
翌81年は上映会に徹したアニメ塾は、82年に再度「アニメ塾82」を実施する。
この年には「伝説巨神イデオン」がはやり、それを見て自主製作をしてみたいというデザイン関係の方が数名受講された。この年の講座の成果としては、「キッチン・スターズ」の佐藤克裕さん、「グラフィックイメージ」の吉田節子さんがあげられる。
さて、翌83年あたりから、アニメ塾の勢いがめだって落ちてくる。上映会の作品の減少、会員の減少が目立った。この頃、東京では相原信洋氏が「地球クラブ」を設立、毎週日を決めて製作に集まっているという話があり、アニメ塾でも採用した。しかし、翌84年はとうとう上映会を開催することがなく、隔年に行っていた講座もなかった。85年の「第1回きんめまつり」への作品上映を最後に、アニメ塾の活動は事実上終わった。86年11月には、その後、残った山元るりこ、小谷佳津志の両名が、京都に移ってきた相原信洋氏の「京都地球倶楽部」に参加、活動を続ける事になる。
(文責小谷)
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