<2006.11.05 K.Kotani>「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 14


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2006年11月5日

「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 14




動きの秘密その3  動きの盗み方教えます

 アニメーションの歴史の中で、「動きの模倣」はずっと行われてきた。

1.実写映画の模倣
 実写映画は一秒間に24コマの撮影を行い、一秒間に24コマのフィルムを上映する事により動きをスクリーン上につくり出す。この1コマ1コマの画像はそれぞれ静止した写真なので、それぞれの画像の中の少しずつ違った「もの」をとりだして絵に置き換えれば、動きがコピーできる。映画のフィルムから静止画像をとり出す方法としては、フィルムを1コマ1コマスライドの様に映写したり、1コマずつ写真に焼く方法がとられた。

2.アニメーションの模倣
 実写が模倣できるのであれば、アニメーションも模倣できる。初期の東映動画(現 東映アニメーション)のスタッフがディズニーのフィルムを入手して1コマずつ確認して参考にした事もある。

3.実写の動きのアニメーションへの取り入れ
 ディズニーでは、アニメのキャラクターと同じ服を着た人間に演技をさせ、それを実写に撮り、一こまずつ拡大して動画用紙に写し取り、アニメーションにするという手法を用いた。のちに東映動画でも同じような手法が用いられた。手描きの動画では得られない微妙な服の動きや人間の手足の動きが再現されたが、反面人間のできない動きはできないという欠点もあった。

4.動き見本をコピーする
 アニメーションの制作技法書には、必ず「動きのパターン」が掲載されている。このパターン通りに動きを描けば、「一応」それなりの動きはするようになる。しかし、画一的で面白くないアニメになってしまう。

5.日本のテレビアニメにおける、ブレイク・スルー
 現在も膨大な量の作品が制作し続けられているテレビアニメは、絶対的に使用できる動画の枚数が少ないという点を克服するため、次々に新しい動きの表現を開発した。ある番組が少ない枚数で豊かな表現のできる手法を開発すると、次々に別のプロダクションもその手法を使用した。このため斬新な手法も次々に陳腐化が進み、最近さらに枚数が絞られてきた状況下にあっては、一定の質は確保できているもののほとんどどのアニメも同じように見えてしまう状況である。

6.「宇宙戦艦ヤマト」におけるリアルな宇宙戦闘シーン
 「宇宙戦艦ヤマト」の宇宙戦闘シーンはそれまでの宇宙ものの平板な表現を超えたものだった。紙に印刷された計器を段ボールの箱に貼付けたような宇宙船内部は一転して航空機のコックピットと軍艦内部をかき混ぜたような絵柄となり、どかんと爆発して風船のように消えていた敵宇宙船は大破して煙りを吹き出しながら傾きつつ漂流した。物語の後半にはさすがのスタッフも力つきた感もあったが。

7.「ヤマト」を超えた「ガンダム」
 いまなおバンダイの稼ぎ頭である「ガンダム」も、最初のシリーズの放映当初は衝撃的な表現が続出していた。現在のロボットアニメの表現の大半は、ガンダムの動きの精密化/発展系といってさしつかえない。

動き泥棒の実際

1.元の動きを選ぶ
 アニメーションは画面構成・カット割り・キャラクター作画・背景作画・音楽・効果音・その他もろもろが一体となった芸術で、「動き」は一要素にすぎないが、「動き」が非常に重要な一要素である事は確かである。
 アニメーション制作を志す人の多くは「動き」に非常にこだわる。同じ「歩き」でも、ゴジラと人間の大人と人間の子供の動きでは同じ「歩き」ではない。
 かって「大塚アクション」と呼ばれたダイナミックな動き、「金田アクション」と呼ばれた2コマ撮り3コマ撮りの乱れ打ちによる誇張された動き、「板野サーカス」と呼ばれた空中を3次元的に飛び回る物体を動き回るカメラで追う浮遊感と躍動感あふれる動きなど、伝説的なアニメーターが多数存在したし、現在でも多くの優れたアニメーターが素晴らしい動きを表現し続けている。
 「あっ この動きいいな」と思える動きを見た経験がある事、がもっとも必要である。

2.「いいな」と思った動きを分析する
 現在では「ビデオ」という大変良いものがあるので、選んだ動きをコマ送りで見る事が出来る。但しフィルムベースで製作された作品は、1枚の絵が2コマにまたがっている場合があるので注意する。3コマで製作する場合は、3コマ毎に絵がどの位置にあるかメモッていく。ゆっくりした動きでメモりにくい場合は、「この位置からこの位置まで何枚で動いた」という風に記録する。

3.分析した動きを置き換える
 メモっていた位置に自分のキャラクターを置き換える。

4.動きをチェックする
 作画した動きを撮影してチェックする。このさい、自分の意図した動きになっているかが重要。元の動きと同じである必要はなく、自分の作品に適した動きであるかどうかが問題。適当にアレンジして自分の動きとして使えれば最高。

5.最初は模倣から
 「真似」ではうまくならないのでは? という疑問もあるが、動きのパターンの模倣はアニメーションの歴史の一番最初から行われてきた。99%の模倣の上に1%の創造を積み重ねて行く事が作品制作だと思う。

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