<2006.8.9 K.Kotani>ジェット推進のページにようこそ

鉄腕アトムのジェット推進


2004.9.1 一部追加。


 鉄腕アトムはジェット推進10万馬力である。このジェットエンジンというのは空気がないと動かないので、宇宙空間に出るとロケットに切り替わる。すばらしい。

 普通のジェットエンジンは空気と燃料を混合し、点火して燃焼させ、熱で数倍から数十倍に膨れ上がったガスを後方に噴出して推進力を得る。燃焼室と空気取り入れ口の間に開閉式のフタを設けて爆発の際に爆風でフタを閉じ後方に噴気を排出するパルスジェット(ドイツのV1号に使用されていて、飛行時には独特のパタパタという音がしたそうです。)、エンジン自体が高速で前進する事により前方から空気を取り入れるラムジェット(高速飛行に向くが飛ばないと飛ばないので、最初は何かで飛ばさないといけない。)、排気でタービンを回し、同軸の吸気タービンを回して空気を吸い込むターボジェットなどがある。
 ロケットエンジンは燃料と酸化剤を両方積んでいるので、空気が要らない上に構造が単純である。一番単純なロケットエンジンは打ち上げ花火で、どこにも機械部分はなく、燃料と酸化剤が混ざった粉が燃えていくと後ろにガスが出て進む。
 ただし、ロケットは燃料と酸化剤両方積む関係上、ジェットに比較して積み荷が少ない。宇宙ロケットには数人しかのれないが、ジャンボジェットには数百人乗れる。
 ところで、アトムを良く見ると、どこにも吸気口がない。吸気口のないジェットエンジンはない。
 アトムの前方の開口部は口、耳、鼻(穴開いてるのかしら)などがあるが、飛行時にはたいてい口は閉じているし、耳の穴が空気を取り入れると、吸気音で耳が聞こえなくなる。飛びながら音を聞いているシーンが多数あるところから見て、耳ではないようだ。
 鼻の穴なら問題はないかもしれないが、超精密機器であるアトムの体内をジェットエンジンの吸気パイプが通り抜け足の先についているジェットエンジンまで空気を送るとは考えがたい。大体吸気口としては穴が小さいようだ。
 そもそも現在普通に使われているジェットエンジンがアトムに搭載されているというのに無理があるのかもしれない。大体アトムの動力は「原子力」であって内燃機関ではなく、当然燃料も搭載されていないはずだ。アトムの説明図を見ても燃料タンクの表示はない。それにエネルギーが切れかけると飛べなくなるという設定から見て、普通のジェットエンジンというのには無理がある。
 「原子力ジェットエンジン」というのがあればよい。とはいってもアトムの足の先で超小型の原爆を連続して爆発させてその爆風で飛ぶというのでは、アトムの飛行した後がくまなく放射能汚染されてしまう。
 昔アメリカではコンベアB36という超巨人爆撃機(B52が小さく見えまーす)に原子力ジェットエンジンを載せて実験したそうだ。(墜落したらどうする気だったのだろう)その原理は、原子炉の熱で空気を過熱して膨張させ、ノズルから吹き出すというものだ。うん、これならアトムにも搭載できるし、エネルギーが切れると飛べなくなるという事実とも整合性がある。
 しかし、空気取り入れ口がないという事実は解消できない。
 ところで、アトムは割と近くの殺すまでもない敵に向かって手足内蔵のジェットエンジンを吹き付け、吹っ飛ばすというわざをしばしば使用する。
 まるで机の上のほこりを吹き払うかのように敵を吹き飛ばすのだが、これがよく考えるとおかしい。
 力学の初歩でならうように力には作用と反作用があり、例えば10メートル先の1トンの敵を吹っ飛ばすような猛烈な風を起こして相手を吹き飛ばせば、当然こちらには後ろ向きの大きな力がかかり、後ろに吹っ飛んでしまう。鉄腕アトムがものすごく重ければ別だが、アトムは老齢のお茶の水博士が両手で持てる程の軽さなのである。
 同じような攻撃を行うヒーローとして「海底少年マリン」のマリンがある。マリンの足の裏にはフィンという名の小さなタービンがついており、通常はこれを回して後ろへの強力な水流を作って前進する。また、相手に水流を吹き付けて吹き飛ばしたりもできる。このフィンは空気中では短時間ホバリングできるほど強力なもので、水中で最大パワーをかけると数千トンの潜水艦を押しながす事も可能である。

 このマリンが水中で相手に水流を吹き付けたらどうなるか。当然マリン自身も後ろに下がるはずである。水流の推力軸とマリンの重心が一致しない場合は、マリンはねずみ花火のようにくるくるまわってしまうだろう。ところが海底少年マリンの全話を通じて相手に水流を吹き付ける際に反作用を受けた形跡はない。唯一「おれは天下の海賊マッド」で相手の海賊の手下に水流を跳ね返され流されるという話があるが、これもマリンが自分の水流に流されているだけで、反作用ではないのである。
 このマリンのフィンにも水の取り入れ口はない。
 良くにた推進機関である水上オートバイは、船底前方から水を吸い込み、後方から排出して推進している。
 マリンは人間であるから、足の裏に口から水を送るという事は出来ない。マリンの全身をおおっているマリンスーツは使用しない場合はマリンのパンツの部分に収納され、ベルトのスイッチを押すと出てくる仕組みになっている。

 この「靴」の部分が水中ジェットで、かかとの部分に小型のカートリッジのようなエネルギーパックを装着している。となると、下図のように「横」から水を吸い込み、「後ろ」に吹き出すしかしかたがない。

 この方式で水を吸い込む角度を吹き出す角度とほぼ垂直に近くすれば、前方への推力が発生する。また、吸い込む角度を吹き出す角度と平行に近付ければ作用反作用が打ち消し合ってマリン自体が動く事は少ない。平行に近いと言っても吹き出す角度を絞ればマリンにゆっくりと近付く水の流れと吹き出す急流が発生して作用反作用をバランスさせながら水流を発生させる事は可能と思われる。
この原理を鉄腕アトムに応用すると、ジェット噴出口の横から空気を吸い込み、加熱して後方に排出する形になる。そんな熱いものを相手に吹き付けて大丈夫かという事になるが、鉄腕アトムは超音速で飛べるという事なので、ジェットエンジン自体も本来ものすごい出力が出るはずである。(衝撃波の問題については別途心配することにする。いつになるかは分からない)そういうものを全力で噴射すると相手は多分こっぱみじんになるであろうから、相当手加減したものを吹き付けていると思われる。
 さて、ジェットエンジンは大体片付いたと思うが、ロケットエンジンはどうだろう。
 普通のロケットエンジンは酸化剤と燃料を燃焼させてガスを発生させて推進力とするが、ちょっと前にペットボトルロケットというものがテレビでやっていた。ペットボトルロケットというのはペットボトルに少量の水を入れ、圧搾空気を入れて水をペットボトルの口から噴出させて推進力とするものである。
 つまり、物を燃やす必要はないのである。
 もちろん真空の中では空気を取り入れて加熱する事は出来ないのであるが、鉄腕アトムは汗・涙用としてかなりの水を体内に貯えている。この水量は、アトムが大泣きすると室内が水であふれてお茶の水博士が泳げるほどの量なので、(これはマンガ)この水を加熱して蒸気にして噴出すれば十分飛べるはずである。
アトムは空気中では空気を加熱して噴出し、真空中では水を加熱して蒸気にして噴出している、と言う事であれば説明がつくのである。チャンチャン


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