<2006.11.05 K.Kotani>「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 18


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2006年11月5日

「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 17




絵コンテの書き方

 絵コンテとは
 作品を作る場合、ストーリー、キャラクター、場面設定などから始まって、全体のぼんやりとした姿が現れる。

 場面は山の中の森、登場人物は熊さんとお嬢さん、山の中の森で熊さんとお嬢さんが出会ってびっくり! というシチュエーションを考えてみよう。

 さて、まず背景を考える。山と森を描く。右からお嬢さん、左から熊さんが出てくる。まん中で出会ってびっくり!
.


 このように1カットでやってしまうと明らかにオカシイ。少なくとも左右から出てきた時点でお嬢さんにも熊さんにも相手は見えているはずで、まん中に来るまで相手が分からないはずがない。「実は両方とも近眼で・・・」という説明もおかしい。絵を見ただけでは近眼かどうか説明がされていない。メガネをかけさせて近眼であるという事を説明する事もできるが、メガネをかけていれば相手は見えるはずだ。
 というわけで、ばったりまん中で出会うまで相手が見えないような場面にしなければならない。森の中の茂みをがさがさ通り抜けてちょっと開けた場所にでると熊さんがいた、キャーというシチュエーションにしてみる。



 ただこのまま「引き」のままの構図ではインパクトに乏しい。そこで、驚く瞬間のお嬢さんと熊さんをそれぞれアップにしてみる。



 この後どうなるか、お嬢さんは逃げる。この逃げるお嬢さんと追い掛ける熊さんを横から撮るのか、前から撮るのか、後ろから撮るのか、前から撮るとお嬢さんのびっくりした表情が描ける。後ろから撮るとお嬢さんの逃げて行く方向(来た方向)になにがあるのか描ける。



 こんいうふうに、表現するものを「どこから撮るのか」「どう配置するのか」「どういう動きをするのか」をイメージして、具体的に描いて行くのが絵コンテである。

絵コンテに書き込む事

 絵コンテは基本的に集団作業でアニメーションを製作するのに不可欠のものである。ただし、個人製作の場合は絵コンテなしで製作するケースも多い。しかし初心者の方は、まず、きちんと絵コンテを作ってみる事をおすすめする。
 というのは、「アニメーションは絵だからなんでも描ける」というのはほんとではあるが、「描けないものは絵にならない。」「絵にならないと作品にならない」のである。見た事のあるものは描けるはずであるが、目の前にそれが出てくるとそれと分かるが、記憶を元に描くと全然違っていたりする。作品を作るためには絵を描かなければならないが、自分がどんな絵が描けるのか、確認する上でも一度絵コンテにする事は必要である。
 次にどのカットとどのカットをつなげていくのかという事も必要である。時間的前後関係がおかしくないかどうか確認したい。
 また、カットの大体の長さも必要である。完成する作品の大体の長さがわかる。個人製作で1時間の長篇アニメーションを作った人はいないが、作ろうとして挫折した人はいっぱいいる。個人製作のアニメーションはせいぜい数分までで、それも製作に数カ月を要する事を考えなければならない。このカットの長さは、頭の中でシーンを思い浮かべてみて、それをストップウォッチではかる事でわかるが、あくまで目安であって、実際の制作時には多少の変化があるのが普通である。
 また、台詞があれば台詞も書き込む。BGMの大体の指定、効果音や作画の上の指示もちゃんと分かるように入れておく。(これは作る人に分かるように、という事で、作る人というのは絵コンテを書いている本人であるが、いいかげんに書きなぐると後で何が書いてあるか自分で分からなくなる。



出来上がったら

 出来上がったら、読む。具体的に映像のイメージを思い浮かべつつ、どこかにへんなとこはないか、書き忘れはないかチェックし、必要なら修正する。実際に作画が始まってからも、いったん出来上がった絵コンテが製作が進むにつれて修正されつぎ足されたり消されたりする事はよくあるものである。



カメラの基本

 最近のアニメーションはスキャナーで原画を取り込んで製作される事が多いが、映画であるという事に変わりはない。

 1.基本はフィックス(固定) カメラを動かさずに撮影する事。そのまんまであって、対象物を色をつけずにとらえる。

 2.寄る(トラック・イン、ズーム・イン)カメラが対象物に近付いていく。そのものに「興味」を持っているとか、カメラの位置にいるキャラクターが対象物に近付いて行くという表現にも使われる。

 3.引く(トラック・アウト、ズーム・アウト) カメラが対象から遠ざかる。最初キャラクターの表情をアップでとらえていて、つぎにカメラが引いてキャラクターの周辺の状況を説明するという風にも用いられる。



 4.振る(パン、トラック) カメラが左右に振られる。カメラの位置が固定で角度を変えるのがパン、カメラの角度は固定で位置を変えるのがトラック。カメラを動かすとキャラクターの表情を寄りでとらえながら広い範囲を表現する事ができる。



 5.回り込む(クレーン) カメラが立体的に位置を変えながら対象をとらえる。アニメーションでは背景ごと動かさなければ出来ないため、大変。ただし、最近のCGアニメでは比較的簡単に出来るため、過剰なまでにもちいられる事が多い。

カットの組み立て

 どのカットの後にどのカットをつなぐか、という基本について。

 1.時間通りに並べる 当たり前の事であるが、お嬢さんと熊さんはばったり出会ってから驚くのであって、驚いてから出会うのではない。ただしばったり出会った瞬間に、同時に両方が驚くはずだが、お嬢さんの驚いたアップのカットに続けて熊さんの驚いたカットがあっても違和感はない。映画の中で流れている時間と実際の時間は違い、時間を巧みにコントロールすることにより、映画の流れはつくり出されて行く。

 2.観客の心の流れにそって並べる ある場面を観客に見せる事によって観客は何かを思い、何かを期待する。ピッチャーが球を投げた次のカットにバッターがいれば、次は打つと思う。バッターが打てば次は走ると思うし、外野手が走っているシーンが続けば外野フライかなと思う。この心の動きを読みながらカットを組み立てて行く事により、スムースに観客に受け入れられるシーンが出来上がる。

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