2012.02.28 K.Kotani>
「こんなものが欲しい」4.簡易式アニメ用タッピング機
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「こんなものが欲しい」4.簡易式アニメ用3穴タッピング機
平面アニメーションというのは、最近はCGになったり、パソコンでペンタブレットで作画されたりもしているが、始まって以来、永らく「紙」の上で製作されてきた。
写真の紙が、「動画用紙」。上に3つの穴があいている。(海外では、「下」に開いている事が多い。この3つの穴は、日本とアメリカ、西欧では共通のようだが、ロシアでは左右の四角い穴の大きさが違う動画用紙が使用されている。)
この3つの穴に、「タップ」(英語では「ペッグ」)という金具を差す。複数の動画用紙を重ね、ライトボックスで下から透かして、紙同志がずれないようにした上で、少しずつ違った動画を作画していくわけである。
なんで「3穴」なのか、普通に事務用に使用されている「2穴」のタッピング機(パンチ、パンチャーとも言う)で動画用紙に穴をあけて、2穴用のタップを作って作画すれば良いではないか、という向きもあるかもしれない。
現に、アマチュアの多くは「2穴」の動画用紙で作画しているし、ネット上でも、2穴用のタップの作り方を紹介したページも多い。私も、3穴の動画用紙に出会うまでは、2穴のタップを自作してアニメーション製作をしていた。
写真は、1978年の「相原信洋 実践アニメ塾」開講に際して導入された、プロ用3穴タッピング機。当時、15万くらいしたそうだ。
以来、40年近く、未だに「ピピアめふアニメ教室」で、現役で稼働中である。
さて、「相原信洋 実践アニメ塾」受講時に、初めて「3穴」の動画用紙を使ってみた訳であるが、2穴に比較すると、まずタップへの抜き差しがしやすく、タップに抜き差ししても、動画用紙の穴が潰れてゆるくなる、という事が起こりにくい。また、画面内の位置をずらしながら作画する、という場合、動画用紙のタップ穴をめあてに作画する訳だが、これも3穴の方がやりやすい。という事で、以後「3穴」の動画用紙に移行した訳である。
また、2穴用の事務用タッピング機というのは、アニメーション用に製作された訳ではないので、穴の大きさや間隔がメーカーによって微妙に異なり、書類のとじ穴を開けて使用する分には全く問題のない誤差であっても、アニメーション用に使うと、穴が大きくて動画用紙ががたついたり、反対に小さくて無理矢理押し込む形になって、2-3回抜き差しすると穴がふがふがになったりして全く困ったものであった。よって、使用するタッピング機を固定しておいて、そのタッピング機に合わせてタップを自作する必要があったりしたのである。
さて、この便利で重宝する「3穴動画用紙」だが、この3穴用タッピング機というもの、その辺の文房具屋などでは、まず売っていない。というか、日本のどこにも、店舗で売っている所は無いと思う。
商品としては、上に上げたプロ用のものとその後継機(今は、30万以上する)と、アマチュア用(40年前は8000円位、今は18000円位、アマゾンでアートカラーのものを買うと25000円位)のものが、東京の三起社で製造・販売されているが、すべて受注生産である。
(写真は、アマチュア用)
というのは、「ピピアめふアニメ教室」で使っているタッピング機が40年近く現役であるように、一回買うとたとえアマチュア用であっても「一生もの」であり、非常に販売台数が少ない為に、在庫をおいて販売する、という状態ではないようである。
最近、三起社よりアマチュア用を購入した知り合いの話によると、注文時に「これから部品を集めて製作する」と言われたとの事で、発注から納品まで1-2ヶ月待たされたそうだ。
このタッピング機というもの、事務用の2穴のものであれば、百均で税込み108円でちゃんと使えるものが手に入る。「では、なんでアニメ用の3穴のタッピング機は何万円もするのか」と言われそうだ。
理由は簡単で、同じものを大量生産すれば、価格は限りなく原材料代に近づいて行くが、「一個だけ」作る場合は、開発コストがその一個に「ドーン」と乗ってくるからである。三起社の場合は、過去に同じものを作った事があるから、図面もあるし、部品も残っているかもしれないので、この程度の価格で作れるのである。また、事務用と違って、アニメ用の場合は精度も要求されるのである。
という訳で、残念ながら、便利で使いやすい3穴動画用紙であるが、アマチュア初心者にとっては、「一生もの」のパンチャーを思い切って買うか、予め穴の空いた既製の動画用紙(売っている。結構な値段で、1枚10円位する。A4の普通のコピー用紙が一枚1-3円程度で買えるのに比べると「高い」という感じは否めない。)
では、アニメ用3穴タッピング機を安く作る事はできないのだろうか。ここで、もう一つ、百均で買った「携帯用パンチャー」を紹介する。
全プラスチック製、蝶番のようになっていて、開いて、紙を挟み、パチンと閉じると、上のピンが下の穴に通って、穴があく。実験してみた所、上質紙ぎりぎり2枚くらいなら穴があく。
残念ながら、上のピンも下の穴もプラスチックなので、ややふにゃふにゃの穴になる。左の普通の金属刃のパンチ(こちらも百均のもの)と比較するとよく判る。ついでに、穴の大きさも若干異なる事に注目してほしい。
また、構造的に観ても、通常のパンチはガイド棒を使用して、「真上」から刃が垂直におりる様になっているが、蝶番式は、蝶番の軸を中心にして、回転して刃をおろす方式なので、やや斜め上から刃がおりてくる形になる。
しかし、この「刃」の部分だけを金属にすれば、きちんとした穴は開くと思う、また、蝶番式でも、蝶番の「軸」と「穴」の間隔をとれば、実用的に差し支えない程度の角度で上から刃をおろせるのではないだろうか。
この構造であれば、大幅に安く(1000円は無理としても、3000円位で作れるのでは)、アニメ用三穴タッピング機が作れると思う。
一回に穴をあけられる紙は2枚程度としても、A4コピー用紙三円・穴あけ済み動画用紙10円ならば、一回「ガチャン」とすれば、14円浮く。100回「ガチャン」として、200枚の動画用紙を作れば、1400円の経費が浮く。経済的に余裕が無いと思われる、アニメーション初心者の皆さんは大いに助かるのではないか。
という訳で、「構想図」を書いてみました。
続いて、例によって、紙と段ボール製の実物大模型。
動画用紙(旧標準サイズ)と並べてみる。
開いた所。
閉じた所。模型寸法、幅280ミリ、奥行き108ミリ、高さ9ミリ。うむ、このサイズなら、机の引き出しや、カバンにもそのまま入るぞ。
問題は、販売見込み数。一個3000円で売り出せれば、いままでの業務用・アマチュア用の推定販売実績からみて、年間10個、10年で100個位は売れると思う。100個作って10年で売り切る、というのはなにやら実現性のあるような気もするが、商売でやってる所は無理だろうなぁ。
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