<2000.08.17 K.Kotani>エネルギーのページにようこそ

鉄腕アトムのエネルギー


「空想科学読本」という本は、SFの登場人物やメカなどを科学的に検証するという本であり、ウルトラセブンが公称最大速度で飛行すると衝撃波で頭がもげるとか、マジンガーZはコックピットの位置からいって操縦して戦闘するのは不能だとかいろいろ面白い記述がある。この中に鉄腕アトムに関する記述があり、アトムは原子力で動くから、体内に小型原子炉を内蔵し、それで発電して体の各所のモーターなどを動かしているのだが、アトムに原子炉を内蔵させるには・・・・・・という所から鉄腕アトム不可能説を打ち出していた。
しかし、鉄腕アトム全巻、あるいはテレビシリーズ全部を見ても、体内に小型原子炉を内蔵して発電しているという記述・表現はどこにもない。なるほど現在では原子力を利用するには原子炉で熱に変換してそれで電するか、または原爆みたいに爆発させるかいずれかの方法しかない。しかしそれは未来永劫に不可能というものではなく、あくまで現在の技術で作ったらという仮定でしかない。
たとえば第一次大戦頃の科学技術をもってF15やウラニウム爆弾を作ったとしてみよう。ジェットエンジンなどは存在しないから、F15の形の物を飛ばそうとすれば、レシプロエンジンを内蔵させ、空気取り込み口のファンを回転させて後方から噴出し、それで駆動して飛ばすしかないだろう。それではノロノロとしか前進しないし、当然飛びもしない。また、ウラニウムは爆発しないから、ウラニウム爆弾を作るとすればウラニウムの酸化熱を利用するか、もしくは重金属である点を利用して数万トンの塊を地上何千メートルから落とせば落下激突時に何々ジュールの熱と衝撃が発生するが、そんな爆弾を積む飛行機はありえないのでウラニウム爆弾は不可能という事になる。
鉄腕アトム全話を通じて何百という敵味方のロボットが木っ端みじんに爆発しているが、放射能汚染が発生したという記述はどこにもない。

天馬博士がアトムを初めて連れて帰った時に、天馬博士の奥さんが放射能を心配するが、天馬博士は笑って「心配ない。」と奥さんに告げている。(それでも奥さんは心配げにアトムのベッドをガイガー検知器で計ったりしている。(自宅にガイガー検知器があるとはさすがに科学省長官の自宅である。))
原子炉を積んだものが木っ端みじんになれば絶対に放射能汚染が起きる。
また、鉄腕アトムは、しょっちゅうエネルギーが切れる。原子炉の燃料棒がそうそう毎日取り替えるものではなく、また、交換にはいちいち炉を停止させなければならない。
アトムのエネルギー切れを段階的に見ると、最初は最高出力(最大10万馬力)が落ち、

次に飛べなくなる。次に歩くのがやっとという状態になり、寝たきりで手足を少し動かせるだけの状態になる。最後にはまったく動かなくなる。原子炉の燃料切れがこんなに急速に起きるはずがない。この状態はどちらかというと電池が切れていく感じに似ている。
アトムは最大出力10万馬力であるが、始終10万馬力を出している訳ではなく、通常日常生活をしている分には人間並のエネルギー消費ですんでいるようだ。「アトム今昔物語」ではエネルギー補給不能の現代にタイムスリップしたアトムが無補給で数ヶ月以上活動している様子が描写されている。また、「ロボットランドの巻」では、アトムに次々に戦闘ロボットなどと戦わせる事で、わずか数十分でエネルギーを使い果たさせる作戦が相手側に用いられている。どうも極端な小型化の代償としてアトムは燃料タンクに該当するものが他 のロボットに比べて最高出力比では小さいようである。(しかしそれでも相当のエネルギー貯蔵能力がある事は、複数の通常ロボットにエネルギーを分け与えている描写からもうかがえる。)
そのためか、アトムは「毎日」エネルギーを補給している。アトムの家にはエネルギーの補給装置があり、アトムのお母さんがお尻の部分にホースにノズルがついた(ガソリンスタンドの給油ホースに良く似ている)ものでエネルギーを食事をするように補給している。

お父さんが怒ると「今日はエネルギーはやらん!」と言って怒ったり(人間で言えば「今晩はメシ抜きだ!」)している。

しかしながら「空腹感」に該当するものはないようで、先ほどのエネルギー切れはほとんどゼロに近づいた頃まで起こらず、アトムが胸のフタの内側にあるエネルギー計をみて、「しまった! エネルギーを使い過ぎた!」と狼狽するシーンも多い。ちなみにエネルギーは胸のフタの中にも補給口があり、どちらかでも補給可能である。胸のフタの中には小さな補給用のホースがあり、他のロボットへの補給もできるようになっている。

この「エネルギー」というもの、その時代のほとんど全部の地球のロボット、光線銃などのエネルギー源であり、また、宇宙からやってきたロボットでも同じ「エネルギー」で動いていたり、

ロボイドのように自分自身はエネルギーを使わないが武器には「エネルギー」を使っていたりする。

おそらく電気かガスのように、文明が一定のレベルに達すると発明され大量に供給される汎用性の高いものなのだろう。
「アトム今昔物語」では、エネルギー切れ後数十年放置されていたアトムに、最近アメリカで発明されたというエネルギーチューブを輸入して「エネルギー」を補給するシーンがある。
この「エネルギー」がどのような形のどういう性質のものかについては、鉄腕アトムのマンガにもアニメにも説明はない。鉄腕アトムは「原子力」で動くという事だけが説明されており、あとは個々の描写・記述から推理するよりない。
まず、「原子力」という前提をのけて考えると、「エネルギー」とは電気であり、「エネルギー」補給は充電であり、「エネルギー」切れはバッテリーの上がりである、という説明が一番もっともらしく、いろいろな描写とも整合性がある。しかし、「エネルギー」は原子力なのである。
また、補給の様子を見ると、ほとんどガソリンスタンドか石油ストーブの給油のようである。

複数のロボットの残ったエネルギーをかき集めて一つのロボットに集めるシーンもあり、電気では電圧の関係でそういうことは出来ないが、液体燃料なら可能だ。「エネルギー満タンだ!」というセリフにも適合する。
しかし、燃料棒のような物を液化して流し込んでいるのではないだろうという事は容易に推定できる。最初にも述べたようにアトムに出てくるロボットはしょっちゅう爆発して粉々になる。タンクだけが無事という事は考えられないので、液体を流しこんでいるのであれば放射能汚染が起こる。
また、アトムのロボットからはいっさい固形や液体の廃棄物は出ていない。流し込んでいるのが液体の燃料棒であるならば、使用済みになった分はどこかへ排出しなければならない。
こうなると、もうなにかわからん未知の新技術だとしか言いようがない。原子核融合反応もしくは核分裂反応を応用した電池のようなもので、そこへ「エネルギー」を補給すると逆の原子核融合反応もしくは核分裂反応が起こってエネルギーを蓄え、原子核融合反応もしくは核分裂反応によって再度発生した電気か何かでいろいろな物を駆動するのではないか。
ちなみに「エネルギー」を電気その他に変換する装置としては、「原子力モーター」という表現がされている。アトムの時代のロボットは標準化が進み、同サイズのロボットであれば、この「原子力モーター」を交換して動かす事ができる。「ムーンチャンピオンの巻」では、旧式ロボットとアトムが「原子力モーター」を交換して決勝戦に臨むシーンがある。鉄腕アトムの最大出力10万馬力とはこの「原子力モーター」の最大出力の事であろう。
標準化は他のパーツにも及び、「人工太陽の巻」では、人工太陽のため手足の溶けたアトムが敵のロボットを説得して敵のロボットの手足をはずさせそれをつけて戦うシーンもある。
この「エネルギー」というもの、無償で配られているものとも思えないが、金を払って購入しているシーンは「アトム今昔物語」にしかなく、現金収入があるとは思えないアトムの家にも補給装置があり、最大出力10万馬力でバンバン使いまくっているのを見るとさほど高価なものでもなさそうだ。


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